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2007年09月21日

贈与金額はどのくらいが妥当か

ある程度の資産家になりますと、毎年のように相続人である子供等に財産を贈与していますが、どの程度の額を贈与すべきか迷うところです。

ご承知のように1年間で110万円を超えますと、その超えた額に対して所定の贈与税がかかります。したがって、この額より少ない額を贈与する人が多いのですが、この程度の額では資産家の場合、それほど財産を減らすことができません。

そこで、ある程度の税金は覚悟の上で贈与すべきなのですが、いったいどれほどの額を贈与したら良いのでしょうか?

これについては私のところでは基本的に相続税の半分程度の贈与税率になるように贈与金額を決めております。例えば、相続税の税率が20%であれば贈与税率が10%程度になるように贈与金額を決めているということです。

贈与税率が10%というと、次のように贈与金額では500万円弱です。

<500万円を贈与した場合の贈与税> 

  贈与税額・・・(500万円-110万円)×20%-25万円= 53万円

  贈与税率・・・53万円÷500万円=10.6%

このように500万円を贈与しますと10%を超えますので、それより若干少ない額ということになります。

それでは500万円を子供2人に10年間、毎年贈与したとすれば全部でいくらの額になるでしょうか? 次の計算式を見て下さい。なんと1億円です。

  500万円×2人×10年=1億円

毎年500万円を2人の子供に贈与すれば10年間で1億円も財産を子供に移すことができるのです。この場合の贈与税の合計は1060万円(53万円×2人×10年)です。

これを聞いて一般の人は、「1億円もの財産を子供に贈与するなんてありえない、そんなお金があったら自分で使う」とおっしゃるのではないでしょうか?

しごくもっともです。私もそう思います。でも世の中にはビックリするほどの資産家がいます。最近相続税の申告をした顧問先では配偶者の税額軽減をフルに適用したにもかかわらず相続税が9億円を超えました。

それも私が20年以上かけてありとあらゆる対策を講じた後の額です。このような方にとっては贈与によって、少しでも財産を減らしておきたいという気持ちになるのもうなづけます。

いずれにしても毎年少しずつでも贈与すればかなりの対策になるというのは事実です。まだやったことがないという方で、それなりの財産があるという方は是非一度ご検討下さい。

なお、贈与するに当たっての注意点を簡単にまとめておきますので、ご参考にして下さい。

<贈与に当たっての注意点>

1.贈与契約書を作成しておく。金額が多い場合には確定日付をとっておく。

2.贈与税がかかる場合には当然ながら贈与税の申告をする(贈与税というのはもらった人が申告、納税することになっている)。基礎控除額以内でも申告したほうが良いという人もいるが、それはどうかと思われる。税務署にとっては余計な仕事であるし、保管料もそれだけかさむことになる。

3.金融資産の場合は相手の口座に振り込んでおく。その前提としてもらう人の口座を作っておく必要がある(その場合は当然ながら印鑑は新調する)。

4.不動産の場合は移転登記をしておく。

5.金額は毎年少しずつ変えておく(最初からトータルの額を贈与する意思があったと認定されないため)。

いずれにしても財産が多い人の税務調査はすさまじいものです(国税局の担当者が大勢で来て、査察とほとんど変わらない調査をします)。各種の書類はほぼ完璧に作成し、矛盾なくやっておかないと否認される可能性が高いので十分ご注意下さい。

2007年09月11日

中古アパートを転売した場合の譲渡所得税はこうなる

最近、私のお客様から質問がありましたので、今回はそれについてご紹介しておきます。

<お客様の概要>
ご主人はある大学病院の勤務医です(45歳位)が、今までに幾つかのアパートとかワンルームマンションをご主人名義で購入されています。いずれも中古の物件を専業主婦である奥さんが競売で取得されたものです(競売で購入するなんて根性ありますね)。

<お客様からの質問>
そのお客様から最近、次のような質問を受けました(事前に不動産会社からもらった物件情報とか事業計画書をメールでいただいています)。

「今回の物件は任意売却物件ですが、この物件を5年後に10%増しで売却した場合、譲渡所得税はどうなりますか?」

10%増しで売れるという前提に立っていること自体、たいへん積極的な方だと思いますが、不動産会社(投資コンサルティング会社)からもらった資料によりますと、売却予想価格から取得価額(現在の物件価格)を差し引いて、その差額に20%を掛けた額を譲渡所得税としているのです。

この計算は一見正しいように見えますが、税務上は全くの間違いです。税務というのは簡単そうでいて実は非常に面倒な計算をしなければならないのです。

譲渡所得税を計算するには、まず課税の基となる金額、すなわち譲渡所得金額を求める必要があります。計算式は次の通りです。

譲渡所得金額=譲渡収入金額-取得費-譲渡経費

このうち、取得費というのは取得価額(購入したそのままの金額)のことではありません。土地というのは償却ということがありませんので取得価額がそのまま取得費となるのですが、建物の場合は減価償却後の金額(帳簿価額)が取得費になります。

売却するまでの期間については毎年確定申告で減価償却するわけですから、売却するときの取得費(一種の経費)は減価償却後の金額になるのです。そうしないと経費を二重に計上することになってしまうからです。

いずれにしても取得価額をまず土地と建物に按分し、建物については売却するまでの期間について減価償却する必要があるということです。

次に譲渡経費ですが、要するに譲渡するための経費のことです。代表的なものとして不動産会社に支払う仲介料がありますが、だいたい譲渡収入金額の3%です。

このようにして求めた譲渡所得金額に対して、税率20%(所得税15%、住民税5%)を掛けますと譲渡所得税(含む住民税)が算定されるというわけです(所有期間が譲渡した年の1月1日において5年以内であれば、短期所有ということで所得税30%、住民税9%になりますので、ご注意下さい)。

このように一口に譲渡所得税を計算するといっても意外と面倒な手続きが必要になるのです(当社ではコンピュータで自動計算しておりますので、それほど手間はかかりませんが・・・)。

ところで、このお客様はどうして転売した場合の譲渡所得税を計算してほしいと言って来たのでしょうか? その理由は投資する前から出口戦略を考えているからです。

不動産経営の場合はいつ、何が起きるか分かりません。したがって皆様方も投資を実行する前に様々な状況を想定してシミュレーションしておいて下さい。