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2008年10月26日

還付消費税の会計処理はこうする

今回は還付消費税の会計処理についてご説明します。
実は先日、あるサラリーマンの方から次のようなメールをいただいたのです(原文どおり)。

「はじめまして。
今年からサラリーマン大家デビューしました○○と申します。

鹿谷先生の著書『家主さん、地主さん、もっと勉強して下さい!』を読んで税務のご相談をさせていただきたいと思い、連絡させていただきました。

<私の現在の状況>
今年の3月に△△に新築の一棟マンション(20室、×××万円/年)を個人名義で購入しました。
課税事業者、青色申告を申請済みですが、申告はまだです。

また、消費税申告については、申告期間を3ヵ月に短縮しました関係で、これまでに3月分と6月分の2回を自分で申告しています(還付も受けています)。

そして、今、◇◇に2棟目の新築マンション(15室、×××万円/年)を購入することがほぼ決まりました(2009年3月完成予定)。
消費税還付を受けるため、今度は法人(合同会社?)を設立して、その管理会社名義で買う予定です。

つきましては、新規法人設立、消費税還付、法人の確定申告につき、是非お手伝いいただければと考えています。

できましたら、一度お伺いさせていただき、貴社のサービス内容のご説明とお見積もりをいただけますと幸いです。
宜しくお願いいたします。」

このメールをいただいて数日後にお会いしたのですが、ご自分で消費税の還付手続きをしているほどですから、かなりの勉強家です。

いずれにしても実際にお会いして、いろいろお話をさせていただいたのですが、最後のほうで次のような質問をされるのです。

「還付請求で貰った消費税はどのように会計処理するのですか?」

私は次のようにお答えしました。
「消費税の会計処理には税込み経理方式と税抜き経理方式の2つの方式があります。もし還付請求で貰った消費税を税込み経理方式で処理しますと、もらった消費税に対しても所得税がかかってしまいます。」

このようにお話したところ、そのお客様は困った顔をして次のように言われるのです。

「私もよく分からなかったので、何人かに聞いたのですが、皆さん、どちらでも良いのではないですか、と言っていたのですが・・・。」

そこで私は「確定申告はこれからですから、特に問題ないのでは?」と言いますと、彼は「何かの書類に税込み経理方式を選んで書いた気がするのですが・・・。」と言って、持って来ていた書類を探したところ、次のような書類が見付かりました。

その書類は税務署から送られてきた「消費税還付についてのお尋ね」というものです。それには税込み経理方式か税抜き経理方式かを選択する欄があり、確かに税込み経理方式のほうに○が付いていました。

しかしながら、これは一応その予定である旨の届け出ですから、実際の会計処理において税抜き経理をしておけば多分認められると思う、ということを話しますと何となく安心されたようです。

ここで税込み経理方式と税抜き経理方式のそれぞれの具体的仕訳方法を書いておきますと、次のようになります。

<税込み経理方式>
(借方)預金×××/(貸方)雑収入×××

<税抜き経理方式>
(借方)仮受け消費税等×××/(貸方)仮払い消費税等×××
(借方)未収消費税等 ×××/

(借方)預金×××/(貸方)未収消費税等×××

消費税の経理処理は慣れないと難しいのですが、いずれにしても税込み経理方式で処理した場合、雑収入に対して所得税とか住民税がかかってしまいます。

そのお客様の場合には還付消費税(雑収入)が約500万円、実効税率が約30%ですから税金は150万円程になります。もし、このまま確定申告していたとしたら間違いなくかかっていたわけです。

ところで、この消費税の会計処理についてインターネットでいろいろ検索したところ、キチンと理解されていない方がかなりいらっしゃるようです。

還付請求することばかりに神経を取られ、チョットした会計処理のミスで無駄な税金を払ってしまうことのないよう、皆様方も十分ご注意下さい。

2008年10月13日

ゴルフ会員権の譲渡損失と損益通算について

今回は目先を変えて、ゴルフ会員権の譲渡損失と損益通算についてご説明いたします。

実は私の顧問先の社長から最近ゴルフ会員権の税務について質問されましたので、皆様方にも参考になるのではないかと考えたからです。

数年前に、不動産の譲渡損失は他の所得と損益通算できないというビックリするような税制改正があったのはご存知でしょうか?

そのとき、ゴルフ会員権の譲渡損失についてはどうなんだということになったわけですが、これについては特に問題ないということになっています。

つまり、ゴルフ会員権の譲渡損失については、現在でも給与所得とか事業所得、不動産所得といった他の所得と損益通算できます。

それはゴルフ会員権というのは金銭債権以外の債権であり、損益通算が認められていない動産とか不動産には該当しないからという理由です。

以上はゴルフ会員権の譲渡損失と損益通算に関する一般的説明ですから、ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、今回ご説明したかったのは次のような事例についてです。

つまり単にゴルフ会員権の相場が安くなって譲渡損が発生したのではなく、ゴルフ場が倒産した結果、預託金が大幅にカットされた場合の譲渡損についても損益通算の対象となるや否やというものです。

ゴルフ場が倒産した場合、そのまま閉鎖することもありますが、通常は預託金を大幅にカットした上で新会社に営業譲渡されます。

その場合、会員は今まで通りプレーできるケースが多いのですが、このような場合でも損益通算できるのかどうかということです。

これについては結論を先に言えば次のようになります。

A.預託金が100%カットされた場合・・・損益通算の対象とはならない。

B.預託金のカット率が100%未満(ex.95%)の場合・・・損益通算の対象となる。

わずか1%でも預託金の返還請求権があれば対象となるが、100%カットされた場合には一切損益通算の対象から外れることになるということです。

その理由はゴルフ会員権の性格にあります。つまりゴルフ会員権というのは次の2つの権利が一体となっている必要があるのです。

①預託金返還請求権

②優先的施設利用権

ところが上記Aのように預託金が100%カットされますと、①の預託金返還請求権が無くなりますので本来のゴルフ会員権の譲渡とはならなくなってしまうからです。

このように預託金カットの割合が違うだけで損益通算ができたりできなかったりしますので、実際に売却するかどうかはともかく、ご自分の所有しているゴルフ会員権について一度確認しておかれたらいかがでしょうか?

なお、ゴルフ会員権に関する譲渡損失の損益通算については突如としてできなくなるかも知れませんので、税制改正についてはよく注意しておいて下さい。