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2010年02月26日

法人であれば4月以降でも消費税の還付を受けられます!

2009年12月28日のブログ、「建物に係る消費税の還付はどうなる?」でご紹介したとおり、アパート・マンションに係る消費税の還付は今年の3月31日をもって実質的にできなくなります。

ただし、法人を新たに設立することによって改正前の税制を適用することが可能です。今回は、この点について解説しておきます(個人の場合もできるケースがありますが、極めて限られていますので省略いたします)。

2009年12月28日のブログに書いたとおり、新しい税制は

「平成22 年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者の同日以後開始する課税期間から適用」することになっています。

したがって今年の3月31日までに法人を設立し、同日までに課税事業者選択届出書を提出しておけば、建物の取得が4月以降であっても改正前の税制が適用されるというわけです。

具体例を挙げてご説明いたしましょう。

<事例>
現在サラリーマンをしているAさん、相続で取得した遊休地にアパートを建築すべく、ハウスメーカーの担当者と打ち合わせ中であるが、その建築プランの概要はだいたい次のとおりである。

・Aさんの年収・・・1000万円(奥さんは専業主婦)
・間取り・戸数・・・2LDK×12戸
・建築費・・・・・・1億500万円(うち消費税500万円)
・完成予定・・・・・22年9月末

このままでは当然ながら消費税の還付を受けることはできない。またAさん自身、かなりの給与収入を貰っているので、できれば所得分散を図りたいと考えている。

そこで専業主婦をしている奥さんを代表取締役とする同族法人を設立、法人が個人から土地を借りてアパートを建てるプランとする。なお奥さんには役員給与を支給することとする。

<スケジュール>
1.法人の設立登記・・・平成22年3月15日に登記申請する(決算月はアパートの完成予定である9月とする)。

2.開業届出書等の提出・・・平成22年3月25日に税務署、県税事務所、市町村役場に各種の届出書等を提出する。この中には当然ながら消費税課税事業者選択届出書を含む。

3.自動販売機の設置・・・建築予定地に自動販売機を設置すべく業者と打ち合わせた結果、平成22年5月初旬に設置することとする。

4.アパートの完成・・・予定どおり、平成22年9月下旬にアパートが完成、引渡しを受ける。

5.法人税、消費税の確定申告・・・9月決算なので11月が法人税および消費税の確定申告期限であるが、消費税は売上よりも仕入(※)のほうが圧倒的に多いので還付請求になる。

(※)消費税の世界では不動産の取得(建設、購入)も仕入という。

なお、このケースで売上げに係る消費税をゼロとすると、建物に係る消費税が500万円であるから還付税額は500万円ということになる。

以上、極めて大雑把な説明ですが、大体のニュアンスは掴めたのではないでしょうか?

ところで、この事例は新規にアパートを建てるケースですが、当然ながらアパートを購入する場合とか、個人が所有するアパートを同族法人に売却する場合も対象となります。

したがって、いずれかに該当する方は時間も限られておりますので、できるだけ早急に会計事務所に相談するようにして下さい。

因みに私の事務所には大勢のお客様から問い合わせが来ております。ただ今、決算でそれなりに忙しいのですが、頑張って対応させていただいております。

2010年02月15日

法人設立に当たっての要検討項目

不動産管理会社とか不動産所有会社を設立する人が増えておりますが、法人を設立する当たってどのような点に注意したら良いのでしょうか?

個人事業の法人成りに当たっての一般的な注意点とか登記上の注意点については書かれている書物がありますが、不動産賃貸業に限定して解説しているものは見当たりませんので、今回はこの業種に的を絞って詳しく解説しておくこととします。

①目的・・・法人の場合、法令に触れなければ基本的に何でもできるのですが、それはあくまで定款とか登記簿に記載している範囲に限定されます。

そのため、いずれやるかも知れないことをアレコレ羅列しておきたいと考える人がいらっしゃるのですが、銀行から借金する場合、このことがマイナスに作用する場合があります。

と言いますのは、不動産賃貸業とは別の事業を兼業する場合、金利の安い住宅ローンを受けられない銀行がほとんどなのです(受けられる銀行であっても全体の10%以下という条件が付けられています)。

別の言い方をすれば次のようになります。つまり法人の場合、以前は金利の高い事業ローンしか受けられなかったのが、一定の条件に該当すれば個人のマイホーム資金と同様、金利の安い住宅ローンを受けられるようになったというわけです。

私は10年ほど前から不動産所有会社を設立すべく様々な銀行に当たっていたのですが、その当時は私の知る限り安い金利で融資する銀行はありませんでした。

お客様と一緒に取引銀行に相談したりしていたのですが、どこも色よい返事をしてくれないのです。

そこで仕方なく銀行からの借金はすべて返済し、個人に対する長期の分割払いで対応しておりました。金額にして数百万円から数千万円程度だったので、どうにかなっていたのです。

このように書くと規模が小さいので銀行がイチイチ相手にしなかったのではないかと思われるかも知れませんが、それぞれのお客様は別に個人で10億円近くのマンション建築資金を銀行から借りているのです。

つまり、これらのお客様はかなりの資産家であり節税の一環として個人の所有する築年数の経過した物件を法人に売却しようとしたが、その当時は銀行にそういった融資制度が設けられていなかったというわけです。

ところが最近になって上述したような条件をクリアーすれば法人であっても住宅ローンを組んでくれる銀行が増えてきたのです。

このような現状に鑑み、会社の事業目的は不動産関連に限定すべきでしょう。もし何らか別の事業もやりたい場合には、別途法人を設立したほうが良いと思います。


②資本金の額・・・以前は資本金の額が会社の信用度を現していましたが、最近は最低資本金制度が廃止されたこととも関連して、資本金と会社の信用度との関係が基本的に無くなりました。

したがって、資本金の額は基本的にいくらでも良いわけですが、会社を設立しますと登録免許税とか定款認証代、司法書士等に係る報酬がかかりますので、少なくともそれらを賄うのに必要な額は最低限必要となります。

なお不動産所有会社の場合には不動産を取得するための資金とか各種経費、例えば不動産取得税、登録免許税等がかかりますが、それらは通常、金融機関から借金することになります。

③住所・・・法人を設立する場合、当然ながら法人としての本店所在地を決める必要があります。

一般の会社であれば事務所を借りるでしょうから、その住所を法人の本店所在地としますが、不動産賃貸業者の場合にはほとんどの場合、事務所を借りることはありません。

そこで通常は個人の住所地を法人の本店所在地とするわけですが、個人の住所地といっても1人に絞れないケースがあります。

田舎にいる両親が出資者とか役員になるケースもあるでしょうし、兄弟が役員等になるケースもあります。

このような場合には誰の住所地を本店の所在地にすべきか迷いますが、基本的には事業の中心となる人の住所地にしたほうが良いでしょう。

その理由は原則として本店所在地に管轄税務署(県税事務所、市町村役場を含む)から様々な書類とか案内書が郵送されて来るからです。また税務調査がある場合にも当然ながら、その税務署等が担当することになります。

なお、郵便物の送付先については本店所在地とは別の所に届け出ることが可能ですが、あまりにも離れていると不審に思われるかも知れません。

このように法人を設立する場合には検討すべき事柄がイロイロありますので、いきなり司法書士事務所に行くのではなく、できるだけ事前に会計事務所と相談するようにして下さい。