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2009年11月25日

戸建て貸家の損得を検証する

今回は戸建ての貸家に関する私の考えを述べてみたいと思います。

実は最近、キャッシュフローを改善するためと相続税の節税を図るために、所有している土地をどのように活用したら良いかプランニングしてほしいという依頼があったのです。

土地活用を考えるに当たって大切なことはリスクをできるだけ抑えながら、かつキャッシュフローを最大化することです。

また相続税がかかる場合にはモメナイ遺産分割を考慮に入れながら、納税資金(物納を含む)の確保と節税を同時に達成する必要があります(節税額が多ければ納税資金はそれだけ少なくて済む)。

このように一口に土地活用と言ってもクリアすべき課題は非常に多岐に亘っているので、意外と大変な作業になります。オシャレなアパマンを建てればハイおしまいではないのです。

ところで、このお客様の所有している土地は千葉県にあります。現地調査しないとサッパリ分かりませんので電車で行ってきたのですが、周りは一戸建ての住宅密集地でした。

既に数多くのハウスメーカーが様々な提案を持ってきたそうですが、そのほとんど全てがアパマン経営とのこと。こんな所にアパマンを建てたって入居者が見付かるわけがないというのがこのオーナーの考えです。

正直なところ私もアパマンでは相当厳しいだろうなということで、戸建ての賃貸住宅について徹底的に研究することにしました。

既に何冊か本は読んだことがあるのですが、もう一度読み返すと共に、インターネットで最近の状況をいろいろ検索してみたところ、次のような理由により、戸建ての貸家を建てる人が増えているようです。

 < 戸建て貸家のメリット>
   ①利回りが高い。
   ②狭小な土地でも活用できる。
   ③最寄り駅から遠くてもそれなりに需要がある。
   ④遺産分割が比較的容易である。
   ⑤上下階、隣室の生活音を気にせず暮らせる。
   ⑥ガーデニングができる。
   ⑦ペットが飼える。
   ⑧バーベキューができる、etc。

これらのうち②と③は今まで活用を図れなかった土地でも活用を図れるということでメリット大です。

また④の遺産分割が容易であるという点ですが、所有する土地がそれほど広くない方にとってはメリットになります。

そして⑤~⑧は入居者サイドから見たメリットですが、当然ながらこれらは入居率アップに貢献することでしょう。ただし家賃設定を間違えなければという条件付ですが・・・。

問題は①の「利回りが高い。」という点です。以下、この点について検証してみましょう。

例えば、1戸当たりの工事費(諸経費を含む)を1,000万円とし、家賃を月額15万円とした場合、利回りはいくらになるでしょうか?

それほど難しくないですね。年間の家賃収入が120万円(15万円×12ヵ月)ですから、これを工事費の1,000万円で割れば利回りは18%となります。18%というのはアパートとかマンションと比較した場合、確かに高いと思います。

これなら全額を借金して建てても余裕綽綽(しゃくしゃく)です。それではなぜこのように高利回りであるにもかかわらず今まで戸建ての貸家を建てる人が少なかったのでしょうか?

その理由は簡単です。土地の有効活用にならないからです。利回りが18%にもなるのになぜ有効活用とは言えないのかとお叱りを受けそうですが、その理由は次の通りです。

つまり利回りが高くても手取り収入の絶対額はそれほど多くないということです。利回りというのは分かりやすいのでよく利用されるのですが、それだけで判断するのは間違いです。別途、絶対額でも比較する必要があるのです。

それではなぜ戸建ての賃貸住宅は手取り収入の絶対額がそれほど多くないのでしょうか? これについては説明するまでもないですね。容積率を目一杯活用できないからです。

通常のアパートでも容積率を余らすケースが多いのですが、戸建ての場合にはそれ以上に容積率を使い切れないということです。

このように戸建て住宅というのは土地活用という観点からはイマイチだったのですが、インターネットで検索しますと、アチコチ新築物件が増えています。

その理由をいろいろ考えてみますと、原因はやはりアパマンの供給過剰にあるようです。土地の有効活用という観点からはイマイチだが、入居率とか将来性を考えると戸建てのほうが良いのではないかというわけです。

ところで上述した計算例は月額家賃を15万円にしましたが、都心を離れると15万円で借りる人はほとんどいません。

そこで、当該物件について近辺の家賃を調査したところ、10万円が最高限度のようでした。そうしますと利回りは12%になるのですが、戸建て住宅の場合には管理費等がほとんどかからないため、それなりの手取り収入は確保できそうです。

最終的にどうなるかは分かりませんが、少子高齢化が進んでいくことを考えますと、無理をしないという観点からも戸建て貸家は重要な選択肢の一つになっていくのではないでしょうか?

