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2007年01月22日

小規模企業共済制度はメリット多し

最近、小規模企業共済制度についてよく質問されます。おそらく様々な書籍とかセミナーで紹介されているからだと思います。そこで今回はこの制度のあらましについてご紹介しておきます。

まずこの制度が作られた目的ですが、これは個人事業主の方や会社等の役員の方が事業を廃止したり役員を退職した場合などに、その後の生活に必要な資金をあらかじめ準備しておくための国の共済制度で、いわば「経営者の退職金制度」ということができます。

ご承知の通り、個人事業者には退職金制度というものがありません。一般のサラリーマンであれば大なり小なりそれなりの退職金を貰うことができますが、個人事業者というのはそういった制度がありませんので、国が代わりに退職金制度を作ってくれているのです。

退職金というのは他の所得とは異なり税金がかなり安くなっています(退職金の額から退職所得控除が差し引かれ、更にその額の半分が課税所得となる)。また一時金ではなく分割で貰うこともできますが、その場合には公的年金と同じく雑所得となります。

一方、毎月の掛け金(月額1000円から7万円まで任意に選択可)が課税所得から控除されますので所得税の節税にもなるのです。このように税金上も非常に優遇されているわけです。

ところで、この制度は中小企業の経営者も加入することができます。会社形態をとっていたとしても実態は個人経営と同じですから法人であっても加入できるようになっているわけです(サービス業の場合、常時使用する家族以外の従業員は5人以下という条件があります)。なお、この場合であっても掛け金はあくまで個人が支払うわけです。法人の経費にするわけではありませんのでご注意下さい。

それではサラリーマンの方が副業でアパート経営をしている場合、この制度に加入できるのでしょうか? これについては残念ながら加入できません。あくまで本業が事業経営者でなければならないのです。

次に、不動産賃貸業が専業だという場合はどうでしょうか? このケースについては制度上は加入できますが、その場合でも事業的規模である5棟10室以上(アパートの場合は10室以上、貸家の場合は5棟以上ということ)であることが必要です。

このように、この制度には様々な条件がありますので、加入する場合には事前によくごチェックするようにして下さい。

2007年01月10日

ベランダの取替え工事費は修繕費、それとも資本的支出?

アパート経営を始めますと、様々な箇所を修繕する必要が生じます。

比較的小規模なものとしては、入居者の入れ替えの都度行う通常の修繕、例えば、壁紙、障子、ふすま、カーペット等の張替えとか、畳の表替え等があります。

一方、大規模なものとしては外壁とかベランダ等の修理、あるいは和室から洋室への変更等があります。

ところで、これらの修繕にかかる修繕費とか取替えにかかる費用は支払い時点で一時に経費に計上できるのでしょうか? それとも資産に計上して少しずつ経費に計上することになるのでしょうか?

残念ながら、これについては単純明快にお答えできないのです。前者の壁紙等の張替え費用については全く問題ないのですが、それ以外の修繕費についてはその都度個別に判断していく必要があるのです。

それでも一応の判断基準はありますが、これについては長くなりますのでいずれかの機会に譲るとして、今回は具体例を1つ挙げてご説明したいと思います。

<事例>ベランダの取替え工事費(4所帯で合計90万円)

このベランダの取替え工事費とは文字通り、取替えにかかる工事費のことです。単にペンキを塗リかえるといったものではありません。また、多くのマンションのように隣のベランダと連続しているものではなく、それぞれの所帯毎に分かれているタイプのものです。

ところで、この質問は当事務所のお客様からいただいたものですが、残念ながら即答できなかったため6つほどの税務署に電話で質問しました。個別の税務署名は名誉のため省きますが、次のように意見が分かれました。

 1.A税務署、B税務署

  建物全体の価値を高めると考えられるので、合計金額で判定することになる。→合計90万円なので一旦資産計上して減価償却することになる。

 2.C税務署

   写真等を見ないと分からない。

 3.D税務署、E税務署、F税務署

  1所帯ずつ独立しているのであれば1所帯当たりの金額で判定することになる。→1所帯当たり22.5万円なので一時に経費に算入できる(青色申告の場合は30万円以内であれば一時に経費に算入可能、白色の場合は20万円)。

いかがでしょうか? 数多くの事例を経験しているであろう税務署でもこのように意見が分かれるのです。修繕費の会計処理がいかに難しいかお分かりいただけたでしょうか?

今回は1つの事例しか挙げておりませんが、できればこれからも時々掲載していきたいと考えております。なお、上記の質問に対する当事務所の最終判断は一時に経費に算入可能であるとしました。