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建て替えにあたっての税務上の注意点

前回は消費税の還付に関する実例を2つご紹介したのですが、今回はアパートを建て替えた場合の税務上の注意点について実例を元にご紹介することとします。

アパートとか貸家を建て替える場合には次のような様々な経費がかかりますし、建て替え中は収入がゼロになりますので、通常は大幅な赤字になります。

◎建物の取壊し費用・・・建物の構造とか所在地あるいは解体業者により異なりますが(近所にウルサイ人がいると解体作業を手作業で行なう必要がありますので、かなりの高額になる場合があります)、だいたい坪当たり3~5万円ほどになるのではないでしょうか?

したがって、例えば床面積が100坪の木造アパートで坪当たりの解体費が3万円であれば300万円になります。

◎建物等の除去損失・・・未償却残高のある建物等を取り壊した場合には、その時点で未償却残高を一時に経費に算入します。

例えば、建物とか附属設備の未償却残高が200万円であれば200万円を全てその年度の経費に算入することになります。つまり、それまで行なっていた減価償却はその時点で終了するということです。

ただし、白色申告の場合には不動産所得がゼロになるまでしか経費にできません。つまり不動産所得の赤字と他の所得を損益通算することはできないということです。

◎立退料・・・アパートとか貸家を建て替える場合には現在の入居者に立ち退いてもらう必要があります。

この場合はオーナーの都合ということなので立退料を支払うのが一般的です。それでは、この立退料はいくらほどになるのでしょうか? 

これについては千差万別なので一概にいくらとは言えないのですが、家賃の5~6ヵ月分位が一般的なのではないでしょうか? 引越し代とか住み替えのための諸費用の合計額がだいたいこのようになるということです。つまり実費精算です。

ただし、中にはゴネル方がいらっしゃるので、建て替え予定の場合には若干余計に資金を見積もっておく必要があります。

今年確定申告したお客様のケースでは最高額が140万円余りでした。家賃は43,500円ですから32ヵ月以上です。因みに最低額は3万円で平均は約23万円です(25人)。

また、立ち退きに伴い立退き業者に手数料を支払うのが一般的です(このお客様の場合は手数料が100万円チョットかかりました)。建設会社がやる場合にはサービスが多いのではないでしょうか?

なお預っている敷金についてはその時点で返還する必要がありますが、これについては当然ながら経費に算入することはできません。

ところで建て替えの場合には建物を取り壊すわけですから、入居者に原状回復義務はありません。当たり前です。

このように建物を建て替える場合には多額の経費がかかりますし、上述しましたとおり建て替え中は収入がありませんので、通常はかなりの不動産所得の赤字が発生します。

この赤字については他に所得があるとか建て替え物件以外に沢山の物件を所有している場合には損益通算することにより節税できるのですが、そうでない場合には通常は翌期以降に繰り越して、その時点の黒字の所得と損益通算することになります。

この制度を一般的に純損失の繰越控除と言いますが、赤字の所得を前年に繰り戻して、既に納めた税金を返してもらうこともできます。これを純損失の繰り戻し還付と言います。

ところで、この繰り戻し還付は原則として前年分しかできませんが、前年の所得よりも赤字の所得が多い場合にはどうすれば良いのでしょうか?

これについては控除しきれない額を翌期以降3年間まで繰越控除できることになっております。つまり両方の制度を併用できるということです。

上述しましたお客様のケースでは赤字の額が1500万円近くもありましたので、両方の制度を併用することとしました。

いずれにしても、これらの制度は青色申告者だけに認められている特典です。したがって皆様方の中に数年の内に建て替えを検討されている方がいらっしゃるのであればできるだけ早急に青色申告に変更されることをお奨めいたします。善は急げです。

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