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2010年01月25日

具体的にどの程度、節税になるのか?

前回のブログではキャッシュフローコンサルティングについて簡単に触れましたが、今回はどの程度、節税になるのかについて具体例を挙げてご説明させていただきます。

あまり複雑な事例では分かりづらいと思いますので、現在作成しているパンフレットに記載している2つの事例でご説明いたします。いずれも当事務所において実際に実行したお客様の実例を若干アレンジしたものです。

(Aさんのケース)

・家族構成
Aさん・・・サラリーマン44歳、給与収入890万円、アパートの年収約1500万円
奥さん・・・パート43歳、給与収入210万円
子供・・・2人(中学生と小学生)

・所有財産
相続したアパート2棟(12戸+10戸)、借入金なし

・ご相談の内容
アパートの借金返済が終了し所得税がかなり増えてきた。どうにかならないか。

・対策の内容
アパート2棟のうち1棟を奥さんに売却する。

・節税効果
以下、いずれも所得税と住民税の合計額です(10万円未満四捨五入)。

「初年度」
Aさん・・・現状550万円、対策後280万円(270万円の減税)
奥さん・・・現状20万円、対策後150万円(130万円の増税)
合計・・・現状570万円、対策後430万円(140万円の減税)

「15年間」
Aさん・・・現状7890万円、対策後4090万円(3800万円の減税)
奥さん・・・現状220万円、対策後2100万円(1880万円の増税)
合計・・・現状8110万円、対策後6190万円(1920万円の減税)

(Bさんのケース)

・家族構成
Bさん・・・サラリーマン52歳、給与収入420万円、貸ビルの年収約2800万円
奥さん・・・青色専従者50歳、専従者給与98万円
子供・・・2人(高校生と中学生)

・所有財産
貸ビル1棟、借入金残高5200万円

・ご相談の内容
所得税が徐々に増えてきた。どうにかならないか。

・対策の内容
貸ビルを新設法人に売却する(建物のみ)。なお、新設法人の社長には奥さんが就任する。

・節税効果
以下、いずれも所得税と住民税の合計額です(10万円未満四捨五入)。

「初年度」
Bさん・・・現状370万円、対策後50万円(320万円の減税)
奥さん・・・現状0万円、対策後100万円(100万円の増税)
法人・・・現状0万円、対策後40万円(40万円の増税)
合計・・・現状370万円、対策後190万円(180万円の減税)

「15年間」
Bさん・・・現状5710万円、対策後680万円(5030万円の減税)
奥さん・・・現状0万円、対策後1490万円(1490万円の増税)
法人・・・現状0万円、対策後770万円(770万円の増税)

合計・・・現状5710万円、対策後2940万円(2770万円の減税)

いかがですか? 不動産を移転しただけで、これだけ税金の額が違ってくるのです。もちろん、ある程度のコスト(不動産取得税、登録免許税、会計事務所に対する報酬等)はかかりますが、長期的にはかなりの節税になります。

税金が高い高いと愚痴を言っていても問題は一向に解決しません。所得税とか住民税というのは毎年かかるわけですから、スタートは早いほどメリット大です。したがって、できるだけ早く資産税に詳しい会計事務所に相談に行かれることをお奨めいたします。

なお、Bさんのケースでは売買物件が貸ビルでしたので建物に係る消費税がそれなりに還付されましたし、交渉の結果、金利もかなり安くなりました(会計事務所が別の銀行を紹介すると言うと、今までの銀行が金利を見直してくれるケースが多い。なお事業用物件の場合、通常はかなり金利が高い)。メデタシ、メデタシ。


2010年01月11日

借入金の繰上げ返済に関する考え方

みなさん明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

昨年は民主党が政権を取り、始めての税制改正大綱が出されましたが、時間もあまり無かったせいか、これといった大きな改正は見られませんでした。本格的な改正は来年を待つしかないようです。

ところで、私の事務所では家主さん向けにキャッシュフロー(手取り収入)を改善するためのコンサルティングをしております。

このようなコンサルティングについては本格的にやっている会計事務所がほとんど無いためか、かなり忙しい毎日を送っております。

特に最近は景気の悪化により家賃収入が下落しているためか、少しでも税金を減らしたいと考えている人が多いようです。

そこで今回は、このコンサルティングを通して比較的よく質問をされる「借入金の繰上げ返済」についての私の考えを述べたいと思います。

ご承知のように繰上げ返済をしますと、それ以降の借入金返済が無くなるか、あるいは少なくなりますので、不動産所得が増えます。

不動産所得が増えますと当然ながら、それ以上の割合で所得税等が増えていきます。そうすると当然ながら最終的に手元に残る手取り収入はそれほど増えないというわけです。ケースによっては減少する場合もあります。

そこで繰上げ返済すべきか否か迷うことになるわけですが、どのような考え方があるのか整理するために、ここでは2人の方にご登場いただき議論してもらうこととします。


借金が無ければ全額を自己資金で建てたのと同じであり、経営が非常に安定する。したがって、もし繰上げ返済できるお金があるのであれば返済に充当すべきである。


借金があるから支払利息という経費を計上できるのであって、もし借金を返済すると累進課税でかなりの税金を持っていかれる。私であれば、その資金は別の不動産投資に充当する。


税金がかかるといっても所得税と住民税を合わせても50%以上にはならない。したがって余裕資金があるのであれば借金の返済に充当したほうが良い。私なら、そうする。

いかがですか? いずれの考えに賛同されますか? なかなか難しい問題ですが、これについては次のような観点から現状を冷静に分析すべきだと思います。

①繰上げ返済することにより具体的にどれほど税金が増えることになるのか?

繰上げ返済すれば当然ながら不動産所得は増えますが、不動産所得が元々それほど多くないとか、繰上げ返済する金額がそれほど多くない場合には税金が増えるといっても大したことがない場合があります。

また、たとえ繰上げ返済することにより不動産所得が増えたとしても様々な方法で節税できるケースもあります。

②繰上げ返済することにより生活に余裕が無くならないのか?

繰上げ返済することにより、余裕資金がほとんど無くなるのであれば問題です。いくら繰上げ返済したほうが良いといっても、モノには限度があるということです。

このように一方が常に正しくて一方が常に正しくないということはありません。ケースによって繰上げ返済したほうが良い場合もありますし、しないほうが良い場合もあるのです。

したがって、ご自分のケースで、いずれが良いか、よく考えてから実行していただきたいと思います。