« 2008年05月 | メイン | 2008年07月 »

2008年06月24日

アパマン経営の投資判定基準を考える

皆様方はハウスメーカーとか建設会社が作成する事業収支計画書をご覧になったことがあるでしょうか? この帳票にはアパート等を建てた場合の毎年の事業収支がどうなるかが記載されています。

ところで皆様方は、この帳票のどこをご覧になりますか? おそらくほとんどの方は最終的に手元に残る手取り収入(資金収支とか手元残金ともいう)の欄だけを目を凝らしてご覧になっているのではないでしょうか?

要するにいくら儲かるんだというわけです。もちろん、いくら儲かるかということは大切なチェックポイントなのですが、その金額が果たして妥当なのか否かということになると自信を持って説明できる人はいないと思います。

例えば、手取り収入が当初10年間の平均で約300万円だったとしましょう。この300万円という数値が良いのか悪いのか分かりますか? おそらく分からないと思います。分かるわけがないのです。

そこで、実務上どうするかといえば、絶対額ではなく利回りで判断するのです。利回りといってもイロイロありますが、通常は表面利回りで判断します。例えば、10%ならばマアマアであるとか、7%はキビシイといった感じです。

ところが、この表面利回りだけで判断するのは危険です。というのは、この利回り計算では諸経費とか借入金の返済を無視しているので、最終的にいくら手元に残るのか分からないからです。

そこで私は借入金まで返済した後の最終的な手取り収入を投資額で按分した利回り(これを純利回りという)で判断するようにしています。

これについての詳細は現在、本を執筆中であるためそれに譲るとして、ここでは1つの事例を挙げてご説明しておきます。

例えば、先程の事例で工事費等の合計額が1億円かかったとしましょう。そうしますと投資額(工事費等の合計額)に対する純利回りは次のようになります。

投資額に対する純利回り
=300万円÷1億円
=3%

それでは、この3%という数値は良いのでしょうか、それとも良くないのでしょうか? 私の設定している基準では2%以上4%未満の場合、「可」となります(優、良、可、再検討、破綻の5段階)。

「可」の場合は、「良好とまでは言えないが、今の経済状況を考えれば仕方がないといったところでしょうか」に該当します。

投資額が1億円の場合、具体的に手取り収入で計算すると、2%の場合は200万円、4%の場合は400万円となります。

つまり1億円を投資して手取り収入が200万円から399万円以内であればOKだというわけです(400万円以上の場合は「良」に該当し、当然ながらもっと良い判定になります)。

もし、計画しているプランがこれより悪い場合には①プラン自体を変える、②借入金の返済期間を長くする、③一部自己資金を投入する、といった対策を実施する必要があるということです。

なお、この純利回りは家賃設定とか金利設定等によって変わります。したがって、これらの計算の前提条件は当然ながら厳しくチェックしなければなりません。


 


2008年06月10日

駐車場経営の損益分岐点

皆様方の中には現在、駐車場経営について検討している方がいらっしゃることと思います。そこで今回は駐車場経営に焦点を合せてみたいと思います。

まず最初に駐車場経営のメリット・デメリットについてまとめておきます。

<駐車場経営のメリット>

①少ない投資資金で気軽に事業を始められる。

②借地借家法の対象外であるため、他の事業への転用や売却がスムーズにできる。

③レンタカー会社とか時間貸し駐車場(コインパーキング)の事業会社に一括貸しできれば比較的収益性が高くなる。

<駐車場経営のデメリット>

①固定資産税の特例がない。したがって、農地を転用して駐車場にしたり、それまで住宅用地であった土地を駐車場にすると税額がかなりアップする。

②立地によっては借り手探しが困難となり、持ち出しになる可能性がある。

③相続時に更地評価(自用地評価)されるため、相続税の節税効果がない。

このように駐車場経営にはメリットもあればデメリットもあります。したがって自分の置かれた状況をよく分析してから取り掛かる必要があります。

ところで、駐車場というのはいったいどれほど儲かるのでしょうか? 1つの事例を挙げて計算してみましょう。

<計算事例>
・固定資産税評価額/台・・・・・・30万円/㎡×20㎡=600万円
・駐車料金/台・・・・・・・・・・・・・18,900円/月
・駐車場の整備費・・・・・・・・・・ゼロとする

このように駐車場1台当たりのスペースを20㎡として計算します。

<計算結果>
駐車場の整備費は無視しますので駐車場に係るコストは固定資産税・都市計画税だけとなります。したがって、駐車場1台当たりの必要経費は次のようになります。

駐車場の1台当たりの必要経費
=600万円×1.7%(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%)÷12月
=8,500円

したがって、駐車場1台当たりの利益は10,400円となります(収入金額18,900円-必要経費8,500円)。

ところで利益が10,400円ということは利益率は55%(10,400円÷18,900円)ですから、稼働率が45%以下であれば赤字となるわけです。例えば駐車台数が10台あり、その内4台しか稼動していなければ完全な赤字です。

以上はあくまで駐車場の整備費をゼロとして計算しております。ところが実際にはある程度の費用はかかるわけですから、実行に当たっては損益分岐点をジックリと計算してから行なうようにして下さい。

なお、駐車場にした場合には通常、固定資産税がアップしますが、どれほどの額になるかは自分では分かりません。市町村役場の担当者に教えてもらって下さい。