不動産市況

「空き家新税」京都市で導入へ!進む行政の空き家の対応策

「空き家新税」京都市で導入へ!進む行政の空き家の対応策

 5年ごとに調査が行われている総務省「住宅・土地統計」によれば、1988年の空き家は182万戸だったものが、2018年の(最新の)調査では349万戸、そして2030年の見込みでは470万戸になるとされています。
 空き家率(空き家数÷総家屋数)は、予想に反してそれほど増加をしていないものの、空き家の実数は年々増え続けており、今後もさらなる増加が見込まれています。このような状況に対応するため、国も地方自治体も対応策を導入しています。

京都市で「空き家新税」導入へ

 京都市は、空き家などの所有者に課税する「非居住住宅利用促進税」を2026年度に導入する方針を掲げ、新税の導入を盛り込んだ条例案を22年3月に市議会で可決、そして先ごろ管轄省庁である総務省(総務大臣)がこれに同意しました。これにより、2026年以降、全国の自治体で初めて、空き家所有者に独自の税金を課すことになります。
 課税を避けるために空き家となった物件の売却や賃貸を促し、市の課題となっている若年層や子育て世代への住宅供給を増やすことが狙いで、空き家を放置しにくい環境を整えることを目指します。
 京都市の新税制では、日常的に住まいとして使われていない物件の所有者が課税対象となります。税率は家屋の固定資産税評価額に応じて決まり、税額は固定資産税の半額程度となる見込みです。評価額の低い物件については、導入後5年間は対象外、また一定の条件を満たせば課税対象外となる見通しです。

現行の空き家対策特措法で増える空き家と改正空き家法

 国は2015年から「空き家対策特措法」を導入していますが、それでも空き家は増えていることから、その一部を改正し、より厳しい対策を取る事になりました。

 「空き家対策特措法」により、居住目的のない空き家において、放置を続ければ倒壊などの危険性が高く、かつ周囲に悪影響を及ぼすような空き家は「特定空き家」に指定されることになりました。「特定空き家」は、行政により除去するといった強制代執行がおこなわれたり、すりは修繕等の指導・勧告を行われたりすることが可能となりました。
 しかし、これら法律が施行されたあとも空き家は増え続けています。現行の「空き家対策特措法」は、すでに倒壊の危険があるような「特定空き家」に認定された物件への対応が主となっているため、行政も対応に苦慮していました。加えて、特定空き家の除却のさらなる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前段階での有効活用や適切な管理を強化する必要性が叫ばれていました。
 そこで、23年3月3日に「空き家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。こののち、公布を経てその6カ月以内に施行されることになります。

 今回の改正の柱は、以下の5つになります。

改正① 管理不全空き家の新設

 今回の改正で、最も大きなポイントは、状態は悪くないが1年程度住んで(使われて)いない「空き家」と先に述べた、状態が悪く周囲に悪影響を及ぼすような「特定空き家」の間の空き家として、「管理不全空き家」というカテゴリーを設けたことです。
 現状はひどく状態が悪化していないが今後放置すれば「特定空き家」となり得るような空き家を「管理不全空き家」として指定することになりました。これまで「特定空き家」になるまで対応しにくかった、行政による改善の指導・勧告が行えるようになります。

改正② 管理不全空き家は固定資産税の減免解除

 勧告を受けた「管理不全空き家」は、固定生産税が1/6に減額される住宅用地特例が解除されます。
 住宅地に係る固定資産税の減額措置は、例えば、相続として親が住んでいた家を引き継ぎ、その家に住まず空き家となっているような状況で、相続人(例えば子供)がその土地を保有しながら減税措置を受け続けるために、家をそのまま放置するようなケースが散見されていました。この例のように「減税処置を受けるために放置された空き家」が、その後「特定空き家」となってしまうわけです。そこで、今回の改正では、住宅の状態が悪化する前の段階からこうした措置を厳格化することで「空き家管理の確保」を図り、周辺住民の住環境を維持しようというわけです。

改正③ 所有者の責務強化

 「空き家」の管理は、いうまでもなく所有者が適切に行うべきことですが、現行法の「適切な管理」に対する努力義務に加えて、「国・自治体の施策に協力する」という努力義務が追加されました。空き家に係る国や地方自治体の施策に対して、「聞く耳をもたない」ではなく、「適切に対応してください」ということです。

改正④ 空き家の活用拡大

 市区町村が、例えば中心市街地や地域の再生拠点、観光振興地区などの「空き家等活用促進地域」の指定権限を持つことになり、また、同地域の指定や空き家等活用促進指針を定め、用途変更や建て替えなどを促進できるように、接道規制や用途規制の合理化を図ることができるようになります。加えて、市区町村長は、区域内の空き家等所有者らに対して、指針に沿った活用を要請することができるようになります。さらに空き家等の管理・活用に取り組むNPOや社団法人などの団体を、市区町村長は「空き家等管理活用支援法人」に指定できるようになります。空き家対策は地域促進につながることから、地方自治体への権限移譲が図られます。

改正⑤ 特定空き家の除却などの円滑化

 市区町村長に「特定空き家」に関する報告徴収権が与えられます。これにより資料の提出などを求めることができ、勧告等が円滑に行われるようにします。
 また、除却などの代執行が円滑に進むように、①命令等の事前手続を経るいとまがない緊急時の代執行制度を創設され、②所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収できるようになります。

最後に

 大きく進んだ「空き家対策」ですが、実際に「空き家」を所有されている方にとっては、「どうすればいいのかわからない」と、迷われる方も多いと思います。
 お悩みをお持ちの方は、ぜひお近くのセキスイハイムまでお問い合わせください。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

関連記事