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2009年12月28日

建物に係る消費税の還付はどうなる?

平成22年度の税制改正に係る税制改正大綱が21年12月22日に発表されましたが、その中に「消費税の仕入控除税額の調整措置に係る適用の適正化」という項目が新たに設けられました。

これについては既にご承知だと思いますが、要するにアパートかマンションに係る消費税の還付請求につき歯止め措置を設けようとするものです。

ご参考のために書いておきますと、大綱の文章は次のようになっています。

「① 消費税の仕入控除税額の調整措置に係る適用の適正化

消費税の課税の適正化の観点から、調整対象固定資産の取得に係る仕入控除税額が過大であった場合に減額する調整措置の対象となるよう、次の見直しを行います。

イ.事業者免税点制度の適用の見直し

次の期間(簡易課税制度の適用を受ける課税期間を除きます。)中に、調整対象固定資産を取得した場合には、当該取得があった課税期間を含む3年間は、引き続き事業者免税点制度を適用しないこととします。

(イ) 課税事業者を選択することにより、事業者免税点制度の適用を受けないこととした事業者の当該選択の強制適用期間(2年間)

(ロ) 資本金1,000 万円以上の新設法人につき、事業者免税点制度を適用しないこととされる設立当初の期間(2年間)

(注1)上記の改正は、(イ)に該当する場合には平成22 年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者の同日以後開始する課税期間から適用し、(ロ)に該当する場合には同日以後設立された法人について適用します。

(注2)調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で100 万円(税抜き)以上のものをいいます。

ロ 簡易課税制度の適用の見直し

イにより、引き続き事業者免税点制度を適用しないこととされた課税期間については、簡易課税制度の適用を受けられないこととします。」

以上ですが、これでは分かりにくいと思いますので、簡単に解説しておきます。

1.今回の改正は還付を受けられなくしたのではないということ。

まず最初にシッカリと理解していただきたいのは、今回の改正は消費税の還付請求をできなくしたのではないということです。

つまり改正後であっても従来どおり還付請求できるが、還付を受けた消費税については3年後に返還しなければならない可能性が高まったということです。

2.既に還付請求した人については適用されない。

今回の改正は22年3月31日までに還付を受けた人は適用されません。つまり既に還付を受けた人は取り戻されることはないということです。良かったですね。

なお、以上は税制改正大綱をもとにした解説です。多分、予定通りに改正されると思いますが、22年3月31日までに改正される法律により最終的に確定されます。

2009年12月14日

新規開業と開業届出書の提出の必要性の有無

12月になり、ますます寒さが身にしみるようになりましたが、皆様いかがお過ごしですか? 

ところで12月というと不動産賃貸業者にとっては決算月ということになりますが、そろそろ税務署から決算書の用紙が届くものと思います。

もしアパマン等を新規に取得(購入、建設)したにもかかわらず、まだ税務署等に開業届出書を提出していない場合にはできるだけ早急に提出するようにして下さい。

この届出書を提出しないと用紙は送ってきません。当然ですね。送ってきたらそれこそビックリします。

それではここで1つ質問します。

1ヵ所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下であれば確定申告する必要がありませんが、開業届出書については提出する必要があるでしょうか?

不動産所得が20万円以下であれば確定申告する必要はないのですが、開業届出書については提出する必要があるかどうかということです。

これについては提出する必要はないことになっております。当たり前ですね。確定申告しないにもかかわらず開業届出書だけが送られてきたら税務署としても困ってしまいます。

それでは確定申告する場合はどうでしょうか? つまり不動産所得は20万円以下だが、医療費控除とか住宅ローン控除を受けるために確定申告する場合には開業届出書を提出する必要があるか否かということです。

因みに、医療費控除等を受ける場合にはたとえ不動産所得が20万円以下であったとしても給与所得に合算して所得税を計算する必要があります。

不動産所得が20万円以下だとしても確定申告して税金を取り戻す場合には不動産所得を含めて申告する必要があるのです。税務署もそういったことについては抜かりがありません。

それでは答えを言います。確定申告する場合でも事業的規模に該当しない場合には開業届出書は提出する必要はありません。

つまり、この届出書は確定申告するケースで、なおかつ事業的規模の不動産貸付けを開始した場合にだけ提出すればいいということになっているです。税務というのは本当にややこしいですね。

なお、開業した場合にはこれ以外に様々な届出書とか申請書を提出する必要があります。以下、代表的な提出書類について解説しておきますのでご参考にして下さい。

<新たに不動産の貸付けを開始したときの届出書・申請書>

1.「個人事業の開廃業等届出書」(上記、開業届出書のこと)

事業的規模の不動産貸付けを開始したときは、開業の日から1ヵ月以内に「個人事業の開廃業等届出書」を提出する必要がある。

2.「所得税の青色申告承認申請書」

不動産の貸付けを開始した年分から青色申告をしようとする場合は、開業の日から2ヵ月以内(その年の1月15日以前に開業した場合は3月15日まで)に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受ける必要がある。

もし提出期限までに提出しなかった場合には次年度からの適用となるので、初年度は白色申告となり青色申告の各種特典は受けられない。

※ 青色申告については事業的規模に該当しなくても適用可能。

3.「青色事業専従者給与に関する届出書」

この特例は事業的規模で営んでいる人のみ適用を受けられる。

提出期限は青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合とか新たに専従者を採用することとなった場合は、その開業の日や専従者を採用することとなった日から2ヵ月以内)に提出する必要がある。

4.「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」

個人の場合、この届出書を提出しないと定額法を採用することとなる。一方、法人の場合には逆にこの届出書を提出しないと定率法を採用することとなる(ただし、建物については法人の場合であっても定額法となる。つまり選択の余地はないということ)。

なお提出期限は、開業した年の翌年3月15日まで。