戸建て貸家の損得を検証する
今回は戸建ての貸家に関する私の考えを述べてみたいと思います。
実は最近、キャッシュフローを改善するためと相続税の節税を図るために、所有している土地をどのように活用したら良いかプランニングしてほしいという依頼があったのです。
土地活用を考えるに当たって大切なことはリスクをできるだけ抑えながら、かつキャッシュフローを最大化することです。
また相続税がかかる場合にはモメナイ遺産分割を考慮に入れながら、納税資金(物納を含む)の確保と節税を同時に達成する必要があります(節税額が多ければ納税資金はそれだけ少なくて済む)。
このように一口に土地活用と言ってもクリアすべき課題は非常に多岐に亘っているので、意外と大変な作業になります。オシャレなアパマンを建てればハイおしまいではないのです。
ところで、このお客様の所有している土地は千葉県にあります。現地調査しないとサッパリ分かりませんので電車で行ってきたのですが、周りは一戸建ての住宅密集地でした。
既に数多くのハウスメーカーが様々な提案を持ってきたそうですが、そのほとんど全てがアパマン経営とのこと。こんな所にアパマンを建てたって入居者が見付かるわけがないというのがこのオーナーの考えです。
正直なところ私もアパマンでは相当厳しいだろうなということで、戸建ての賃貸住宅について徹底的に研究することにしました。
既に何冊か本は読んだことがあるのですが、もう一度読み返すと共に、インターネットで最近の状況をいろいろ検索してみたところ、次のような理由により、戸建ての貸家を建てる人が増えているようです。
< 戸建て貸家のメリット>
①利回りが高い。
②狭小な土地でも活用できる。
③最寄り駅から遠くてもそれなりに需要がある。
④遺産分割が比較的容易である。
⑤上下階、隣室の生活音を気にせず暮らせる。
⑥ガーデニングができる。
⑦ペットが飼える。
⑧バーベキューができる、etc。
これらのうち②と③は今まで活用を図れなかった土地でも活用を図れるということでメリット大です。
また④の遺産分割が容易であるという点ですが、所有する土地がそれほど広くない方にとってはメリットになります。
そして⑤~⑧は入居者サイドから見たメリットですが、当然ながらこれらは入居率アップに貢献することでしょう。ただし家賃設定を間違えなければという条件付ですが・・・。
問題は①の「利回りが高い。」という点です。以下、この点について検証してみましょう。
例えば、1戸当たりの工事費(諸経費を含む)を1,000万円とし、家賃を月額15万円とした場合、利回りはいくらになるでしょうか?
それほど難しくないですね。年間の家賃収入が120万円(15万円×12ヵ月)ですから、これを工事費の1,000万円で割れば利回りは18%となります。18%というのはアパートとかマンションと比較した場合、確かに高いと思います。
これなら全額を借金して建てても余裕綽綽(しゃくしゃく)です。それではなぜこのように高利回りであるにもかかわらず今まで戸建ての貸家を建てる人が少なかったのでしょうか?
その理由は簡単です。土地の有効活用にならないからです。利回りが18%にもなるのになぜ有効活用とは言えないのかとお叱りを受けそうですが、その理由は次の通りです。
つまり利回りが高くても手取り収入の絶対額はそれほど多くないということです。利回りというのは分かりやすいのでよく利用されるのですが、それだけで判断するのは間違いです。別途、絶対額でも比較する必要があるのです。
それではなぜ戸建ての賃貸住宅は手取り収入の絶対額がそれほど多くないのでしょうか? これについては説明するまでもないですね。容積率を目一杯活用できないからです。
通常のアパートでも容積率を余らすケースが多いのですが、戸建ての場合にはそれ以上に容積率を使い切れないということです。
このように戸建て住宅というのは土地活用という観点からはイマイチだったのですが、インターネットで検索しますと、アチコチ新築物件が増えています。
その理由をいろいろ考えてみますと、原因はやはりアパマンの供給過剰にあるようです。土地の有効活用という観点からはイマイチだが、入居率とか将来性を考えると戸建てのほうが良いのではないかというわけです。
ところで上述した計算例は月額家賃を15万円にしましたが、都心を離れると15万円で借りる人はほとんどいません。
そこで、当該物件について近辺の家賃を調査したところ、10万円が最高限度のようでした。そうしますと利回りは12%になるのですが、戸建て住宅の場合には管理費等がほとんどかからないため、それなりの手取り収入は確保できそうです。
最終的にどうなるかは分かりませんが、少子高齢化が進んでいくことを考えますと、無理をしないという観点からも戸建て貸家は重要な選択肢の一つになっていくのではないでしょうか?