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2009年08月26日

住宅ローン控除を受ける場合の面積要件について

ご承知のように、平成21年または22年中にマイホームを取得した場合、次のように住宅ローン控除として最大500万円(長期優良住宅の場合 600万円)の適用を受けられるようになりました。

・控除対象借入金限度額 5000万円
・控除率 1%(長期優良住宅の場合 1.2%)

平成20年12月31日までは最大160万円でしたからマイホームを取得しようとしている方にとってはかなり朗報と言えるでしょう(逆に言えば、それまでに購入された方はガッカリといったところでしょうか)。

ところで、この特例を受けるためにはいくつかの条件がありますが、その中の1つに建物の床面積要件があります。

要するに建物の床面積が50㎡以上(上限はなし)でなければならないということですが、今回はこの床面積の計算方法について解説することとします。

ご承知のように建物の床面積を計算する方法には次の2つの方法があります。

<建物の床面積の計算方法>

1.「壁心」(または壁芯)により計算する方法・・・壁の厚みの中心線を想定し、その中心線に囲まれた面積を基にして計算する方法です。

例えば建築基準法では「建物の床面積とは壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積である」と規定していますので、この方法を採用していることが分かります。

2.「内法」により計算する方法・・・.内法(うちのり)とは壁の内側を基にして計算する方法です。

つまり実際に使用可能な面積だけで計算する方法ですから、上記の「壁心」により計算する方法と比較するとそれだけ面積が少なくなります。

例えば不動産登記法によると、「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(一棟の建物を区分した建物については、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により・・・(以下省略)」(不動産登記法施行令第8条)。

つまり戸建ての建物等は「壁心」により計算するが、区分所有建物については「内法」により計算するというわけです。

それでは住宅ローン控除を受ける場合の面積はいずれの面積によるのでしょうか? 

正解を言いますと、上記で説明した不動産登記法とまったく同じ基準なのです。その理由は住宅ローン控除の適用を受ける場合、登記簿謄本に記載している建物の床面積を基にして判断することになっているからです。

ところで不動産広告を規制している「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」では、新築マンションの場合、「壁心による床面積」を広告に表示することになっています。

したがって、例えば広告には52㎡となっているマンションを購入したところ、完成後の登記簿を見ると49㎡しかなかったということが生じるのです。

実際に私の知り合いにも面積不足で住宅ローン控除を受けられなかった人がいますので、皆様方も十分ご注意下さい。

この人は抽選で次点になっていたのですが、当選した方がキャンセルしたので購入できたということでした。キャンセルした人はおそらく50㎡に満たないということが分かったのではないでしょうか? 

因みに、当選したときは夫婦ともどもバンザイ三唱したそうです。

2009年08月11日

公正証書遺言だけがベストではない!

皆様方は遺言について考えたことはありますか? 今回はこの遺言について私の経験談を交えてご紹介したいと思います。

ご承知のように遺言の作成方法には次の3つの方式があります。

自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言

以下、それぞれについて簡単にまとめておきます。

<自筆証書遺言>
文字通り、遺言者自身が自書する方式です。自書ということですからワープロは認められていません。あくまでボールペンとか万年筆で書かなければならないのです。

ところがこれが意外と大変。財産がほとんど無いとか、全ての財産を特定の個人に渡す場合は「財産全部を△△△に相続させる。」といった文章だけでOKですが、細かい財産がたくさんあり、各人に配分しようとすると気が遠くなります。

もちろん間違えても修正することは可能ですが、修正箇所が多くなると何が何だか分からなくなってしまいます。

また不動産の場合には登記簿通りに正確に書かないと相続登記でハネラレル可能性がありますので、かなり神経を使うことになります。

ワープロで作成できればラクチンなのですが、それは一切ご法度。なぜ認めてくれないのか、いろいろ考えたのですが、公正証書遺言のほうに導こうとしているような気がします。公正証書遺言であれば公証人の仕事が増えるという理由からです。

因みに公証人になる人で多いのは元裁判官、元検事、元法務事務官です。つまり公証役場というのは、まぎれもなく、そういった人達の天下り先なのです。

そして、その8割ぐらいの人の年収が3000万円以上だということですから、かなりオイシイ商売です(身分は国家公務員でありながら独立採算制をとっています)。

<公正証書遺言>
公正証書遺言とは文字通り、公証役場で公証人に作成してもらう方式の遺言です。公正証書の場合には自書する必要がありませんのでラクチンラクチン。

ただし、利害関係のない証人が2名必要になりますし、所定の費用もかかります。なお、公正証書遺言を作成してもらうためには原則として公証役場に行く必要がありますが、それが難しい場合には自宅とか病院まで公証人が来てくれます。

来てくれるのは良いのですが通常の場合に比較して費用が1.5倍に跳ね上がりますし、出張費が1万円別途かかります。悩ましいところです。

なお、この出張ですが、最近は依頼する人が多いようで、先日電話した所は12日先まで予約が一杯でした。商売繁盛といったところでしょうか?

<秘密証書遺言>
この秘密証書遺言とはご自分で作成した遺言書(代筆とかワープロでもOK)に封をして公証役場に持参し、公証人に日付を記載してもらうというものです。

ただし、この場合も利害関係のない証人が2名必要になりますので、それなりの手間はかかります。なお、この秘密証書遺言を作成する人はあまり多くないようです。

以上ご説明した以外にもいろいろ違いはありますが、ここでは省略いたします。細かい違いを確認することが目的ではなく、遺言者の健康状態の違いで、どの方式がベターかについて私の経験談をご紹介することが主眼だからです。

実は前回のブログでご紹介したお客様のケースで、長女だけでなくお母様にも遺言書を書いてもらったのです。

その時、このお母様はガンを罹っており、余命いくばくもない状態でした。したがって公証役場の人に病院に来てもらう時間的余裕がなかったので(かなり先の予約になる)、自筆証書遺言にすることにしました。

入院している病院でお母様に実際に書いてもらったのですが、手が震えてなかなか上手く書けませんでした。それでも修正を重ねながらどうにかこうにか完成することができたというわけです。

ところで、このお母様はその5日後に亡くなられました。間一髪というところですが、人間の寿命というのははかないものです。

そういうわけで遺言書を書く必要性がある場合には、専門家に相談した上で、できれば元気な内に書いておきたいものです。