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これまでのコラムでは、土地活用の“目的”を明らかにした上で収益や相続について詳しく学び、理想の収入を得るためのベストな土地活用法を探ってきました。今回のコラムでは、いよいよ具体的な活用方法を検討するプロセスへ。駐車場にするのか、土地を貸すのか、賃貸物件を建てるのかなど、「どのように活用するのか」は事前計画の重要な要素。なぜなら活用の方法がその土地に最適なものであるかどうかが、収益に大きく影響するからです。
例えば、賃貸物件を建てるケースを考えてみましょう。銀座に2階建ての木造アパートを建てる、田園風景の広がる地域に豪華な賃貸マンションを建てる……こういった違和感のある方法を選択する方はほとんどいないでしょう。そもそも法律上建てられないということもありますが、それ以上に“経済合理性”に反するというのが大きな理由です。つまり、銀座で小規模な木造アパートに住みたいというニーズ、高額な家賃を払ってまで田舎の立派なマンションに住みたいというニーズは非常に少なく、所有者のリスクが増すばかりだからです。
土地の活用方法には様々な選択肢があります。では、どのような方法があるのか、その一例をご紹介しましょう。
所有している土地の特性(とくに立地や広さ)によって相続税は変化しますが、次のようなケースでは相続税がかさむことも多いので、とくに相続税納税のシミュレーションを事前にしておくことが望まれます。
活用方法 | 具体例 | メリット | デメリット | 備考 |
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土地を貸す | 月極駐車場 コインパーキング |
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住宅地や商業地など、様々な場所にニーズがある。 |
定期借地 (高齢者住宅や事業用地として事業者に20~30年の期間貸出する) |
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高齢者住宅用地などの場合は、最寄り駅から離れた土地でもニーズは高い。 | |
建物を建てる | アパート、マンション |
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駅近の土地ならビジネスマンや学生をターゲットにした一人向け住宅がメインに。郊外の土地の場合、ファミリー向けが想定される。 |
戸建貸家 |
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貸事務所 |
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事務所の場合は駅近の土地が最適。工場や倉庫などの場合は周辺道路の状況もニーズに影響する。 | ||
売却する | 単純売却 |
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等価交換 (地主として土地を提供し、デベロッパーが建築費を提供する方法で建てられた物件において、出費の割合に応じて所有権を得る) |
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これらの中でどれを選ぶべきか?その答えは、実はすでに出ています———そう、今までのコラムで考えてきた土地活用の“目的”を思い出してみましょう。もし、「プラスアルファの収入を得る」ことが目的であるなら、第3回・第4回のコラムで触れた収益の考え方をベースに、年間および月々のキャッシュフローを考え、理想の手取り収入が得られるかどうかをベースに判断するのです。一方、目的が「相続税を節税したい」というものなら、駐車場や定期借地のような活用方法ではなく、アパート・マンション等の「建物を建てる」方法を選ぶべきでしょう。
生活のための余裕資金を得たい、住宅ローンの負担を軽減したい……などの場合は、年間あるいは月間の希望収入を達成できるかどうかが判断基準に。この場合、安定収入が継続的に得られる定期借地、賃貸物件の経営などが想定されます。もし建物を建築することで借入金返済額がかさみ、収入が目減りしてしまう場合は、返済期間を延ばすことで希望収入を実現できる場合も。
相続税がかなりかかるような場合には、相続税の節税効果が大きいアパート、マンション、戸建貸家、貸事務所等がおすすめです。ただし、借入金の返済が進むにつれ節税効果が減少していくため、土地の一部を納税用地として確保しておくのがベターでしょう。
土地活用の“目的”を考慮した上で、「アパート経営」を選ばれる方もいらっしゃるでしょう。ただ、土地の“特性”によってはアパート建築がふさわしくない場合もあります。アパート建築を慎重に考えるべきケースは三つ。
一つ目は「最寄り駅から距離がある」土地です。入居者にとってアパートを選ぶ最大の魅力は、手頃な家賃で便利な立地に住めること。当然、駅から離れるほど入居者ニーズは低くなります。駅から離れた土地の場合、ファミリー向けの戸建貸家や売却などを視野に入れておくとよいかもしれません。
二つ目は「都心で容積率が高い」土地。土地自体の評価額が非常に高く、低層アパートでは高額な相続税をそれほど軽減できないことが理由です。この場合は高層マンションや事務所ビルなどが適していると言えるでしょう。
三つ目はアパート経営に限りませんが、「相続時にトラブルが想定される」場合。一度土地活用をスタートすると、簡単に別の方法に切り替えることはできなくなります。土地の相続人がアパート経営を負担に感じていたり、借金をすることに反対していたり、また土地が兄弟など共有名義になっている場合には、思わぬトラブルにつながりかねないので避けたほうが無難でしょう。
土地活用の具体的な方法を決める際に大切なのは、活用する“目的”をはっきりさせて計画を立てること。長期に渡る収支バランスのシミュレーションや、どういった建物が建てられるのかなどを検討するにあたっては、税法や建築法規などの知識がなければ難しい部分もあるはずです。そのような場合は、決して自己判断で決めようとせず、複数の専門家の意見をバランスよく比較・参考にしながら検討を。そうすることでより満足できる土地活用につながるはずです。
活用の“目的”、土地の“特性”を考慮したところ「売却」というチョイスをされる方もいらっしゃるでしょう。ただし考えておきたいのが、前回のコラムでもご紹介したように、相続税が発生した際にどう納税するかということ。相続時に土地を売却したとしても、その売却価格に対しても多額の相続税がかかるため、事前に納税に備えておく必要があるでしょう。
※受取保険金の場合は相続人一人あたり500万円までは控除されるため、相続人が4人の場合には 2,000万まで課税されないことになります。