« 2007年12月 | メイン | 2008年02月 »

2008年01月24日

初めての決算、注意すべき点は何?(二回目)

前回は決算に当たっての手続き面とか考え方を中心としてまとめましたので、今回は決算書の具体的な作成方法について、Q&A方式で記載しておくこととします。

具体的な作成方法といっても一般的な解説は税務署から送られてくる「青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」に譲り、ここでは比較的難解な3つの科目に絞り説明しておくこととします。

なお、「・・・書き方」は税務署から既に送られて来ていると思いますが、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます(郵送されて来ていない場合は開業届出書をまだ提出されていないのでは?)。

<質問1>
私は自己所有地に借入金でアパートを建てたのですが、資産の部にある土地の欄には何らかの金額を記載するのですか?

例えば、相続で土地を取得している場合には土地の取得価額が分かりません。そこで、もし土地の取得価額をゼロ(0)とした場合、どのような決算書になるでしょうか?

一般的なアパート経営の場合、資産の部には現金、預金、未収賃貸料、建物、建物附属設備等が計上され、負債の部には借入金、未払金、保証金・敷金(預り分)等が計上されます。

したがって、資産の部から負債の部を差し引いた額はプラスの場合もあればマイナスの場合もあります(当初はプラスであっても減価償却の関係で数年後にマイナスになることがあります)。

プラスということは資本の額(個人の場合は元入金(もといれきん)と言う)がプラスということであり、逆にマイナスの場合は資本の額がマイナスということになります。

そして資本の額がマイナスということは債務超過であることを意味するのですが、このような決算書というものはカッコイイでしょうか? そんなわけないですよね。資産より負債の方が多いわけですからヒドイ決算書ということになります。

そこで決算書の見栄えを良くするために土地勘定に一定の金額を記載するのですが、どのような額を記載すればいいのでしょうか?

通常は土地の固定資産税評価額を記載しておりますが、相続税評価額でも公示価格でも構いません。ただし、余白にその旨を書いておいたほうがいいでしょう。

なお、いったん記載した額は変更しません。評価額がアップしてもそのままにしておきますので、ご注意下さい。この点が他の勘定科目と異なるところです。

<質問2>
資産の部にある「事業主貸」勘定には一般的にどのような取引を記載するのですか?

「事業主貸」というのは簿記の教科書には出てきません。簿記の教科書は法人を対象としているので、このような個人特有の勘定科目は勉強しないのです(「事業主借」とか「元入金」も同じ)。

したがって、私も実務で個人の決算書を作成し始めた当初は何か違和感があったのですが、25年以上も経験しますと、さすがに慣れてきました。

それはさておき、この「事業主貸」勘定は「・・・書き方」にもありますように「生活費その他の家事上の費用や所得税、住民税などの必要経費にならない租税公課など本年中に業務用資金から支出した金額の合計額を記入」します。

業務用の預金から現金を引き出して私的なものに使ったとか、アパートと自宅の固定資産税を一緒に支払った場合の自宅部分等についてはこの科目を使用することになります。

<質問3>
負債の部にある「事業主借」勘定には一般的にどのような取引を記載するのですか?

同じく「・・・書き方」によりますと「業務用資金として家計から受け入れた金額や預金通帳につけ込まれている利息などの金額の合計額を記入」することになります。

先程とは逆に業務用資金が不足するとき、家事用のお金で事業用の経費を支払った場合等にはこの科目を使用します。

ところで「預金通帳につけ込まれている利息」もこの科目を使用することになっているのですが、この理由はお分かりですか?

これは要するに受取利息は除くということです。ご承知のように個人の場合は所得を全部で10に分類します。例えば、給与所得、事業所得、不動産所得、利子所得、譲渡所得等です。

したがって、不動産所得に関する決算書を作成するときは、利子所得に該当する受取利息は除く必要があるのです。

以上、比較的難解な3つの科目について説明して来たのですが、ご理解いただけたでしょうか? もし、分からないことがあれば税務署に聞くようにして下さい。個人の場合には比較的丁寧に教えてくれます(逆に言えば法人の場合は冷たいということになります)。

一回でも確定申告を経験すれば次回からは比較的楽にできるようになると思いますので頑張って下さい。


2008年01月15日

初めての決算、注意すべき点は何? (一回目)

皆さん、明けましておめでとうございます。今年も引き続き、宜しくお願いいたします。

今回は平成20年度における最初のブログですが、もうしばらくしますと個人の確定申告が始まりますので、今回と次回はアパート経営が始めての方のために確定申告に当たっての注意点についてまとめておくこととします。

確定申告というのは通常、税務署に対して申告書を提出することですが、アパート経営の場合には1年間の不動産所得を計算する必要があり、この手続きのことを一般的に決算と言います。

つまり、決算とは1年間(個人の場合は1月1日から12月31日)の収入と必要経費を集計して、決算書(損益計算書と貸借対照表)を作成することです。

そこで1回目である今回はこの決算に当たっての手続き面とか考え方を中心として、次回は決算書の具体的な作成方法について、Q&A方式でまとめておきますので、ご参考にして下さい。

<質問1>
昨年の8月に中古のアパートを購入したのですが、税務署には特に何も届け出ておりません。どうすればいいでしょうか?

アパート経営を始めますと、原則として1カ月以内に税務署と県税事務所に開業届出書を提出する必要があります。既に提出期限が過ぎておりますので、できるだけ早く提出して下さい。税務署へ行けば提出書類一式もらえます。

なお、青色申告については開業後2カ月以内(1月1日から1月15日開業の場合は3月15日まで)に提出することになっておりますので、初年度分は白色申告になります。青色申告の場合は1日でも遅れれば一切認めてくれませんので、ご注意下さい。

<質問2>
昨年の2月にアパートが完成したのですが、事業は何時からスタートしたことになるのですか?

原則としてアパートのカギをもらった日が事業を開始した日ということになります。例えば、2月3日に工事の検査を終了してカギをもらったのであれば、その日が事業を開始した日として税務署に届け出る日(事業開始日)となります。

<質問3>
事業を開始するまでに支払ったいろいろな経費はどのように処理するのですか?

工事費の支払は預金通帳に記載されていると思いますが、現金支払のものについては大学ノートに日付順に書いておいて下さい。

そして、これらの工事費等については、いったん建設仮勘定(けんせつかりかんじょう)に計上して、その合計額を計算します。次に工事費の見積書を参照して、その合計額を建物、建物附属設備、構築物等のそれぞれの額で按分します。

なお、木造のアパートの場合には按分しないで全額を建物として計上してもOKです。ただし、建物の耐用年数が附属設備等よりも長いので、毎年の減価償却費は少なくなります。

ところで以上は工事費の会計処理ですが、請負契約書に貼った印紙とか工事中の支払利息はどのように処理するのでしょうか?

これらも基本的には工事費(建設仮勘定)に含めて処理することになります。その理由は、これらの経費も建物等を取得するために必要な経費だからです。

ただし、建物が完成した後に支出することになる保存登記にかかる登録免許税とか不動産取得税等は支払った時点の一時経費となります。

いろいろややこしいのですが、考え方の基本さえおさえておけば大きな間違いはしないと思います。