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2008年03月26日

相続税の計算方式が変わりそうです

皆様方は現在の相続税の計算方法をご存知でしょうか? 

例えば、被相続人(亡くなった方)が所有していた財産の額がトータルで2億円(相続税評価額)、相続人が配偶者と子供2人の場合、相続税はどのように計算するかご存知ですか?

おさらいのために簡単にご説明しておきますと次のようになります。

<ステップ1>
まず最初に基礎控除額を計算します。この基礎控除額は5000万円に相続人1人当たり1000万円をプラスしますので、このケースの場合は8000万円ということになります。

<ステップ2>
次に財産の合計から基礎控除額を差し引いて課税価格を求めます。このケースでは2億円から8000万円を控除しますので1億2000万円になります。

<ステップ3>
そして、次に課税価格を法定相続割合で按分し、按分した額に税率を適用して各相続人毎の税額を求めます。

配偶者・・・・1億2000万円×1/2×30%-700万円=1100万円
子供1人・・・1億2000万円×1/2×1/2×15%-50万円=400万円

<ステップ4>
次に各人の相続税を合計して相続税の総額を計算します。

相続税の総額・・・1100万円+400万円×2人=1900万円

<ステップ5>
この相続税の総額を各人が実際に相続した割合で按分し、それから所定の税額控除を適用して各人の納付税額を計算します。

例えば、このケースで法定相続割合により遺産分割した場合には配偶者の相続税は950万円(1900万円×1/2)となりますが、配偶者の場合には取得した財産の額が1億6000万円か全体の1/2以下であれば配偶者の税額軽減という特例により相続税はかかりません。

一方、子供の場合にはそういった特例はありませんので、2人合せて950万円を納付することになります。

このように自己が取得した財産だけでなく、他の相続人が取得した全ての財産を把握しないと正確な税額を計算できません。

したがって、相続人の1人の申告漏れ等により他の共同相続人にも追徴税額が発生する可能性があるのです。

また、以前にもお話したとおり、同じ額を相続しても全体の財産が多い場合にはより多くの相続税を負担しなければならないという根源的な欠点があります。

例えば、全体の財産が5000万円の場合、その中から1000万円を相続した場合には相続税はゼロですが(基礎控除額以下のため)、10億円の場合にはかなりの相続税がかかってしまうのです。

このようなことから現在、相続税の計算方式を見直しているのですが、新しい方式は「遺産取得課税方式」と呼ばれており、要するに自分が取得した財産だけで相続税を計算できるというものです。

この方式では全体の財産がいくらあろうが、また相続人が何人いようが自分が実際に取得した財産の額だけで税額が決まりますので上記でご説明したような欠陥は無くなります。

このように相続税については大幅に改正されようとしておりますが、その具体的な内容・対応策等については次回にご説明したいと思います。


2008年03月11日

子供がいない場合はすぐに遺言書を書こう!

前回は準確定申告についてご説明しましたが、この方にはお子さんがいらっしゃいません。したがって、相続人は奥さんと亡くなった方のご兄弟ということになります。

ところで、亡くなった方のご兄弟というのは一般的に高齢であり、また家族をお持ちです。そして、私自身の兄弟もそうなのですが、離れて生活しているケースが多いのです。

したがって、相続があった場合、遺産を分割するための手続きは非常に大変なのです。このお客様の場合も前回お話したとおり、女性4姉妹で、かつ日本全国ばらばらにお住まいです。

最終的にどうなるかは今のところハッキリしませんが、何となく大変だなあ、と感じております(現在は他のお客様の確定申告で忙しいので、相続手続きはお休みです)。

ところで相続人になる人の順番と法定相続割合はご存知ですか? ご存じない方のために書いておきますと次のようになります。

①子供がいる場合・・・配偶者(1/2)と子供(1/2)

※( )内の数値は法定相続割合です。なお、配偶者がいない場合は全額が子供(②のケースでは両親、③のケースでは兄弟姉妹)に帰属します。

また、子供等が複数の場合には人数で均等按分します。

②子供がいなくて両親がいる場合・・・配偶者(2/3)と両親(1/3)

③子供も両親もいなくて兄弟姉妹がいる場合・・・配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4)

もし、兄弟姉妹もいない場合には配偶者に全額帰属します。そして、配偶者もいなくて天涯孤独の場合には全財産が国のものになります(遺言もない場合)。

ところで遺留分についてはご存知だと思いますが(なぜか、ほとんどの人が知っている。私の子供まで学校で習ったようだ・・・)、遺留分というのは法定相続分の半分です。

したがって、例えば、配偶者と子供2人のケースでは配偶者は1/4、子供はそれぞれ1/8となります。それでは配偶者と兄弟姉妹4人が相続人の場合、兄弟姉妹の遺留分はいくらになるか分かりますか?

兄弟姉妹の法定相続分は1/16(1/4/4人)だから、その半分の1/32でしょうか? 残念ながら兄弟姉妹には遺留分はありません。つまりゼロなのです。

そして遺留分がゼロということは遺言書で全額を配偶者に遺贈する旨を書けば全て配偶者のものにできるのです。逆に言えば兄弟姉妹は遺言書に書かれておれば残念ながら一銭ももらえないということです。

ところで昨日、お子様のいない別のお客様を訪問したとき、遺言書はどうされているか確認したところ、それぞれが全額を相手方に遺贈する旨、遺言書に書いているということでした。

したがって、どちらかに相続が発生したら全ての財産が相手側に帰属することになりますので、ややこしいことにはならないのです。

(※ このお客様は夫婦とも亡くなった親の養子になっていたのですが、親が亡くなったときにほぼ半分ずつを相続されていました。かなりの資産家です。)

このようなことから皆様方も、もしお子さんがいなくて、かつ仲が良いのであれば是非、「"可愛い"妻(または夫)に全財産を遺贈する」旨、遺言書に書いておいて下さい。