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2007年07月20日

中古アパートの耐用年数は何年?

最近、中古のアパートとか賃貸マンションを購入する人が増えておりますが、これらの耐用年数が何年になるかを正確に言える人は少ないようです。

一番多いのが、新築時の耐用年数から筑後経過年数を差し引いて求めるというやり方です。例えば、アパートの新築時の法定耐用年数が22年の場合(木造のケース)、築5年であれば22年-5年で17年とするやり方です。

常識的に考えると一見良さそうですが、残念ながら税務の取り扱いは次のようになっております。

<原則・・・見積法>
 業務の用に供した時以後の使用可能期間の年数を見積もる。

<例外・・・簡便法>
 法定耐用年数の全部を経過したもの・・・・・・法定耐用年数×0.2
 
 法定耐用年数の一部を経過したもの・・・・・・法定耐用年数-経過年数×0.8

   ※いずれの場合も計算結果に1年未満の端数があればその端数は切捨て、2年未満となるときは2年とする。

このように税務上の原則的取り扱いは各自で耐用年数を見積るということになっているのです。そして、もし見積ることが困難な場合は一種の簡便法として上記のような方法でもOKだということなのです。

つまり、最初に挙げた法定耐用年数から経過年数を単純にマイナスするやり方は認められていないのです。

それでは実際上、どのように決定すれば良いのでしょうか? これについてはやはり個別に判断するしかないと思います。つまり、通常は簡便法で計算し、その計算結果が短くなりすぎるケースでは各自で見積もるということです。

例えば、計算した結果、耐用年数が3年になったとします。皆様方はこの3年を採用されますか? 

耐用年数が短いということは毎年の減価償却費が多くなるので税金対策上は有利ではないかという考えの方もいらっしゃることでしょう。ところがこの考え方には大きな欠陥が潜んでいます。

耐用年数というのは一度採用すると変更は出来ません。したがって、慎重に決定しなければならないのですが、もしこのアパートを10年返済の借入金で購入した場合、借入金は10年で返済するにもかかわらず減価償却だけは3年で終了してしまうのです。

ご承知のように減価償却費というのは経費になるだけでお金が出て行くわけではありません。一方、借入金の元金返済額は経費にならないにもかかわらずお金だけ出て行くのです。

つまり、耐用年数を3年にした場合、減価償却費を計上できる間は全く問題ないのですが、それを過ぎた4年目からはキャッシュフローが厳しくなるのです。どういうことかと言いますと、4年目からは減価償却費を計上できないためそれだけ不動産所得が多くなり、その結果、所得税が増えます。

また、借入金の利息についても元金の返済が進むにつれて徐々に減っていきますので同様に所得税が増える要因になるのです(元利均等返済方式の場合は逆に元金返済額は増えていきます)。

このように減価償却の期間が借入金の返済期間に比較して短い場合にはいろいろと問題を抱えることになるのです。

このようなことから、先程のケースでは建物の耐用年数を3年ではなく10年程度に敢えて長くするのです。税務上、簡便法による耐用年数よりも長い場合には全く問題ありません。

2007年07月11日

元利均等返済と元金均等返済のいずれが良いか?

借入金の返済方式には元利均等返済方式と元金均等返済方式の2つの方式があります。

まず元利均等返済方式ですが、これは元金返済額と利息支払額の合計額を毎回等しくする返済方式です。つまり「元利合計均等」返済方式ということになります。

支払利息というのはその時点の借入金残高に利率を掛けて求めますので、元金の返済が進むにつれて減っていきます。そして、元利均等返済方式というのは上述したとおり元金返済額と支払利息の合計額を等しくする方式ですから、元金返済額は最初少なくて徐々に増えていかざるを得ない運命にあるのです。

つまり、元利均等返済方式の場合は当初はなかなか借入金の残高が減らないのですが、終盤にかけてはドンドン勢いよく減っていきます。

一方、元金均等返済方式というのは毎回の元金返済額を等しくする方式です。そして支払利息は元利均等返済方式の場合と同じく、その時点の借入金残高に利率を掛けて求めますので、最初多くて徐々に減っていきます。その結果、各回の元利返済額は最初多くて徐々に少なくなります。

このように、これら2つの方式には大きな違いがあるのですが、アパートとかマンション経営者の場合、いずれの方式が良いのでしょうか?

以下、質問形式でこの問題を考えてみることにしましょう。それでは第1問です。「元利均等返済方式の場合は各回の返済額が等しいので毎期の収支はほぼ安定する」というのは正しいでしょうか?

これは残念ながら正しくありません。その理由は経費に算入できる支払利息の額が徐々に減っていくからです。支払利息の額が減るということは逆に所得が増加することを意味するわけですが、所得が増えれば当然ながら所得税とか住民税が増えます。

したがって、たとえ家賃収入が一定だったとしても手取り収入は減っていくのです。高度成長時代ならともかく、一般的に建物が古くなるにつれて家賃は下がっていくわけですから、税額が増える以上に手取り収入は減っていくのです。

それではいつまで減っていくのでしょうか? その答えは借入金の返済が終了するまでということになります。

借入金の返済が終了しますと経費に算入できる支払利息がゼロとなり所得税等が増えるのですが、そもそも返済自体が無くなるのですから、手取り収入は格段にアップしていくのです。

このように「元利均等返済方式の場合は各回の返済額が等しいので毎期の収支は安定する」というのは正しくないのです。

それでは次の質問です。「元金均等返済方式の場合は返済額が徐々に減っていくので逆に手取り収入は増えていく」というのは正しいでしょうか?

残念ながらこれも正しくありません。この場合は「借入金の返済が終了するまでは手取り収入はそれほど変わらない」というのが正しいのです。その理由についてはご自分で考えてみて下さい。

最後にもう1つ質問します。「元利均等返済方式も元金均等返済方式も支払利息を含めたトータルの返済額は変わらない」というのは正しいでしょうか?

これは明らかに間違いです。元金均等返済方式のほうが元金の返済が早いので利息支払額は少なくなります。元金返済額は当然ながらいずれであっても同額ですから、トータルの返済額は元金均等返済方式のほうが少なくなるのです。

このように元金均等返済方式のほうが収入が安定し、なおかつトータルの手取り収入も多くなるのですが、一方で元利均等返済方式に比べて当初の手取り収入が少なくなります。皆様方はいずれを選択しますか? 一度じっくり考えてみて下さい。