不動産市況

賃貸住宅の減価償却について

賃貸住宅の減価償却について

 賃貸住宅経営における不動産所得は、総収入金額-必要経費で計算されます。必要経費に算入される主なものとして、外注する場合の管理費用、各種税金(租税公課)、広告宣伝費、各種保険料、修繕関連費、借り入れ利息、仲介手数料、各種報酬などがあります。また、実際に支出が伴わない「減価償却費」も経費算入されます。今回はこの減価償却費について解説します。

減価償却とは

 建物や車、高級家具などの資産は、使用による劣化、時間の経過により、その価値が減っていきます。このような資産のことを減価償却資産といいます。賃貸住宅では、建物や建物附属設備、共有部の備品(一定金額以上)などがこれに該当します。また、土地は時間の経過で価値が減らないので、減価償却資産ではありません(ちなみに、土地は消費されない、という理由で売買時に消費税がかかりません)。
 このような資産は、資産の使用可能年数(耐用年数)の期間に案分して必要経費に算入することになっています。使用可能年数は法定耐用年数として国が定めており、それに応じて金額を算出します。注意しておきたいのは、これはあくまで会計上のルールであり、実際にその金額分価値が下がるというわけではありません。例えば、大都市部での分譲マンションで、築30年を超える物件が購入時よりも高い値段で売却できる例は多々あります。

 分譲型の賃貸住宅を購入した場合の減価償却は取得金額(=購入金額)を、土地と建物に分けて、そのうちの建物部分の価格を抜き出して計算しますが、土地活用(遊休地活用)として賃貸住宅を建築する場合には、土地購入は行いませんので、建物価格≒建物建築費ということになります。

定額法と定率法

 減価償却費の計算には定額法と定率法があります。
 定率法は、資産の取得費から、減価償却累計額(初年度はゼロ)を差し引いた残高に、毎年一定の償却率をかけて減価償却費を計上する方法です。経費算入される減価償却費は、毎年、減っていきます。
 一方、定額法は、資産の耐用年数期間中は毎年同額の金額を償却する方法です。
 以前は、2つの方法を選択する形式でしたが、これから建築する賃貸住宅では、主な資産である建物(本体)、建物附属設備、その他構築物については「定額法」のみとなりました。
 定額法は取得金額×定額法の償却率 で計算します。

法定耐用年数

 法定耐用年数とは、「一般的な使用方法なら、少なくともこれくらいは使える」と思える年数の事で、建築物の場合は、構造と使用用途(住宅用、事務所用、ホテル用、飲食店用・・)により異なります。(もちろん、これも会計上のルールで、法定耐用年数22年の木造住宅でも50年以上使用している住宅はたくさんあります。)

住宅用建物の減価償却費

 ここでは住宅用に絞ってお伝えしていきます。
 住宅用建物の法定耐用年数は、

1)木造 22年

2)鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造 47年

3)金属造で骨格材が4mm以上(重量鉄骨)34年

3mm以上~4mm以下   27年
3mm以下      19年

3)金属造で骨格材が

4mm以上(重量鉄骨)34年
3mm以上~4mm以下   27年
3mm以下      19年

となっています。

これを割り戻せば(1÷年数)、償却率が計算できます。

1)木造 0.046

2)鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造 0.022

3)34年では、0.030
27年では、0.038
19年では、0.053

となります。
例えば、建物資産価格が8000万円の賃貸住宅で3.2㎜(27年の法定耐用年数)の物件の場合、毎年の減価償却費は約300万円となります。

附属設備・構造物の法定耐用年数と償却率

最後に賃貸住宅で代表的な附属設備の法定耐用年数と償却率をお伝えしておきます。

・ガス設備(給湯器など):法定耐用年数15年、償却率0.067

・エレベーター:法定耐用年数17年、償却率0.059

・外構(鉄骨コンクリート造):法定耐用年数30年、償却率0.034
  (コンクリート造):法定耐用年数15年、償却率0.067

以上、確定申告などの時の参考にしてください。

 詳細は、国税庁ホームページなどで必ずご確認ください。税制度は変更の可能性もありますので、必ず最新の情報を入手してください。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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