不動産市況

世帯数の変化と住まいのあり方

世帯数の変化と住まいのあり方

最新の国勢調査結果の中から、「住宅」に関する項目と「住まいのあり方」に大きな影響を与える「世帯数・世帯構成」について見てみましょう。(データはいずれも、総務省国勢調査 2020年から)

世帯の状況

 最新の国勢調査によれば、我が国の世帯数は5583万世帯で前回調査から238万世帯、4.5%増となりました。人口減少は始まっていますが、世帯数は1920年の調査開始以来増え続けています。大規模家族はほとんど見られなくなり、核家族世帯や単身世帯が増えています。
 特に単身世帯(1人暮らし)は全世帯の38.1%(約2111万5000世帯)となり、2005年の調査の時は29.5%(約1445万7000世帯)でしたので、約670万世帯、1.46倍にふえています。この15年で急増していることが分かります。前回調査2015年比でも単身世帯はプラス14.8%となっており、増加スピードが加速しています。2010年以降、割合的には最も多いのは単独世帯となっており、日本は2000年以降急激に1人暮らしが増えたと言えます。

 こうした家族・世帯のあり方の変化に伴い、住宅のあり方にも変化が起こっています。2040年頃まで、このような傾向が続くと予測されています。

国勢調査の中の住居調査

 国勢調査の調査項目の多くは、人口・世帯・年齢といった人や家族に関する調査項目が多いのですが、大きな項目の1つに「住居の状況」というものがあります。この項目は、主に「どんな住居に住んでいるか」の調査となっています。

住宅の建て方

 2020年10月時点の、わが国の世帯数は5495万4000世帯で、そのうち「一戸建て住宅」に住むのは2956万1000世帯(53.8%)で最も多くなっています。また、共同住宅(1つの建物に2つ以上の住戸があるもの。主にマンションやアパートと呼ばれる建物)に住む世帯は2449万3000世帯(44.6%)でした。

 共同住宅に住む世帯は、2000年調査では37.4%でしたが、以降一貫して増え続けています。また、前回調査(2015年)では、42.7%でしたので、1.9ポイント上昇しています。
 逆に一戸建て住宅に住む割合は、2000年調査では58.6%で、こちらは以降一貫して減少しています。前回調査では55.2%でしたので、3.4ポイント低下しています。共同住宅に住む世帯数(実数)は、2000年と2020年を比べると2020年の1.43倍となっています。この間の世帯数(実数)は1.19倍でしたので、共同住宅に住む世帯がかなり増えたことが分かります。

 都道府県別にみると、一戸建て住宅に住む世帯が多い上位は、秋田県(80.7%)、山形県(76.9%)、富山県(76.6%)となっており、日本海側に面する県が上位を占めました。逆に共同住宅に住む世帯が多いのは東京都(70.3%)がダントツで、沖縄県(58.3%)、大阪府(57.1%)と続きます。

住宅の所有関係

 次は賃貸住宅需要に関係の深い「住宅の所有」についてです。

 持ち家住む世帯は、61.4%で、割合としては前回調査から0.9ポイント低下しました。
2000年調査では61.1%、以降62.1%、61.9%、62.3%と割合では大きな変化はありません。実数では、2000年と2020年を比較すれば、1.21倍となっています。都道府県別にみると、持ち家比率が高いのは、秋田県(77.6%)、富山県(76.6%)、山形県(74.8%)が上位となっています。持ち家比率は多くの都道府県別で低下しています。持ち家比率上昇は3つ、横ばい2つ、その他42都道府県では持ち家比率が低下しています。

 「持ち家」と回答しなかった世帯の方々が何らかの借家に住んでいるということになります。調査の回答項目では、公的な借家、民営の借家、給与住宅(社宅)などになります。
 このうち圧倒的に多いのは「民営の借家」です。地主の方が建てる賃貸住宅はこれに該当します。この民営の借家に住む世帯は、全国で29.7%と3割近くになります。この割合は、2000年調査では26.9%で、以降回を追うごとに増えています。この傾向が続くとすれば次回調査では30%を超える可能性は高いと思われます。また、民営の借家に住む世帯の実数は、2000と2020年を比較すると1.33倍となっています。持ち家に住む方の実数の伸び(1.21倍)と比べて、高くなっていることが分かります。
 このように、国勢調査データからも、賃貸住宅(とくに民間経営の賃貸住宅)に住む世帯は増加しており、この傾向は続くものと思われます。人口減少期に入ったわが国ですが、世帯数は増え、都市部を中心にまだしばらく賃貸住宅需要は増えると思われます。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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