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2009年04月25日

賃貸マンションを贈与する場合の注意点

遺産分割として、あるいは各種の節税対策として賃貸マンションを贈与する場合がありますが、今回は、この贈与対策を実施する場合に注意しておくべき点について解説することとします。

例えば、時価3000万円、相続税評価額700万円の賃貸マンション一室を子供に贈与するケースで考えてみましょう。

こういった場合、既に賃貸している物件であれば入居者から敷金を預かっていると思いますが、不動産を贈与する場合には当然ながらこの敷金も一緒に贈与することになります。

それではここで問題を出すこととします。上記のケースで敷金の額を20万円とした場合、贈与税の課税対象額はいくらになるでしょうか? 700万円マイナス20万円で680万円が正しいでしょうか?

残念ながら、ブーです。ご承知がどうか分かりませんが、不動産と一緒に負債を贈与する場合には税務上、負担付き贈与に該当します。

そして負担付き贈与に該当する場合には相続税評価額ではなく時価で贈与したものとして贈与税を計算する必要があるのです。

このケースの場合、相続税評価額は700万円ですが、時価は3000万円ですから、この3000万円を元にして贈与税を計算しなければならないというわけです。つまり贈与税の課税対象額は3000万円マイナス20万円で2980万円となるわけです。

負担付き贈与というと通常は借金と一緒に贈与する場合をイメージしますが、敷金だってれっきとした債務です。

したがって、敷金と一緒に贈与した場合には負担付き贈与があったものとして高い贈与税がかかりますのでご注意下さい。

でも考えてみれば、敷金を預かるのは通常の商慣習です。最近こそ敷金・礼金タダ、というケースもありますが、それはむしろ例外です。

ほとんどのケースで家賃収入の1~3ヵ月ほどの敷金を預かっているわけですが、そうだとすると、賃貸マンションは実際上、贈与の対象から除外しなければならなくなってしまいます。

でもご安心下さい。これについては税務署も折れてくれました。敷金といったチッポケな額の負担についてもイチイチ負担付き贈与があったものとして一律課税するのも可愛そうだ。ただし条件がある。敷金に相当する額の現金を一緒に贈与しなさい、ということになったのです。

つまり上記のケースで言えば、敷金に相当する20万円を一緒に贈与すれば一般の贈与として取り扱います、というわけです。したがって、この場合の贈与税の課税対象額は700万円ということになります。

なお、実際に贈与する場合には贈与契約書を作成すると思いますが、敷金と現金に関しても条文に記載しておけば完璧です。

触れておかなくても実態さえキチンとなっておれば特に問題ないと思いますが、こういった完璧な契約書を作成し、申告書に添付しておけば税務調査もなくスムーズに事が運ぶというわけです。

いずれにしても税務というのは本当に怖いのです。チョットしたミスで何百万円、何千万円といった税金が余計に課税されることがありますので、十分ご注意下さい。


2009年04月11日

レバレッジ効果のワナ

今回はレバレッジ効果についてご説明いたします。いろいろな本を読んだり、話を聞いていると、この言葉が良い意味にしか捉えられていない気がするからです。

レバレッジ効果とは既にご承知だと思いますが、テコの原理のことです。要するにテコを利用すれば少しの力で重い物を持ち上げることができるという原理のことです。

このレバレッジ効果は様々な分野で使われていますが、ここではアパマン投資の場合でご説明いたします。

例えば、いま1,000万円の自己資金があるものとします。そして、この資金で利回りが10%のマンションを購入しますと、年間の収入は100万円になります。そして諸経費が20万円かかるとすると手取り収入は80万円になります。

一方、この自己資金1,000万円に借入金4,000万円を足して1,000万円のマンションを5室購入した場合はどうなるでしょうか?

利回りが同じだとすると年間の収入は5,000万円×10%で500万円となります。そして、今度は借金しているわけですから、その返済をしていかなければなりません。

仮に、この額を年間250万円とし、諸経費を100万円としますと、手取り収入は150万円(500万円-250万円-100万円)となるわけです。

つまり、自己資金だけで購入した場合よりも手取り収入が70万円(150万円-80万円)多く獲得できるわけです。この仕組みのことをレバレッジ効果(テコの原理)と言っています。

このようにレバレッジ効果というのはテコの原理を利用して、より大きな収入を得ようとする方法のことですが、投資額を増やせば増やすほど本当に手取り収入は増えるのでしょうか?

もし、その考えが正しいのであれば、そして銀行がジャブジャブ融資してくれるのであれば投資額を増やせば増やすほど儲かるということになります。

果たしてそんなことがありうるのでしょうか? 以下、この点について検証してみたいと思います。
先程の例では表面利回りを10%で計算しましたが、ここでは12%と8%の2つのケースで計算してみます。

そして、それぞれのケースについて物件価格を1,000万円、5,000万円、1億円の3つに分けて比較することにします。計算に当たっての他の前提条件は次の通りです。

1.自己資金…… 1,000万円
2.借入金……… 20年、4%、元利均等返済方式
3.入居率……… 90%
4.賃料水準…… 毎年0.5%下落
5.諸経費……… 対家賃収入20%、毎年0.5%上昇
6.税金………… 所得税等は考慮しない

<利回り12%のケース>
まず物件価格1,000万円のケースでは当初5年間の手取り収入の月額平均は7.1万円です。そして5,000万円のケースでは11.2万円、1億円のケースでは16.4万円となっています。

これは明らかに投資規模を大きくしたほうが有利になるということを表しています。つまり、表面利回りが12%の場合はテコの原理がプラスに働くということです。

 <利回り8%のケース>
それでは表面利回りが8%のケースはどうでしょうか?  物件価格1,000万円のケースでは当初5年間の手取り収入の月額平均は4.7万円です。

ところが5,000万円のケースではマイナス0.6万円、1億円のケースでは何とマイナス7.2万円です。

手取り収入累計額で見ても5,000万円、1億円とも当初20年間ではマイナスです(1,000万円の場合1,072万円、5,000万円の場合-458万円、1億円の場合-2,370万円)。

30年間でやっと規模の有利性が表れておりますが、驚くほどの差額ではありません(1,000万円の場合1,546万円、5,000万円の場合1,913万円、1億円の場合2,372万円)。
   
いかがですか? 8%の利回りでは相当厳しい状況になるということがお分かりいただけたと思います。

このように原理・原則というものは常に正しいとは限らないのです。一定の条件に当てはまる場合には正しくて、それ以外の場合には正しくないということは肝に銘じておく必要があります。

なお、以上のシミュレーションはテコの原理というものがプラスにもマイナスにも働くということを証明するためだけに行ったものです。したがって、それほど厳密に計算したわけではありません。

実際に購入するかどうかを検討するに当たっては、前回のブログでも書きましたように様々な角度から慎重に調査・分析する必要があるということだけは口を酸っぱくして言っておきます。