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2006年11月24日

サブリース契約の注意点

サブリース契約というのは要するに一括借り上げのことです。そのアパートがいかに空室が多くても当初契約した家賃が支払われるためオーナーとしては安心できる制度だと言えます。

ところが、どんな制度でもメリットだけということは絶対ありません。もし、そのようなものがあるとすると取引の相手が常にソンをするだけということになり、その制度は長続きしないからです。

サブリース契約の場合で言えば、デメリットとして次のようなものが考えられます。

①借上げ家賃は市場家賃の85%から90%程度である。つまり、この差額がサブリース会社の収入となり、逆にオーナー側からすればそれだけ負担が発生することになるわけである。サブリース会社としてはこの収入で空室リスクを負担したり修繕費あるいは管理費等を支払うことになる。

②サブリース会社が倒産すると家賃を支払ってくれなかったり敷金が戻って来なくなる。

まず①ですが、気を付けていただきたいのは借上げ家賃の相場です。通常は市場家賃の85%から90%程度が多いのですが、元になる市場家賃を高くすると、当然ながらオーナーに入る収入は多くなります。

借上げ家賃が高いということは、逆の立場、つまりサブリースをする側からすれば儲けが少ないということです(場合により赤字となる)。それなのに、このような契約をするということは何らかの魂胆があると考えるべきなのです。

ご承知だと思いますが、サブリース契約というのは、たとえ全体の借上げ期間が15年とか20年といった非常に長期であったとしても借上げ家賃が保証されるのはあくまで2年とか3年の間だけです。その期間が過ぎれば更新ということになりますが、その場合の借上げ家賃はその時の相場を勘案して再度決めることになるのです。

したがって、借上げ家賃を通常よりも高くしたからといって実際に負担するのは当初2~3年だけです。この程度のことであれば建築費に若干オンすれば済むことです。

例えば、1億円のアパートを建てた場合を考えてみましょう。表面利回りを12%としますと年間の満室時の家賃収入は1200万円となります。この場合に借上げ家賃を建築費の11%(1100万円)とし、入居者から貰う家賃収入が1000万円だとした場合、1年間ではたかだか100万円(1100万円-1000万円)の負担です。2年間では200万円に過ぎません。200万円の負担で1億円の収入が期待できるのです。

つまり、次のような流れになります。まず高めの家賃設定で事業収支を良くした計画書を作り建築を勧めます。サブリース契約ですからオーナーの危険負担はほとんどありません。その結果、アパート経営をスタートするのですが、当初の2、3年は計画通りに収入が入ります。ところが、その後の更新契約では世間相場が下がったと言って借上げ家賃を下げて来るのです(中古の家賃は通常、新築の家賃より下がります)。

このように新築時のサブリース契約には上述したような落とし穴が隠されているということは是非理解しておいて下さい。私は何もサブリース契約が悪いと言っているのではありません。リスクを軽減するには非常に良い制度だと考えております。
制度としては良いのですが、中には制度を悪用する業者がいるので、気を付けていただきたいということです。

次に②のサブリース会社が倒産するという危険性ですが、これについてはサブリース会社の経営の安定性を調査する必要があります。上場していれば財務情報を入手できるのですが、上場していない場合には融資を受ける金融機関等から情報を入手するようにして下さい。
いずれにしましてもサブリース契約だからといって安心してはいけないということです。

2006年11月14日

小規模のアパートでは白色申告で十分!

セミナーなどでよく受ける質問に、青色が良いか、白色が良いかというのがあります。

ご承知のとおり、青色申告を選択しますと、代表的なものとして次の3つの特典が与えられます。

1.青色申告特別控除(10万円または65万円)を受けられる
   ※65万円の控除を受けるためには正規の簿記の原則(複式簿記のこと)に従って記帳すること、5棟10室以上であること、現金主義の特例を受けていないことが必要です。

2.青色事業専従者に対して給与を支給できる
   ※5棟10室以上であることが必要です。この要件は白色の場合の専従者控除の場合も同じです。

3. 純損失(不動産所得の赤字)の繰越控除を適用できる
   ※純損失の繰越控除とは不動産所得の赤字(純損失の額)を翌期以降3年間まで繰り越し、その時点の黒字の所得(給与所得、事業所得、不動産所得等)と損益通算することです。

したがって、一見、青色申告のほうが良いようですが、青色申告にもデメリットがあります。それは記帳義務です。上記青色申告特別控除でもご説明しているとおり、65万円の特別控除を受けるためには正規の簿記の原則に従って記帳をしなければなりません。

この正規の簿記の原則というのは要するに複式簿記のことですが、通常の財務会計のソフトを使って入力すれば自動的にこの要件を満たした書類が作成できます。ただし、あくまで入力を間違わないという前提に立っての話です。

ところがこれについては残念ながら一般の人で仕訳(しわけ)が正確に分かる人は少ないようです。したがって、当初はある程度、簿記の勉強をするとか税理士等に教えてもらう必要はありそうです(簿記の勉強はためになりますので是非トライして下さい)。

ところで上述したとおり、65万円の青色申告特別控除を受けたり青色事業専従者に給与を支給するためには5棟10室以上であることが必要です。もし、所有している物件の戸数がこれ未満であれば青色申告を選択したからといっても10万円の特別控除しか受けられません。労多くして実なしなのです。

一方、白色申告の場合には所得が300万円以下であれば記帳義務はありません。単に領収書等を保存しておくだけで良いのです。このようなことから、10戸以上のアパートを所有している場合はともかく、4戸とか6戸程度のアパートの場合は白色申告のほうが良いと思います。

なお、白色申告の場合は上述したとおり、所得が300万円以下であれば記帳義務はないのですが、家賃等の入金管理は当然ながらキチンとしておくべきですし、記帳義務がないとはいえ、現金出納帳程度はマメに付けておくべきです。これらは経営の基本の基本です。