« 2008年04月 | メイン | 2008年06月 »

2008年05月26日

売却を前提とした土地活用のプランニング

10日ほど前に、ある銀行の担当者より、相続対策としての土地活用を考えているお客様をご紹介いただきました。

現在、顧問契約をしている会計事務所もあるのですが、所長である税理士が大変忙しいらしくて、なかなか相談に乗ってくれないというのです。

私としては顧問税理士のいるお客様はいろいろやりずらいのであまり乗り気ではなかったのですが、無碍にお断りするのも気が引けるので不動産コンサルタントという立場でお会いすることにしました。

これはあくまで現在の会計事務所の人に対してということです。お客様にはちろん公認会計士の名刺をお渡ししております。同業者がいると、イロイロ苦労するのです。

ところで、このお客様にはご自宅のある所と若干離れている所にそれぞれ土地を所有されているのですが、今回の土地活用は自宅から離れている土地を前提としたものです(ご自宅のある土地は2年後に考えるということです)。

お会いしてお話を伺ったところ、離れている土地は仕方ないとしても自宅のある土地は絶対手放したくないとおっしゃるのです。

そうであるとすれば、まず自宅部分にどれほどの建物が建つのかを調査しなければなりません。その理由は全体の建築費が分からなければ建てた後の相続税がいくらになるのか計算できないからです。

ところが現在計画している建物は1カ月以内に建築確認を申請しないと来年の3月までに間に合わないというのです(ご承知の通り、2月とか3月に部屋を探す人が多いため、それまでに完成させるというのが一般的です)。

つまり時間があまり無いので早く決めてしまいたいということなのですが、1つのプランだけを検討しているわけではありません。いくつもあって、どのプランが良いのか迷っているということです(1年ほど前から検討しているらしく様々な会社の事業プランが机の上に山積みになっていました)。

ところで実行をためらっている最大の理由は最寄り駅からの距離です。歩いて15~16分かかるのです。私も休みの日に散歩がてら付近をブラブラしたのですが、賃貸マンションとかアパートがひしめき合っており、通常のアパートとかマンションではかなり経営が厳しいものになると予想されました。

駐車場も1つの選択肢ですが、付近にたくさんの駐車場があり、満車にするのは難しいということです(この土地には元々アパートが建っていたのですが、古くなったため建て替えるという計画です)。

このように、最寄り駅からは遠く、駐車場は難しいし、時間も余りない、そして相続で自宅の土地はどうしても残しておきたいという様々な難題を前に、お客様を説得できる適当な解決策がどなたも思い浮かばないようなのです。

そこで私が呼ばれたということなのでしょうが、意外と簡単に解決策が見付かりました。その方法はデザイナーズマンションとかコンセプトマンションといった範疇になるのですが、ネットサーフィンしていると、これらの条件にぴったりの物件があったのです。

デザイナーズマンション等はある程度コストをかけて近隣相場よりも若干高く貸すというものですが、この土地の場合はどちらかと言えば、あまり人気の無い場所なので家賃は高くしたくないのです。

そのため建築費をできるだけ抑えたいのですが、一方で、入居者に困ることはないという物件にする必要があります(銀座に安っぽいアパートは建てるべきではないし、田舎に豪華なマンションを建てるべきではないというのが私の基本的考え方です)。

この方法は残念ながら現状では公開できませんが、競合物件がほとんど無く、それでいて様々なブログを見ると需要がかなりありそうなのです。

したがって、もし相続で売却しなければならなくなったとしても、すぐに買い手が現れるだろうと考えられます(収益性が高いので収益還元法で計算するとそれなりの価格になるということです)。

そこで早速、お客様にご報告したのですが、これならということでかなり自信を持たれたようです。これから具体的なプランを練っていくのですが、このような種類の物件の場合には完成時期は全く関係ありません。したがって、急いで建築する必要もないのです。

ところで、タイトルの「売却を前提とした土地活用のプランニング」ということですが、これは、いつ相続が発生しても建物ごと売却できるプランはどういったものかということです。

私は過去において、一部の部屋だけを売却できるような賃貸マンションを企画したり、納税用の土地を最初から残しておくプランを企画したことがあるのですが、今回のプランは1棟の建物を、いつでも売却できるように商品化したものということができます。

したがって、ご自宅の土地の計画とは関わりなく、また完成の時期もそれほど気にすることなく実行できるということになります。

なお、以上は自宅から離れた土地の活用プランですが、ご自宅の土地の青写真も実は出来上がったのです(ご自宅の土地といってもかなり広いのですが・・・)。それについては、ご紹介いただいた銀行の人に先程ご説明したのですが、全面的に賛成していただきました。

