消費税還付の2つの実例紹介
読者の皆様はご自身の確定申告、無事に終了しましたでしょうか? 申告期限は昨日の月曜日でしたが、私の事務所では先週の金曜日(3月12日)にどうにかこうにか終了しました。
できれば10日頃までには余裕で終わりたいと思っているのですが、昨年度はお客様がかなり増えたこともあり、予定より遅くなってしまいました(因みに、増えたお客様は全て私の本の読者です)。
ところで今回のブログでは今年の確定申告で消費税の還付請求をした2つの実例をご紹介したいと思います。
いずれも平成22年度の税制改正における歯止め措置の対象外のものです。つまり、これからも同じような事例であれば還付請求できるという事例です。
<消費税還付に関する2つの実例>
「その1・・・姉妹で自宅併用の複合ビルを建てたケース」
AさんとBさんは姉妹ですが(いずれも現在は独り者で、かなりのご高齢)、評価額の高い場所にそれぞれ若干の土地を所有しておりました。
このままでは相続税もそれなりにかかりますし、土地を遊ばせておくのももったいないということで自宅併用の貸ビルを計画、昨年の連休明けに完成・引渡しを受けることができたという事例です。
このビルは1階と2階の半分を店舗として第三者に、そして2階の残り半分は孫の家族に住居用として貸し、自分たちは3階に住むという構成になっています。
そして建物の持分は姉妹でほぼ半分ずつですが、こういった建物を建築した場合、建物に係る消費税の還付額はどのように計算するのでしょうか?
これについては、まず建物の床面積で利用区分毎に建築費等を按分し、それに係る消費税をそれぞれ計算する必要があります。
この場合、自宅部分は事業用ではありませんので当然ながら還付請求額の計算から除くことになります。
次に課税売上割合を計算するわけですが、店舗部分の賃貸料は孫に貸している住宅部分の賃貸料よりは圧倒的に多いわけですから、結果として課税売上割合はかなり高くなります。
そして上記で計算した建物に係る消費税(店舗部分と孫に貸している住宅部分)に、この課税売上割合を掛けた額が仕入税額控除額の対象となるわけです。
なお以上の計算は当然ながら姉妹でそれぞれ別々に行なう必要がありますし、消費税の還付を受ける場合には税抜き経理が必要ですから(税込み経理をすると還付を受けた消費税に対して所得税がまた課税されます)、それなりに手間がかかるというわけです。
これ以外にも細かくて複雑な処理がいくつかありましたので、担当者も5回ほど修正を余儀なくされました。
このように消費税の還付と言っても、複合ビルであるとか共有である場合には非常に手間がかかってくるわけです。会計事務所も意外と大変なのです。
「その2・・・弁護士が賃貸マンションを購入したケース」
次にご紹介するのは法律事務所を経営するある弁護士が、賃貸マンション1棟を購入したケースです。
ご承知だと思いますが、弁護士事務所とか司法書士事務所には数年前から過払金返還請求で沢山のお客様が行列をなしています。大手の弁護士事務所がテレビコマーシャルをガンガン出しているのも、そういったお客様を獲得しようとしているのです。
そういうわけで、弁護士事務所とか司法書士事務所は儲かって仕方がないのですが、そんな折、とある九州の弁護士の方から購入した賃貸マンションの記帳代行を依頼されたのです。
私の事務所では顧問契約について「経理は自分でコース」と「全ておまかせコース」の2つのコースをご用意しているのですが、ほとんどの方は「経理は自分でコース」を選択されます。こちらのほうが料金が安いからです。
ところが、この方は「全ておまかせコース」を選択されたのです。これはある意味、当然ですね。儲かって仕方がないわけですから、面倒な会計処理は会計事務所に丸投げするのが普通です。
それはともかく、この人の年収はここ数年8000万円前後です。年収ではあるのですが、2人のパートの方の給料が1人当たり120万円程度ですし、事務所も自宅併用でほとんどコストがかかりません(かなり地方の事務所です)。
そういうわけで事業所得も6000~7000万円程になるのですが、こういった方が賃貸マンションを購入して建物に係る消費税を還付請求した場合、どれほどの額が還付されると思いますか?
利回りが10%の2億7000万円程度のマンションを購入した場合、年間の家賃収入は2700万円です。しかしながら通常は期の途中で購入しますので購入した年度の家賃収入はここまでは行きません。
このお客様も9月頃購入されたのですが、1階の店舗部分が未入居であること、それ以外の住居部分も入居率が80%程度であったことから初年度の家賃収入は800万円ほどでした。
このようなことから課税売上割合は91%(8000万円/(8000万円+800万円))にもなったのです。これを建物に係る消費税に掛けた額が仕入税額控除の対象となりますので、ウンと還付されるというわけです。
なお、このお客様は昨年度より簡易課税方式を選択されていたのですが、基準期間(2年前)の課税売上高が5000万円を超えておりましたので、原則課税方式が強制適用されたのです。
もし5000万円以下であったとしたら簡易課税方式が適用され、還付額はゼロになるところでした。アブナイ、アブナイ。
因みに、この方の還付額は660万円ほどでしたが、これは本来収めるべき事業所得に係る消費税を控除した後ですから、全くオメデタイお話です。