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監修:紀平 正幸 (きひら まさゆき)東京FPコンサルティング株式会社代表取締役。ライフカウンセラー。個人のファイナンシャルプランニングをはじめ、テレビのコメンテーター、講演、執筆活動など幅広く活躍中。

【マネープランコラム】40~50代から考える、老後への備え② 老後の“備え”と住宅ローン“繰上げ返済”のバランスは?

余力の少ない現役世代でもできる備えとは?

老後の生活が少しずつ近づき、経済的な備えへの必要性がいよいよ現実味を帯びてくる40〜50代。しかし一方で、この世代は教育費がピークを迎える時期でもあり、老後にまわす生活資金の余力はさほどないというご家庭がほとんどです。その中で、住宅ローン残債もまだかなりあるというケースも多いでしょう。残債を退職金でまとめて返済したいけれど、そうなると老後の備えも心配……という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、現役世代の限られた余力をいかに賢く活用して老後に備えるかついて、ご説明しましょう。

住宅ローンの繰上げ返済が、老後の“余力”を生む手堅い方法に!

老後の安心を生むというと、限られた資金を“いかに増やすか”という発想になりがちです。しかし資金を増やすといっても、その方法は投資や保険など扱いの難しい金融商品頼みになってしまいがちで、当然リスクも伴います。今回注目したいのは、現役時代に利息のついてしまう借入金を“いかに減らしておくか”という点。つまり「住宅ローンの繰上げ返済」です。

住宅ローンの残債には利息がついているため、完済までの期間が延びれば延びるほど、支払う利息の額も多くなってしまいます。また完済までの間に金利が上がるなどのリスクも考えられます。40〜50代が老後のために検討しておきたい方法は、前倒しで住宅ローンの返済を進めておくこと。元金を減らすことで、利息の支払い額や金利上昇のリスクを減らすことができ、老後の安心につながるのです。

◎現在の40〜50代がマイホームを購入した時期の住宅ローン金利と現在の金利
金利タイプ 変動金利 3年固定 5年固定 10年固定 フラット35
金利
(適用金利*)
2007/5 0.8%~1.2% 1.0%~1.5% 1.5~2.0% 2.0%~3.0% 2.7%~3.4%
2017/5 0.6%~1.1% 0.7%~1.2% 0.7%~1.2% 0.9%~1.3% 1.5%~2.1%
*住宅ローンの金利には、「基準金利」と言われる優遇前の金利と、一定の基準を満たすことで優遇される「適用金利」があります。
 一般的には「適用金利」で住宅ローンを組むケースがほとんどのため、この表では「適用金利」のみの記載となっています。
◎繰上げ返済によって返済期間を短縮した場合の、利息軽減効果(目安)

《前提条件:当初元本3000万円・30年返済。繰上げ返済金額約100万円(返済期間短縮型)》

適用金利(繰上げ返済時点の金利)
1.0% 1.5% 2.0% 2.5% 3.0%
短縮
期間
軽減
利息
短縮
期間
軽減
利息
短縮
期間
軽減
利息
短縮
期間
軽減
利息
短縮
期間
軽減
利息
5年 11ヵ月 5万円 10ヶ月 7万円 10ヶ月 10万円 9ヵ月 12万円 9ヵ月 15万円
10年 11ヵ月 10万円 11カ月 15万円 11カ月 21万円 11カ月 28万円 11カ月 35万円
15年 1年 16万円 1年 24万円 1年 34万円 1年 43万円 1年 54万円
20年 1年1ヵ月 22万円 1年1ヵ月 34万円 1年1ヵ月 47万円 1年2ヵ月 64万円 1年2ヵ月 78万円

預貯金や金利などを考慮しながら、賢く繰上げ返済を。

住宅ローンの繰上げ返済をすることは、老後生活への良質な投資となります。とはいえ、生活資金をどんどん繰上げ返済にまわすだけがベストな方法とは限りません。繰上げ返済には、残りの返済期間を短縮する「期間短縮型」と、月々の支払い額を軽減する「返済額軽減型」がありますが、どちらを選ぶべきなのか?どういったタイミングで繰上げ返済を行うとよいのか?どういった場合は繰上げ返済を踏みとどまった方がよいのか?……など、そのメリット・デメリットをきちんと知っておくようにしましょう。

