フリーレント契約と賃貸料の税務上の取扱い
今回はフリーレント契約に係る賃貸料の税務上の取扱いについて解説しておきたいと思います。
ご承知のように家賃等の収益計上時期は"契約または慣習により支払いを受けるべき日の属する年度"の収益に計上することになっています。
ところが、この規定は定期的に支払いを受ける賃料等を想定しているものであり、フリーレントについて規定しているものではありません。
それではフリーレントの場合、どのように処理することになるのかということですが、これについては「週刊税務通信」(会計専門家向けの雑誌)によれば実務上、次のように取り扱うことになっているようです。
なお一口にフリーレント契約といっても中途解約が可能なものと中途解約が不可能なものに分かれていますので、税務上の取扱いも当然ながらそれぞれで異なります。以下、これらについて具体例を設けてご説明することとします。
<具体例>
・賃貸契約期間・・・・・3年
・賃貸料・・・・・・・・30万円/月
・フリーレント期間・・・3ヵ月
<中途解約できるフリーレント契約の場合>
(1年目)
実際の賃料収入 30万円×9=270万円
税務上の収益計上額 30万円×9=270万円
(借方) 現金 270万円 / (貸方) 賃料収入 270万円
※実際の収入金額をそのまま税務上の収益計上額として処理すれば良いということです。2年目、3年目も同様です。
(2年目)
実際の賃料収入 30万円×12=360万円
税務上の収益計上額 30万円×12=360万円
(借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 360万円
(3年目)
実際の賃料収入 30万円×12=360万円
税務上の収益計上額 30万円×12=360万円
(借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 360万円
<中途解約できないフリーレント契約の場合>
(1年目)
実際の賃料収入 30万円×9=270万円
税務上の収益計上額
賃貸期間の合計賃料990万円(30万円×33ヵ月)×12/36=330万円
(借方) 現金 270万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
未収入金 60万円 /
※中途解約できないということは賃貸借期間である3年間の賃料収入が確定しているということですから、3年間の合計賃料を3年で均等按分した額を毎年の収入として計上すべしと考えるのです。
この事例では当初3ヵ月分についてはフリーレントということでタダにするわけですから、賃貸期間の合計賃料は990万円(30万円×33ヵ月)になります。
そして、この額を均等按分しますので1年目の収益計上額は330万円(990万円×12/36)になるというわけです。
なお実際の入金額は270万円ですから差額の60万円は未収入金として処理することになります。
(2年目)
実際の賃料収入 30万円×12=360万円
税務上の収益計上額 330万円
(借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
/ (貸方) 未収入金 30万円
※このように1年目とは逆に、2年目の入金額は360万円ですから差額30万円を未収入金から取り崩すことになります。3年目も同じ。
(3年目)
実際の賃料収入 30万円×12=360万円
税務上の収益計上額 330万円
(借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
/ (貸方) 未収入金 30万円
いかがですか。一口にフリーレントといっても中途解約ができる場合とできない場合では税務上の会計処理はかなり違ってきますので十分ご注意下さい。