このように私は公認会計士ではあるのですが、今までもラフプランは全て私が考えてきたのです。会計帳簿をにらめっこしているよりも土地活用のプランを考えるほうが余程楽しいからです。

皆様方の中にもご自分の土地の活用を考えられている方がいらっしゃると思いますが、もし計画しているプランが楽しくないのであれば止めたほうが良いと思います。おそらくもっと良い方法が見付かると思うからです。

2008年05月14日

中古マンション、結局、買いませんでした

前回、ご紹介しました賃貸マンションですが、予定通り現物を見に行ってきました。

見てビックリしたのは建物があまりに汚いということです。築22年程度ですから、それほどでもないと思っていたのですが、腰を抜かすほどの汚れ具合なのです。

階段等の鉄部部分はひどく錆びておりますし、外廊下の壁とか床、玄関のドアなども古びた公団住宅のようです。

また、ベランダ側の窓は全て緑色の網が被せられているのですが、まるで監獄のようです。網を被せている理由を尋ねますと、鳩がベランダに入ってきて糞をするからということです。

この物件は住宅だけで40戸あるのですが(3~10階が住宅、1、2階が事務所)、全部の窓に網が被せられていますのでかなり壮観です。

事前に写真を見たときは光線の関係から若干緑がかっているのかと思っていたのですが、正直参りました。これでは普通どなたも入居しないと思うのですが、40%程も埋っているのですから、逆にビックリです。

次は部屋の中ですが、設備は22年前とほとんど変わっておりません。つまり建てた時のままなのでどうしても古臭い感じを受けます。また3DKの部屋は全部が和室で洋室はゼロ。

このように物件自体は非常にボロいのですが、立地だけは合格です。前面にある歩道も広く、樫の並木が非常にすばらしいのです。

ところで、この物件を案内してくれている不動産会社の人に、なぜこんなになるまでリフォームしなかったのか聞いたところ、オーナーが全然お金を出してくれないと言うのです。

リフォームを全くしない状態で22年経ったら当然ながら建物は古くなります。まして、ほとんどの壁が吹き付けでタイルを貼っていないので。余計古さを感じてしまいます。

SRCですから建物自体は60年も70年も持つのでしょうが、リフォームをしなければ30年も持たないという典型事例です。

ところで、このままでは当然ながら入居率を上げることができませんので、リフォーム代がいくら位になるのか見積もりをお願いしたところ、驚くなかれトータルで1億円を超えました。

この見積もりには大胆なリノベーションをするとか和室を洋室にするといったことは全く前提にしておりません。単に設備を全部取り替えるとか、外壁の塗装、あるいはエントランスを若干見栄え良くするといった程度です。

それでもこれだけかかるのです。この物件は現在2億1000万円で売りに出されているのですが、リフォーム代が1億円もかかったのではペイしません。

また、今回、大規模修繕すればそれで終わりというわけではありません。14,15年すればまた同じような額(1億円前後)のお金が必要になるのです。

当然ながら、その時は現在よりも更に家賃が下がっていることでしょう。当初は物件価格を下げればどうにかなると思っていたのですが、これではリスクが高すぎます。そこで今回は購入を見合わせることにしたということです(つまり、お客様には紹介しないということです)。

なお、転売しないで最後まで所有していた場合には建物の取壊し費用が5000万円程度かかります(建物の床面積が約1000坪ありますので単価を5万円とすれば5000万円になります)。

最後に、今回の件で感じたことをまとめておきます。特に地方で土地活用を考えている方には参考になると思われます。

①地方物件の場合には家賃が安いわりにはリフォーム費用は都会とそれほど変わらない。したがって、SRCのような構造の建物ではなく、比較的短期で投資額を回収できるプランにしたほうが良いのではないか。もし、RCとかSRCにするのであれば外壁はタイルにして修繕費がそれほどかからないようにすべきである。

②手取り収入を全て使ってしまうのではなく、リフォーム費用として毎月一定額を積み立てておくべきである。リフォーム費用を将来の家賃収入から賄うべきではない。

③リフォームはその都度マメに実施すべきである。そうすれば当然ながら空室率は抑えられるし、結果としてリフォーム代も少なくて済む。

④地方経済は残念ながら、かなり疲弊している。将来とも回復があまり見込まれないとすれば業務系の物件はあまりお奨めできない。貸事務所等は景気の影響をモロに受けるからである。