2009年11月10日

建物の固定資産税評価額はどのようにして決まるのか? ( 2回目)

前回は現地調査に行く前の事前準備が中心でしたが、今回は具体的な評価方法についてご説明します。説明するといっても私は市町村役場の評価担当者ではありませんので、細かいことは分かりません。

そこで財団法人資産評価システム研究センターというところが出している「木造家屋評価実務マニュアル」(ぎょうせい刊)という書籍を参考にしております。

この書籍は評価担当者向けの研修会で使用したテキストを基にしているため、かなり具体的に書かれています。それにしても家屋を構成している各種の部材等には1つずつ名前が付けられていますが、頭が痛くなりますね。

それはさておき、建物というのは各項目毎に点数を付け、それらを合計することにより評価します。

使用している材料が高価であれば点数が高くなりますし、面積が広くなれば同様に点数が高くなるというわけです。

また日本家屋によくありますが、かなり凝った造りの場合には手間がかかりますので加点されます。例えば、手作りの立派な欄間(らんま)を付ければそれだけ点数が高くなるというわけです。

学校のテストの点数の場合には素直に喜べますが、家屋の評価点数の場合には税金が絡んできますので複雑な思いに駆られるのではないでしょうか?

ところで、このような評価方法について逐一解説してもあまり意味がありませんので、ここでは今までにハウスメーカーの人に質問された中から重要と思われる点について2点ほどご紹介しておくこととします。

<質問1>・・・天井の高さが1.5m未満の場合、床面積に算入されないそうですが、この部分については固定資産税がかからないという解釈で良いでしょうか?

 (答え) 確かに床面積には算入されませんが、工事費はかかっているわけですから、それだけ単価(点数)が高くなるとのことです。

<質問2>・・・床暖房をつけると固定資産税がアップすると聞きました。本当でしょうか?

 (答え) 建物には建物本体だけでなく附属設備も含まれます。そして、この場合の附属設備ですが、あくまで「建物と一体となって機能を発揮する設備」だけが課税対象となります。

したがって、例えばタンスとかテレビ、ダイニングセットなどの家具は対象となりません。これらは簡単に移動できるからです。

一方、ビルトイン式(埋め込み式)の空調設備とか換気扇、キッチンユニット、洗面化粧台、風呂、トイレなどは課税の対象となります。

それではご質問にあります床暖房はどうでしょうか? 既にお分かりだと思いますが、床暖房は建物の床にセットするわけですから当然ながら対象となります。

なお附属設備については1個当たりで計算するものと、1㎡当たりで計算するものに分かれます。例えば洗面化粧台とかユニットバスなどは1個当たりで計算しますが、床暖房の場合には1㎡当たりで計算します。対象となる面積は床暖房の設置面積です。

以上、建物の固定資産税評価額がどのようにして算定されるのかについて概観してきたわけですが、何となくイメージは掴めたでしょうか?

いずれにしても実際の作業は詳細を極めます。あまりにも単純化すると課税の公平が保たれなくなるということで、このように細かく評価しているということです。ご苦労さんです。

ところで固定資産税評価額は建築費と比較してどの程度に収まるのでしょうか? 要するに何パーセント程度になるのかということです。

これについては様々な人(税理士、会計士等も含む)が何の調査をすることもなく勝手にいろいろと書いてくれているので困ってしまうのですが、私がお客様のデータを調べた限り、だいたい次のような感じになります。

・鉄筋コンクリート造・・・工事費×30~40%

・木造・・・・・・・・・・工事費×40~50%

もちろん工事費の単価が高い場合と低い場合とでは割合が異なりますが(高い場合には割合が低くなります)、多くの著書を拝見した限り60%というのが圧倒的に多いのです。

ローコスト住宅で60%というのも存在はしますが、それにしてもあまりにも実態からかけ離れています。あまり実務を経験されていないのかも知れませんが・・・。

いずれにしても相続対策でアパート・マンション等を建てる場合(自宅も含む)、工事費と固定資産税評価額との差額が評価減になるということだけは理解しておいて下さい(アパマンの場合には更に借家権割合である30%を控除する)。