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2008年12月25日

お金のかかる節税、かからない節税

今回は「お金のかかる節税、かからない節税」というタイトルでお話したいと思います。節税対策というと実に様々なものがありますが、今回お話したいのは所得税の節税についてです。

実は最近、当事務所のお客様から、「最近、資金繰りがかなり厳しくなったのですが、他に何か節税できる方法はありませんか?」と質問されたのです。

このお客様は私の提案により不動産所有会社を設立したり、奥様を青色専従者にしたりと考えられる様々な節税対策を既に実行されております。それにもかかわらず、もっと節税したいと言われるのです。

節税のアドバイスをすることは我々の仕事ですから、できるだけ積極的にご提案したいとは思いますが、節税を考えるに当たって是非シッカリ理解していただきたいことがあります。

それは、節税にはお金がかかる方法と、かからない方法があり、両者を明確に区別しておく必要があるということです。

例えば、お金のかからない方法には次のようなものがあります。

<お金のかからない節税対策の一例>
1.青色申告にして青色申告特別控除を適用する。
2.専従者給与を支払う。

内容についてはご存知だと思いますので省略しますが、「2.専従者給与を支払う。」という対策は形式上はお金が動きますが、第三者に支払うわけではないので、この範疇に入れております。

一方、お金のかかる方法には次のようなものがあります。

<お金のかかかる節税対策の一例>
1.小規模企業共済制度に加入する。
2.国民年金基金に加入する。

これらについてもほとんどの方はご存知だと思いますが、詳しくない方のために若干補足しておきます。

まず「1.小規模企業共済制度に加入する。」という対策ですが、これは要するに自営業者に対する国の退職金制度ということができます。

この制度に加入しますと満期のときに退職金が支払われるわけですが、掛け金は課税所得から控除できますので所得税の節税になります。つまり所得税の節税を図りながら退職金の準備ができるという制度です。

掛け金は月額1,000円から7万円まで任意に選択できます。より多く加入しますと当然ながら、それだけ課税所得が減るというわけです。

このお客様の場合、奥さんとお子さん(就職せず、身内の管理会社の役員になっている)がそれぞれ最高限度額である月額7万円を掛けておりますので、年間の支払額は84万円×2人=168万円となります。ご主人は現在サラリーマンなので加入できません。

次は「2.国民年金基金に加入する。」という対策ですが、これは通常の国民年金とは別枠で加入するものです。この掛け金も社会保険料控除として課税所得から控除されます。

なお、加入限度額は月額68,000円ですから、年額では816,000円となります(加入資格は20歳以上59歳以下)。

ところで、このお客様の場合、奥さんとお子さんがそれぞれ目いっぱい加入しておりますので、年間の掛け金は2人合わせて1,632,000円です(ご主人は年齢の関係から加入できません)。

このように節税対策にはお金がかかる方法と、かからない方法があるわけですが、お金がかかる対策の場合には生活資金に余裕があるのか否かを十分検討してから実行する必要があるということです。

ここで、ご紹介した「小規模企業共済制度に加入する。」方法とか、「国民年金基金に加入する。」方法はいずれも退職金とか年金として将来もらえるものです。

つまり、現時点での生活費を抑えて、将来もらえるお金を増やそうとするものです。聞こえは良いのですが、これが意外と大変なのです。

例えば、所得税等の適用税率が20%の場合、100を支出して(掛け金を支払って)初めて20の支出を抑えられる(節税になる)のです。

つまり現時点で考えると、差額の80は持ち出しになってしまうということです。節税して資金繰りを楽にしようとした結果が、逆に資金繰りを厳しくすることになるということなのです。

いくら税金を払うのがイヤだとしても、生活できなくなったのでは本末転倒ですし、キューキューでも人生楽しくありません。

このように節税には落とし穴があるということをシッカリとご認識いただき、税金もホドホドに払われることをお奨めいたします。


2008年12月12日

幹線沿いに高層マンションを建てるときの注意点

以前、地方で講演をしていたときの質問に次のようなものがありました。

そのお客様は、その当時、10階建ての高層マンションを建てる計画をしているとのことでした。大勢のお客様が聞いている最中ですから、そんなに詳しくたずねた訳ではないのですが、要するに現在計画しているプランについて、このまま実行しても良いかという質問です。

実は大体の目安として、この程度の利回りはないと経営的に厳しいという話をしていたのですが、そのお客様が計画しているプランの表面利回りは6%台だというのです。

私は、いくら地方でも木造の場合で8%はほしいという話をしたので、このお客様は心配になったのだと思います。

個別相談であれば、資金はどうするのかとか、他に所有している土地はないのかとか、いろいろ確認するのですが、なにぶん大勢の人が聞いているので、それも難しいわけです。

そこで私は一般的には厳しいが、具体的な事情を詳しくお聞きしないと何とも言えないという感じでウヤムヤにしたのですが、そのお客様はその後、どうされたのか気になるところです。

ところで広い幹線沿いの土地の場合、容積率が高いため高層のマンションが建てられます。したがって、建てる場合にはどうしても高層のプランになるケースが多いと思いますが、高層マンションの場合には坪当たり建築費がかなり高くなってしまいます。

一方、高層だからといって高い家賃をとれるかといったら難しいのが現実です。特に地方の場合にはそもそも家賃が安いわけですから、なおさら経営的に難しくなります。

私はこういったアパマン経営のシミュレーションが得意なのですが、今までの経験から判断すると6%台というのは余りにも悪すぎます。

いろいろな経費を差し引いた残りであれば6%台であっても仕方がないのかも知れませんが、表面利回りが6%台では全く余裕がないと言わざるを得ません。

そこで、どうしても高層のマンションを建てたいのであれば、できるだけ借金を減らす工夫をする必要があります。

一般的に考えられるのは等価交換方式です。この方式は要するに地主の方は土地を提供し、共同事業者であるデベロッパーは新築した建物を提供し、相互の不動産の時価で交換するというものです。

この方法であれば借金はゼロですから、利回りが悪くてもやっていけるわけです。ただし、当然ながら全部を自分1人でやるケースと比較しますと建物の持分は少なくなりますが、安定経営ができますので、私はお奨めします。

私の住んでいるマンションは、この等価交換方式で建てたものですが、日常生活において全く問題ありません。ちなみに私は賃貸のほうに住んでいますが、分譲の人達とも子供を通して仲良くお付き合いさせていただいております。

また、当該土地だけでなく他にも土地を所有されているのであれば、他の土地を売却して、その資金で建てるというやり方も良いと思います。

地主さんの中には家賃収入を最大にするプランを第一の目的にされる方がいらっしゃいます。建設会社とか設計事務所サイドは仕事が増えて良いのでしょうが、アパマン経営において大切なのは経営の安定性です。

また、経営において大切な指標は家賃収入という売上高ではなく、最終的に残る手取り収入をより安定的に得ることなのです。一般企業だって、最近は利益を重視するようになっています。以前のように売上高を最大にすることを究極の目的にするところはほとんどありません。

このようなことから、皆様方の中に上述したような幹線沿いに土地を所有されている方がいらっしゃるのであれば、是非これらの基本的なルールを守っていただきたいと思います。

なお、以上はあくまで地方の土地の場合です。都心の一等地の場合は全額を借金しても特に問題はないでしょう。要するに事前にいろいろシミュレーションして納得の上、実行していただきたいということです。