繰上げ返済の「期間短縮型」と「返済額軽減型」のメリット・デメリット
メリット デメリット
期間短縮型
  • 「返済額軽減型」に比べて利息軽減効果が大きい
  • 定年以降も返済が続く場合には効果が大きい
  • 返済期間の短縮で将来の金利上昇リスクに備えられる
  • 収入が不安定な人には、繰上げ返済後の家計のリスクが大きいため向かない
返済額軽減型
  • 毎月の住宅ローン返済負担を軽くできる
  • 将来の金利上昇による返済額アップを抑制できる
  • 子どもの養育費や教育費の多い時期に負担が軽減できる
  • 「期間短縮型」に比べて利息軽減効果が小さい

利息軽減効果の大きい「期間短縮型」ですが、繰上げ返済後に家計が厳しくなり月々の返済負担を軽減する必要性が生じても、返済期間延長や借り換えができなくなります。予備費として毎月の生活費の6カ月分程度は残しておく、安易な「期間短縮型」繰上げ返済は控えるなど、しっかりと計画してから行うようにしましょう。

住宅ローンを「変動金利型」や「固定期間選択型」で借りている場合は金利上昇のリスクがありますが、「返済額軽減型」の繰上げ返済を選ぶことで月々の返済額の上昇を抑えることができます。子供の教育費がかさむタイミングなどにも有効です。

繰上げ返済を検討するタイミングとしては、金利見直しや返済額変更の時期がよいでしょう。ローンが複数ある場合には、「金利が高いもの」「残りの返済期間が長いもの」ほど利息軽減効果が大きくなるので、優先順位をつけて繰上げ返済を計画しましょう。なお、1%以下の低い金利で住宅ローンを組んだ場合には、借入れ当初から10年間は住宅ローン控除(1%)が受けられるため、繰上げ返済すると不利になります。繰上げ返済は住宅ローン控除が適用されなくなる11年目以降がおすすめです。

では具体的に、どういったケースだと繰上げ返済がうまく利用できるのでしょうか。逆に、どういう状況で繰上げ返済に失敗してしまうことがあるのでしょうか。成功と失敗、それぞれの実例をご紹介しましょう。

《繰上げ返済で成功したケース》

現在55歳のAさんは、40歳でマイホームを購入して4000万円の住宅ローンを30年返済で借りました。念願のマイホームは手に入れたものの、老後も70歳まで続く年間177万円のローン返済がとても気がかりでした。

ところが、思いがけなくAさんは父親の相続で1400万円の現金を受け取りました。そこでAさんは1400万円を全額住宅ローンの繰上げ返済を銀行に相談したところ、「期間短縮型」にすることで、残りの返済期間が約10年短くなり、軽減できる利息は314万円にもなることがわかり実行しました。

Aさんはこうして60歳の定年までに住宅ローンを完済。結果的に相続を受けた資金で22%程度もの高い運用益(利息軽減効果)を得ることができたことになります。

《繰上げ返済で失敗したケース》

現在50歳のBさんは、昨年転職をしました。退職金として得た1000万円を、住宅ローンの返済負担を軽くするため「返済額軽減型」の繰上げ返済に使いました。

ところが今年受診した定期健康診断でBさんに重大疾病が判明。住宅ローンには団体信用生命保険が付いているので、Bさんに万一のことがあった時には、住宅ローンがすべて免除されることになります。繰上げ返済をしなければ1000万円を家族に残すことができたかもしれないのにと後悔しました。

団体信用生命保険などの恩恵を受けるような可能性がありそうなら、繰上げ返済をせずに資金を手元に置いておく、また団体信用生命保険や三大疾病保障特約付きなどの住宅ローンを繰上げ返済する際は事前に保険の見直しをしてから行うようにしましょう。

ちなみに繰上げ返済できる最低返済額は、金融機関ごとに条件が異なります。例えば財形住宅融資などの公的住宅融資やフラット35では100万円(インターネットサービスを利用すると元金10万円以上から可能)とされていますが、民間住宅ローンでは1円や1万円から可能なものも。手数料にも金融機関によって幅があり、インターネットや電話で簡単に手続きができて手数料がかからないものもあります。住宅ローンの借り換えなどを検討される場合は、繰上げ返済のしやすさという点もチェックするとよいでしょう。

「老後の備え」というと、現役世代の限られた原資をいかに「残すか」「増やすか」という発想になりがちです。しかし教育や親の介護などで大きな出費もある40〜50代だからこそ、いかに「無駄に減らさないようにするか」ということを考えておくことが重要なのです。そういった点では、今回ご紹介した住宅ローンの繰上げ返済は、“備え”を生み出す賢い方法と言えるでしょう。

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