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2006年08月18日

事業収支計画書、役に立つの?

 建設会社とかハウスメーカーにアパートの建築プランを依頼しますと、建物の図面と一緒に事業収支計画書をくれます。これは要するに当該プランに基づいてアパートを建てた場合、将来の収支はこうなりますよ、といった非常に長期の経営計画書です。

 一般的に長期経営計画というのは5年程度を指すのですが、アパート経営の場合は借入金の返済期間が長いので、それに合わせて経営計画書も30年とか40年といった長期のものを作成することになります。

 5年程度の経営計画書でも計画と実績は相当異なるのに、その何倍も長い期間の事業収支計算書は果たして役に立つのでしょうか? どなたも疑問に思われると思います。

 この点については私はないよりはマシだと考えています。高度成長時代は物価の上昇に合わせて家賃も上がっていました。そこで、計画書を作る場合も家賃収入を2年毎に5%とか10%アップを前提に計算しておりましたので、収支が気持ち良いほど良くなるのです。

 したがって、営業マンも自信満々で楽しそうに説明します。ところが好景気はそれほど長く続きません。せいぜい10年ほどが良いところです。10年程度しか続かないのに40年も続くかのごとく計算するのですから、実態とかけ離れた数値となってしまうわけです。これで痛い目に合った人も多いのではないでしょうか。ところが以上はあくまで高度成長の時代か、バブルの時代の話です。

 ここ数年、景気がかなり良くなったとはいえ、家賃の上昇がこれから何年も続くと考える人はほとんどいないと思います。したがって、事業収支計画書を作成する場合も家賃の上昇は見込まないのではないでしょうか? それでは家賃の上昇率を一定、つまり上昇率をゼロとして収支を計算すると最終の手取り収入はどうなると思われますか?

 「収入が一定であれば手取り収入も一定」になると思われますか? 残念ながら、そのようにはなりません。その理由はまず借入金の返済額にあります。固定金利であれば最後まで返済額は変わりませんが、長期の固定金利で計算すると変動金利に比べて収支が悪くなってしまうのです。

 そこでよくあるのが、金利の一番安い2~3年程度の固定金利で計算するのです(固定金利と言いながら、2~3年の固定金利というのは変動金利と同じです)。ところが、このような計算書であれば皆様方は当然ながら金利を上昇させた計算書をもう一度、作り直させるはずです。その結果、当初の計算書と比べて収支は悪くなっていくというわけです。

 また、修繕費等の各種経費についても、現状のままで計算すると、なんか心配ですよね。そこで、これらについても少しは上昇率を見込むのです。

 このようなことから、収入を一定とした事業収支計画書というのはあまり魅力的には映りません。そこで、できれば計画書は出したくないとういのが営業マンの偽らざる気持ちなのです。

 私が上段で事業収支計画書はないよりあったほうがマシだと書いたのは、事業収支計画書を出さない営業マンよりは出す営業マンのほうが信用できるということなのです。

 皆様方もアパート経営を真剣に検討されているのであれば、こういった計画書はできるだけもらっておくべきです。そして、よく理解するようにして下さい。もし、理解できないようであれば、できるように勉強すべきです。それでも理解できないのであればアパート経営は止めたほうがいいと思います。

 なお、事業収支計画書の具体的な見方、読み方については別の機会に触れさせていただきます。

 

2006年08月07日

中古アパートを土地と建物に分ける賢いやり方

最近、サラリーマンの方で将来の個人年金として、また副収入を目的として中古のアパートとかワンルームマンションを購入する人が増えております。
ひと頃のようにキャピタルゲインではなくインカムゲイン、つまり家賃収入を主目的に利回りの高い物件を選択するようになっておりますので、それ自体は非常に結構なことだろうと思います。
ところでサラリーマンの方の場合、勤務先の経理部の人が年末調整で1年間の税金を計算してくれるため、所得税の仕組みについてはあまり詳しくない方が多いようです。
でも、いったん不動産経営を始めますと、年に一回は確定申告しなければならなくなります。一度経験しますとそれほどでもないのですが、やはり初めての確定申告ではかなり緊張もするようです。

ところで今回のテーマはタイトルにありますように、中古アパートを土地と建物に分ける賢いやり方です。アパートとか賃貸マンションの場合は建物について減価償却する関係上、全体の物件価格を土地と建物に分ける必要があるのです。減価償却というのは取得価額を所定の耐用年数に応じて少しずつ経費に計上する手続きのことですが、この対象となる資産は建物のように減価(価値が下がるもの)していくものだけです。
土地というのは地盤沈下でもしない限り消滅することはありませんので原則として売却するまで一切経費にはなりません。
このようなことから物件価格を土地と建物に按分する必要があるのですが、皆様方はどのように分ければいいと思われますか?

税法では消費税の額から逆算して建物の価格を求め、全体の物件価格から建物の価格を差し引いた額を土地の価格にすればいいと紹介しているのですが、この方法は建物の価格が分かっていなければそもそも計算できないのです。
中古物件について土地と建物の内訳が分からないからどうやって算定するかを議論しているわけですから、消費税の額から逆算するというのは論理的に矛盾があるのです。

また消費税の額を基準に土地と建物に按分しようとすると、できるだけ建物の価格を安くしようと考えます。消費税というのは建物代金にしかかからないからです
マイホームであればこのような考えは正しいと思いますが、アパートのような事業用の場合は減価償却費をできるだけ多くするため建物の割合を高くしたほうが有利なのです。それではどのような基準で按分すればいいのでしょうか?
適当に分けますか? 例えば土地と建物を1対9というように・・・。残念ながらこれでは税務否認を受けてしまいます。税務上はやはり何らかの根拠が必要になるのです。

これについては一般的に固定資産税評価額で按分するのがいいようです。その理由は建物にかかる固定資産税をあまり下げたくない課税庁の思惑から、時価に比較して評価額が高止まりする傾向があるからです(ただし、すべてのケースで有利だとは言えませんので、様々なやり方で試して下さい)。

なお、売買契約書に消費税の額を記載しているケースがありますが、もし、その額が購入者にとって不利なものであれば削除してもらって下さい。売買契約書に消費税の額を記載しなければならない理由は何もないのです。税込価格○○○万円で十分なのです。