建物の固定資産税評価額はどのようにして決まるのか? ( 2回目)
前回は現地調査に行く前の事前準備が中心でしたが、今回は具体的な評価方法についてご説明します。説明するといっても私は市町村役場の評価担当者ではありませんので、細かいことは分かりません。
そこで財団法人資産評価システム研究センターというところが出している「木造家屋評価実務マニュアル」(ぎょうせい刊)という書籍を参考にしております。
この書籍は評価担当者向けの研修会で使用したテキストを基にしているため、かなり具体的に書かれています。それにしても家屋を構成している各種の部材等には1つずつ名前が付けられていますが、頭が痛くなりますね。
それはさておき、建物というのは各項目毎に点数を付け、それらを合計することにより評価します。
使用している材料が高価であれば点数が高くなりますし、面積が広くなれば同様に点数が高くなるというわけです。
また日本家屋によくありますが、かなり凝った造りの場合には手間がかかりますので加点されます。例えば、手作りの立派な欄間(らんま)を付ければそれだけ点数が高くなるというわけです。
学校のテストの点数の場合には素直に喜べますが、家屋の評価点数の場合には税金が絡んできますので複雑な思いに駆られるのではないでしょうか?
ところで、このような評価方法について逐一解説してもあまり意味がありませんので、ここでは今までにハウスメーカーの人に質問された中から重要と思われる点について2点ほどご紹介しておくこととします。
<質問1>・・・天井の高さが1.5m未満の場合、床面積に算入されないそうですが、この部分については固定資産税がかからないという解釈で良いでしょうか?
(答え) 確かに床面積には算入されませんが、工事費はかかっているわけですから、それだけ単価(点数)が高くなるとのことです。
<質問2>・・・床暖房をつけると固定資産税がアップすると聞きました。本当でしょうか?
(答え) 建物には建物本体だけでなく附属設備も含まれます。そして、この場合の附属設備ですが、あくまで「建物と一体となって機能を発揮する設備」だけが課税対象となります。
したがって、例えばタンスとかテレビ、ダイニングセットなどの家具は対象となりません。これらは簡単に移動できるからです。
一方、ビルトイン式(埋め込み式)の空調設備とか換気扇、キッチンユニット、洗面化粧台、風呂、トイレなどは課税の対象となります。
それではご質問にあります床暖房はどうでしょうか? 既にお分かりだと思いますが、床暖房は建物の床にセットするわけですから当然ながら対象となります。
なお附属設備については1個当たりで計算するものと、1㎡当たりで計算するものに分かれます。例えば洗面化粧台とかユニットバスなどは1個当たりで計算しますが、床暖房の場合には1㎡当たりで計算します。対象となる面積は床暖房の設置面積です。
以上、建物の固定資産税評価額がどのようにして算定されるのかについて概観してきたわけですが、何となくイメージは掴めたでしょうか?
いずれにしても実際の作業は詳細を極めます。あまりにも単純化すると課税の公平が保たれなくなるということで、このように細かく評価しているということです。ご苦労さんです。
ところで固定資産税評価額は建築費と比較してどの程度に収まるのでしょうか? 要するに何パーセント程度になるのかということです。
これについては様々な人(税理士、会計士等も含む)が何の調査をすることもなく勝手にいろいろと書いてくれているので困ってしまうのですが、私がお客様のデータを調べた限り、だいたい次のような感じになります。
・鉄筋コンクリート造・・・工事費×30~40%
・木造・・・・・・・・・・工事費×40~50%
もちろん工事費の単価が高い場合と低い場合とでは割合が異なりますが(高い場合には割合が低くなります)、多くの著書を拝見した限り60%というのが圧倒的に多いのです。
ローコスト住宅で60%というのも存在はしますが、それにしてもあまりにも実態からかけ離れています。あまり実務を経験されていないのかも知れませんが・・・。
いずれにしても相続対策でアパート・マンション等を建てる場合(自宅も含む)、工事費と固定資産税評価額との差額が評価減になるということだけは理解しておいて下さい(アパマンの場合には更に借家権割合である30%を控除する)。