お金のかかる節税、かからない節税
今回は「お金のかかる節税、かからない節税」というタイトルでお話したいと思います。節税対策というと実に様々なものがありますが、今回お話したいのは所得税の節税についてです。
実は最近、当事務所のお客様から、「最近、資金繰りがかなり厳しくなったのですが、他に何か節税できる方法はありませんか?」と質問されたのです。
このお客様は私の提案により不動産所有会社を設立したり、奥様を青色専従者にしたりと考えられる様々な節税対策を既に実行されております。それにもかかわらず、もっと節税したいと言われるのです。
節税のアドバイスをすることは我々の仕事ですから、できるだけ積極的にご提案したいとは思いますが、節税を考えるに当たって是非シッカリ理解していただきたいことがあります。
それは、節税にはお金がかかる方法と、かからない方法があり、両者を明確に区別しておく必要があるということです。
例えば、お金のかからない方法には次のようなものがあります。
<お金のかからない節税対策の一例>
1.青色申告にして青色申告特別控除を適用する。
2.専従者給与を支払う。
内容についてはご存知だと思いますので省略しますが、「2.専従者給与を支払う。」という対策は形式上はお金が動きますが、第三者に支払うわけではないので、この範疇に入れております。
一方、お金のかかる方法には次のようなものがあります。
<お金のかかかる節税対策の一例>
1.小規模企業共済制度に加入する。
2.国民年金基金に加入する。
これらについてもほとんどの方はご存知だと思いますが、詳しくない方のために若干補足しておきます。
まず「1.小規模企業共済制度に加入する。」という対策ですが、これは要するに自営業者に対する国の退職金制度ということができます。
この制度に加入しますと満期のときに退職金が支払われるわけですが、掛け金は課税所得から控除できますので所得税の節税になります。つまり所得税の節税を図りながら退職金の準備ができるという制度です。
掛け金は月額1,000円から7万円まで任意に選択できます。より多く加入しますと当然ながら、それだけ課税所得が減るというわけです。
このお客様の場合、奥さんとお子さん(就職せず、身内の管理会社の役員になっている)がそれぞれ最高限度額である月額7万円を掛けておりますので、年間の支払額は84万円×2人=168万円となります。ご主人は現在サラリーマンなので加入できません。
次は「2.国民年金基金に加入する。」という対策ですが、これは通常の国民年金とは別枠で加入するものです。この掛け金も社会保険料控除として課税所得から控除されます。
なお、加入限度額は月額68,000円ですから、年額では816,000円となります(加入資格は20歳以上59歳以下)。
ところで、このお客様の場合、奥さんとお子さんがそれぞれ目いっぱい加入しておりますので、年間の掛け金は2人合わせて1,632,000円です(ご主人は年齢の関係から加入できません)。
このように節税対策にはお金がかかる方法と、かからない方法があるわけですが、お金がかかる対策の場合には生活資金に余裕があるのか否かを十分検討してから実行する必要があるということです。
ここで、ご紹介した「小規模企業共済制度に加入する。」方法とか、「国民年金基金に加入する。」方法はいずれも退職金とか年金として将来もらえるものです。
つまり、現時点での生活費を抑えて、将来もらえるお金を増やそうとするものです。聞こえは良いのですが、これが意外と大変なのです。
例えば、所得税等の適用税率が20%の場合、100を支出して(掛け金を支払って)初めて20の支出を抑えられる(節税になる)のです。
つまり現時点で考えると、差額の80は持ち出しになってしまうということです。節税して資金繰りを楽にしようとした結果が、逆に資金繰りを厳しくすることになるということなのです。
いくら税金を払うのがイヤだとしても、生活できなくなったのでは本末転倒ですし、キューキューでも人生楽しくありません。
このように節税には落とし穴があるということをシッカリとご認識いただき、税金もホドホドに払われることをお奨めいたします。