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2008年11月25日

合同会社のメリット・デメリットについて

前々回のブログでは還付消費税の会計処理についてご説明しましたが、そのとき、お客様から新規に設立する法人として合同会社はどうなのかという質問がありましたので、今回はこの合同会社についてお話したいと思います。

ご存知の通り、現在は有限会社を新たに設立することはできません(既に設立済みの有限会社については特例有限会社として存続できるというだけです)。したがって、一般の会社としては株式会社しか設立することはできないのです。

これ以外の法人としては持分会社としての合名会社、合資会社、合同会社がありますが、これらの概要は次の通りです。このうち合同会社は2年前にできたばかりです。

1.合名会社・・・無限責任社員のみで構成されている。会社の財産で返済できない場合には個人財産まで提供する必要がある。

2.合資会社・・・無限責任社員と有限責任社員とで構成されている。

3.合同会社・・・株式会社とか有限会社と同じく、有限責任社員のみで構成されている。有限責任社員の場合には出資額を限度として責任を負う。

このように合同会社以外は無限責任を負うことになるため、今回は合名会社と合資会社は除外し、株式会社と合同会社のみを比較することとします。

まず株式会社ですが、株式会社を設立する場合の登録免許税は最低15万円です。

有限会社の場合の最低額は7万円だったのですが、株式会社だということで資本金がいくらであろうと登録免許税は15万円かかるのです。

最低資本金が1円になったと喜んでいたら登録免許税は15万円のまま。何のこっちゃ、という感じです。

それでは合同会社の場合はどうかということですが、合同会社の場合の登録免許税の最低額は6万円です。したがって有限会社の場合よりも更に1万円安いわけです。

次に合同会社の場合には定款の認証という手続きが不要です。定款の認証とは要するに定款(会社についての様々な規則を定めているもの)についての内容・形式を公証役場の公証人に調べてもらう手続きのことです。

この認証のための手数料が株式会社の場合には5万円かかるのですが、合同会社の場合には認証自体が不要だということで手数料は一切かかりません。

また従来の紙ベースの定款の場合には4万円の収入印紙を貼る必要がありましたが、電子定款(定款をPDFファイル等で作成し、これに作成者が電子署名したもの)にすれば、この収入印紙は不要です。

ただし、この電子定款は株式会社の場合であっても作成できますので、比較という点では両者に違いはありませんが・・・。

以上をまとめますと次のようになります。

1.合同会社の場合の設立時の費用(最低額)・・・登録免許税6万円+司法書士の手数料(事務所によって異なる)

2.株式会社の場合の設立時の費用(最低額)・・・登録免許税15万円+定款認証代5万円+司法書士の手数料

つまり14万円違っているということです。このように設立時の費用に違いがあるのですが、これ以外に違いはあるのでしょうか? 

これについては細かいことではいろいろありますが、それほど大きな違いはないと考えて良いと思います。いずれの場合も有限責任ですし、税務上の取り扱いもすべて同じです。

ただし、合同会社の場合にはできてからまだ2年しか経っていないため信用力の点で問題がないのか金融機関に聞いてみたのですが、特に違いは設けていないようです。

このように、合同会社の場合、特にデメリットと言える点はありませんでしたので、ブログでご紹介しましたお客様の場合も最終的に合同会社を設立することとし、先日登記が無事終了しました。

皆様方も、もし法人の設立をお考えであれば、合同会社も視野に入れられたら良いのではないでしょうか?


2008年11月13日

ハダカの遺言書はどうなる?

今回は遺言書についてお話したいと思います。実は最近ある方から相続税の申告を頼まれ、現在作業中なのですが、その方(長男)は亡くなられた父親が書いた遺言書を保管されているのです。

遺言書というと、通常は封筒に入れて遺言者の印鑑を押印しているケースが多いのですが、その遺言書はハダカのままなのです。

このような遺言書というのは法律的に有効なのでしょうか? どう思われますか?

実は法律的に有効な遺言書とするためには必ず次の4つの要件を満たしていなければなりません。

1.遺言の全文を自分で書くこと(代筆とかワープロにより書かれたものは無効)

2.日付を書くこと
       
3.自分の氏名を自分で書くこと

4.印鑑を押すこと(認印でOK)

このように、封筒に入れて遺言者の印鑑を押印するという要件はないのです。したがって、ハダカのままの遺言書であっても法律的には有効であるということができます。

ところで、このような遺言書(正式には自筆証書遺言書という)については、そのままの状態で執行することはできません。

遺言書を保管している人、あるいは発見した人が遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して「遺言書の検認」を受ける必要があるのです。

遺言書の検認とは遺言書の形状とか、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。

遺言が遺言者の真意であるかどうかとか、遺言が有効であるかどうかを審査する手続ではありません。
     
なお、封印のある遺言書は家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立会いの下に開封しければなりません。

検認を受けないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封した者は5万円以下の過料に処せられることになっています。

また、故意に遺言書を隠匿していた場合には、相続欠格者として相続権を失なう可能性がありますので十分注意する必要があります。

ところで、このように遺言書があっても、それを無視して遺産分割することは可能です。このお客様の場合には全ての財産を長男に渡すと書かれているのですが、やはり遺留分のことを全く無視するわけには行きません。

そこで、もう1人の相続人である長女には葬式費用を支払った残りの金融資産を全て渡すことにしております。

これだけでは遺留分と比較すると少ないのですが、これ以外の財産としては長男がアパートの敷地として利用している土地があるだけなので、このようにせざるを得ないのです。

今まで長男夫婦がお父さんの面倒を見てきたことを踏まえれば、それなりに納得していただけるのではないかと考えています。

いずれにしても、もうすぐ長女に会って話をされる予定です。無事に終わることを祈るばかりです。