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2006年12月22日

個人保証と機関保証、いずれが良いか?

住宅金融公庫からアパート等の建設資金の融資を受ける場合、連帯保証人か機関保証のいずれかをつける必要があります。

このうち連帯保証人というのは個人の方で、一定以上の資産を所有している人でなければなることができません。

一方、機関保証というのは財団法人首都圏不燃建築公社等に保証をしてもらう制度です。当然ながら保証料がかかりますが、この場合の保証料は保証期間(借入期間)により異なっています。例えば保証期間が25年の場合は借入金の2%なので、借入金を1億円とすると200万円となります。

ところで今から10年ほど前に公庫から融資を受けて賃貸マンションを建てたお客様がいらっしゃるのですが、そのときは連帯保証人を立てました。借入金が8億円程度であり保証料が1600万円にもなったため個人保証をお願いしたのです。

お願いした方は奥さんのお父さんとお姉さんのご主人です(原則として2人必要です)。ところで、このうち奥さんのお父さんが昨年亡くなってしまったのです。

また、今年になってお姉さんが躁うつ病になり、突然10年ほど前の遺産分割が不公平だと騒ぎ出したのです。要するに遺留分を寄越せというわけです。遺留分というのは原則として相続開始から1年で時効になりますので、今となっては何の権利もないのですが、躁うつ病ですからどうしようもありません。

このように関係が悪化した今となっては当然ながら保証人も変更しなければなりません。そこで現在、首都圏不燃建築公社に機関保証していただくべく各種手続きをしているところです。

このように個人保証というのは実際問題として非常に難しいと思います。その大きな理由は保証期間の長さにあります。この事例では35年ですが、35年の間には実に様々なことが発生するのです。

例えば保証している人が亡くなった場合には、その相続人は連帯保証人としての義務を負わなければなりません(相続人が2人以上の場合は法定相続割合で負担することになります)。

このように、機関保証の場合には保証料はかかりますが、個人保証の場合の様々な問題点を考慮しますとやはり機関保証に軍配が上がりそうです。

2006年12月12日

相続時精算課税制度を使って生前に一括贈与する

「相続時精算課税制度」というのをご存知でしょうか? 数年前にできた制度ですが、要するに親から相続人である子供に財産を贈与した場合、2500万円までは贈与税がかからないというものです。通常の贈与の場合の控除枠は110万円ですから、かなりの差があります。

ところで、この制度の場合、贈与した財産は相続財産に取り込まれます。つまり、贈与した財産も相続財産として課税の対象になってしまうのです。

それでは何の意味もないではないかと言われそうですが、取り込まれる財産の評価額は贈与したときの評価額そのものなのです。つまり贈与した財産がその後値上がりを続けたとしても相続財産に取り込まれるのはあくまで値上がりする前の金額ですから節税になる可能性があるのです(ただし、反対に値下がりした場合でも当初の贈与金額になりますので贈与する財産には注意する必要があります)。

また、例えば地主のかたでアパート経営を考えられている場合、その人ご自身が建てた場合にはアパートからの果実である家賃収入は全て本人に帰属しますが、土地を贈与して、その子供が建てた場合には子供の収入になります。つまり本人が建てた場合には家賃収入までも相続税の課税対象にされてしまうのですが、子供が建てた場合には当然ながら課税対象にならないばかりか相続税の納税資金を貯めることにもなるのです。

このように、この相続時精算課税制度というのは使い方によってはかなりメリットがありますが、一般の贈与とは異なり、いくつかの条件がありますので、ご注意下さい。

まず、贈与者は65歳以上の父または母でなければなりません。一般の贈与の場合には贈与者はどなたでもOKなのですが、相続時精算課税制度の場合には年齢制限があるのです。

また、財産を貰う受贈者についても年齢制限があります。つまり、20歳以上の子供でなければならないのです(養子でもOKですが、その場合でも20歳以上でなければなりません)。

なお、基礎控除である2500万円以上の額を贈与した場合には、その額を超える額に対して20%の贈与税がかかりますが、この贈与税は相続税の額から控除できますし、もし、その額が相続税の額を超えている場合には還付を受けられます。

このように、いくつかの条件はありますが、もしこれらの条件をクリアーするのであれば一度は検討してみて下さい。贈与というのは贈与する人の目が黒いうちに実行できるのです。この点、遺言書の場合には自分が死んだ後のことですから保証の限りではありません。子供たちが財産分けでもめないようにするためにもできるだけ生前に贈与すべきだと思います。