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2007年10月23日

養子縁組について

相続税対策として養子縁組をするケースがありますが、今回はこの養子縁組について私の考えをまとめておくこととします。  

まず最初に理解しておいていただきたいのは、養子縁組は何人でもできるということです。養子縁組というのは民法上の契約のことであり、養子のほうが尊属であるとか年長者でなければどなたとでもできるわけです。

よく養子縁組というのは1人としかできないと思い込んでいる人がいますが、そんなことは全くありません。1人としかできないということではなく、税法上、実子がいる場合には1人までしか相続人としてカウントされないということなのです。

ところで養子縁組にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 次をご覧下さい。

<養子縁組のメリット>

①基礎控除額の拡大・・・・・・基礎控除額が1人につき1000万円増加します。ただし、上述しましたように実子がいる場合には1人までしか認められませんのでご注意下さい(実子がいない場合には2人までOKです)。下記の②、③も同様です。

②累進課税の緩和・・・・・・・・相続税は遺産の総額をいったん法定相続割合により按分し、その按分された額に税率を掛けて計算しますので、相続人が増えれば、それだけ低い税率が適用されます。

③生命保険金等の非課税枠の拡大・・・・・・生命保険金とか死亡退職金については相続人1人につき500万円までの額が非課税になっていますので、相続人が増えれば、それだけ非課税枠が増えます。

④登録免許税の軽減・・・・・相続により不動産を取得しますと相続登記をすることになりますが、相続人以外の人が登記した場合には登録免許税の税率が20/1000なのに対し、相続人の場合は4/1000となります。実に4分の1です。

⑤不動産取得税が非課税・・・・・相続人以外の人が不動産を取得しますと不動産取得税が課税されますが、相続人の場合は非課税です。つまり税金は一切かからないということです。

このように養子縁組については様々なメリットがあるのですが、いくつか注意すべき点もあります。

まず孫と養子縁組をする場合、孫には本来の相続税の20%が余計にかかります。例えば、子供が相続した場合の相続税が1000万円の場合、同じ額を養子縁組をした孫が相続した場合には1200万円かかるということです。

ただし、孫の場合には一代相続を飛ばすことができること、また上述したとおり、2割加算する前の税額自体が下がりますので通常の場合は節税になるものと思います。

次に子供の配偶者と養子縁組をするケースです。こういったケースの場合、仲たがいをして子供が離婚することになったとしたら、少々厄介です。

婚姻という契約は破棄されるにもかかわらず養子縁組という契約だけが残ってしまうからです。このようなケースでは最終的に養子縁組の解約という事態になると思いますが、その場合には相手側にそれなりの財産は渡す必要があるでしょう。

したがって、子供の配偶者と養子縁組をする場合には、このような事態が生ずる可能性があるということはよく肝に銘じておくべきでしょう。

しかしながら、何らかの目的とか動機があって養子縁組をした結果、上手く行かなかったとしてもそれはそれで運命だと諦めざるを得ないと思われます。

何事も最悪の事態ばかり想定して実行しないのでは人生それ自体が面白くないのではないかというのが私の基本的考えです。


2007年10月11日

配偶者に対する居住用不動産の贈与のメリット、適用要件について

結婚して20年以上経った配偶者にマイホームを贈与した場合、2000万円以内であれば贈与税はかかりません。これを一般に居住用不動産の配偶者控除と言っておりますが、今回はこの制度についてご説明したします。

1.制度の目的

まず、この制度ができた目的ですが、表面上の理由としては長年連れ添ってきた配偶者の労苦に税制上も少しは面倒を見てあげましょうというものです。

一方、実質上の理由としては配偶者といえども、それほど遠くない時期に相続が発生するハズであるから、その時に相続税を課税すれば良いと考えているようです。

ただし、相続税というのは20人に1人位しかかかっておりませんので、ほとんどの場合、相続税の洗礼を受けずに財産を贈与できます。やりドクと言えるでしょう(ただし、不動産取得税とか登録免許税はかかります)。

また、何らかの理由で不動産を売却することになった場合、居住用不動産の3000万円控除を夫婦それぞれが受けられます。

つまり含み益のある不動産を売却した場合には譲渡益が発生しますが、居住用不動産であれば3000万円まで譲渡益から控除できるという特例があります。これについて夫婦それぞれが持分を所有しておれば、別々に適用を受けられるということです。

2.特例の適用要件

このようにメリットの多い特例ですが、適用するためには以下のように一定の要件がありますので、ご注意下さい。

①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与したものであること・・・・・・同じ配偶者の間では一生に一度しか適用を受けられませんが、再婚して20年以上経てば再度受けられます。

②配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産か、居住用不動産を取得するための金銭であること

③贈与を受けた年の翌年3月31日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

④一定の書類を添付して贈与税の申告をすること

なお、上記以外に、居住用不動産の取得について、借地権の場合はどうなるのか、家屋と敷地は一括して贈与する必要があるのか、などについて細かく規定されておりますので、実行に当たっては税務署等によくご相談下さい。