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2007年12月23日

アパマンを建設する場合と購入する場合の違い

最近、サラリーマンの方でアパートとか賃貸マンションを購入される人が増えておりますが、これらを新しく建設する場合と購入する場合でどのような違いがあるのでしょうか?

「3年で10億円のアパートを買った」とか「家賃収入はサラリーマンの年収の10倍」といったタイトルの本が所狭しと本屋に並んでおりますが、読んでみると最終的に手元に残る手取り収入を公開している人は1人もいません。

年収については内訳を書いているケースがあるのですが、残念ながら借金の返済額とか諸経費の額、まして所得税等までを控除した最終の手取り収入について公開している本は皆無なのです。

なぜ書いていないかと言えば、もしこれらの額を公開すると本は全く売れなくなりますし、カリスマとしての存在が全否定されてしまうからです。

実情を知った途端、ほとんどの人は白けてしまい、その人の元を去っていくのが目に見えているのです。

なぜ、このようなことが明確に分かるかといえば、私は資産税に特化した会計事務所として数多くのアパマン経営者の確定申告のお手伝いをさせていただいているからです。

もちろん、アパマン経営者の全てが儲かっていないわけではありません。本当に儲かっているのは都市農家の方のように元々大地主である人が土地の有効活用としてアパートとか賃貸マンションを経営しているケースです。毎年の手取り収入がウン千万円という方が当社のお客様の中だけでゴロゴロいます。

一方でサラリーマンの方とか勤務医の方で賃貸物件を購入している人の手取り収入は残念ながらそれほど多くありません。もちろん、本業の給与収入はそれなりにあるのですが、不動産収入に係る手取り収入は多くないのです。

この理由はお分かりでしょうか? 何となく理解されていると思いますが、要するに借金の返済とか修繕費、各種税金の支払等でほとんど消えていくからです。

この中で特に手取り収入に影響を与えるのが土地取得に伴うものです。ご承知のように土地というのは建物のような減価償却が全く認められておりません。減価償却というのは最終的に取り壊すまでの期間(法定耐用年数)で徐々に経費にしていく会計上の手続きのことです。

ところが土地というのは税務上も会計上も、価値が下がるとは考えておりませんので、減価償却費という経費は一切計上できないのです。まして不動産の場合はほとんどが借入金で購入しますので、その返済が非常に大変になるというわけです。

つまり経費に算入できない物件を借金で購入するということはキャッシュフローの観点からは最悪だということは明確に認識しておかなければなりません。

このように書くとお先真っ暗なのでフォローしておきますが、借金して購入したとしても完済してしまえば手取り収入は格段に良くなります。借金の返済期間中は非常に大変なのですが、それを耐えて返済が完了した暁には万々歳ということになるわけです。

さきほど「3年で10億円のアパートを買った」等の事例について現状は非常に厳しいのではないかと書いたのですが、それ自体は恐らく間違っていないと思います。ただし、彼等が本業の収入をもやりくりして一生懸命借金を返済していけば、いずれはきっとすばらしい「経済的自由」を獲得できるものと思います。

要するに不動産というものはシッカリした考えのもとに、本業からの収入も考慮した上で適切な物件を計画的に購入していくのであればサラリーマンを引退した後も安定した収入獲得の手段になりうるということです。

皆様方も批評家ではなく、当事者の1人として小さい物件からでも是非トライしてみて下さい。


2007年12月11日

同じ額の財産を相続しても全体の財産が多いと税額は増えます

日本の相続税は被相続人の所有する全ての財産を法定相続割合(配偶者1/2、残りの1/2を子供の人数で按分)で相続したものとして相続税の総額を計算し、それを各人が実際に相続した割合に応じて按分します。

したがって、財産の額と相続人の数が同じであれば、どのような割合で相続しようと原則として相続税の総額は同じになります。

例えば、相続財産の額が3億円で相続人が配偶者、子供2人のケースでは相続税の総額は4600万円となります。

配偶者の場合、法定相続割合である1/2か1億6000万円のいずれか少ない額を相続した場合、配偶者の税額軽減という特例により配偶者には相続税がかかりませんが、これはあくまで相続税の総額から控除するものです。相続税の総額自体は変わりません。

このように相続財産の額と相続人の数で相続税の総額は決まってくるのですが、同じ額の財産を相続した場合、相続税の額は違ってくるのでしょうか?

例えば、Aさんが相続した財産(現預金)の額を3000万円としましょう。この場合、3000万円に対する相続税の額は常に同じだと思いますか? それとも違うでしょうか?

結論から言いますと、全く違うのです。例えば、相続人がAさん以外に母親と、もう1人の子供がいるケースで見てみましょう。

①相続財産1億円の場合

           相続した財産の額  相続税
母親        5000万円       0万円
Aさん        3000万円      60万円
他の子供1人   2000万円      40万円

②相続財産3億円の場合

          相続した財産の額    相続税
母親        1億5000万円      0万円
Aさん          3000万円     460万円
他の子供1人  1億2000万円    1840万円  

このように相続財産の額が1億円の場合にはAさんが支払う相続税は60万円だけですが、3億円の場合は460万円も支払わなければならないのです。

同じ3000万円の財産を相続したにもかかわらず、これだけの開きが生ずるのです。より多くの財産を相続したのなら税額が増えても何となく納得できるのですが、同じ額を相続したのに一方では60万円、もう一方では460万円かかるのです。

ちなみに100億円の場合で計算してみますと実に1445万円です。ほぼ半分の相続税です。一方、基礎控除額である8000万円(5000万円+1000万円×3人)以下であれば相続税はゼロになります。

なぜ、このような違いが生じるかと言いますと、相続税は累進課税だからです。累進課税ということは同じ3000万円でも適用される税率が違うということですから、当然ながらこのような結果になってしまうわけです。

納得されたでしょうか? いずれにしても日本の場合にはこのように全体の財産の額に応じて適用される税率は異なりますので、遺産分割を考える場合にも各人毎の税額をキチンと計算した上で行なうべきだということです。そうしないと間違いなくモメルことになるでしょう。

なお、相続した財産を譲渡する場合には譲渡所得税がかかる場合がありますので、この点についてもご注意下さい。