建替・リノベーション

賃貸住宅の建て替えはどんなタイミングで検討すべきか?

賃貸住宅の建て替えはどんなタイミングで検討すべきか?

 都心などの大都市の中心部において分譲マンションの建て替えが近年少しずつ増えてきました。国土交通省によれば2021年4月時点の全国での分譲マンションの建替え棟数は263棟とされています。分譲マンションが建てられるようになって約60年が経ち、老朽化・建て替えが必要な分譲マンションが増えていますが、まだまだその数はわずかと言っていいでしょう。これからますます建て替える必要のあるマンションが増えることが明らかなため、分譲マンションの建替えに備えてマンション建て替え円滑化法が改正されました。
 そして、分譲マンションと同じく、今後増えるのが確実なのが、老朽化した賃貸住宅の建て替えです。ここでは、賃貸住宅の建て替えのタイミングと建て替えの流れについて解説します。

賃貸住宅建て替えのタイミング

 賃貸住宅の建て替えの要因となるのは、なんといっても経年による建物の老朽化です。
建築基準法における耐震基準は、大きく1971年、1981年の2回水準が引き上げられました。耐震改修・耐震補強工事の補助金制度などもありますが、1971年建築物件ならば築50年を超え、1981年建築物件ならば築40年を超えます。「そろそろ建て替えか・・」と検討するタイミングだと言えます。

 耐震性以外にも、建物の老朽化を意識するきっかけとなるのが、「空室が目立つようになること」や「入居者様客付けに時間がかかること」等があげられます。「このところ、空室が増えているのは、やっぱり、ウチの賃貸住宅はもう古いのか?」と嘆く築古賃貸住宅オーナー様も少なくないでしょう。

築30年を超える賃貸住宅が今後さらに増える

 都心の超人気エリアでは築50年を超える賃貸住宅(RC造が多い)もあり、フル稼働している例も多く見られますが、一般的なエリアでは、築30年を超えた賃貸住宅は競争力を失っていきます。

 2022年を基点にすれば、築30年の建物は1992年施工の物件で、まだバブル期の余韻が残っていた頃で、今よりも多くの賃貸住宅が建設されていました。築35年だと、1987年建築の物件となり、バブル景気の上昇機運の真っただ中に建てられた賃貸物件の中には豪華な仕様のものもあります。1980年代~90年代前半に、今では考えられないくらいの賃貸住宅が建てられており、これらが30年超えの物件となっています。

賃貸住宅選びが変わった

 現在では、スマホやPCで賃貸物件探しをする時代となり、物件内覧に行く前に、ネットで条件を入れて検索し、そこで出てきたものの中から選んで、不動産会社に問い合わせるという流れがほとんどとなりました。昔のように、まず地域に根差す不動産会社に足を運んで、そこで物件を紹介してもらうというパターンは激減しています。これは都市部だけでなく、地方都市でも同様です。
 物件検索において、立地条件を除けば、賃料、広さ(間取り)、築年数でまずふるいにかけます。〇万円以下、〇〇㎡以上、築〇〇年以内、という感じです。そのため、築30年を超える物件では、「実際は古さを感じないいい物件だけど、物件案内が入らない・・」となってしまう例も多いようです。
 言うまでもなく、空室の増加は、賃料下落に繋がります。こうした悪循環が収まらないなら、「いっそ建て替えを行おう」とすぐ決められればいいですが、大抵はそんな訳にはいきません。また、言うまでもありませんが、大型リフォームをすれば、見違えるように新しい賃貸住宅になりますが、表記の築年数は変わりませんので、先に述べた物件検索でのディスアドバンテージに変わりはありません。

 空室増、賃料下落は賃貸住宅経営の収益を悪化させます。建物の残債額や該当エリアの将来に渡る賃貸需要などあらゆる要因から判断して、「大丈夫」となれば、建て替えステージに進むといいでしょう。

賃貸住宅建て替えの流れ

 一般的に土地・建物の所有権を保有している自宅では建て替えは所有権保有者の意思のみで行うことができます。しかし、賃貸住宅は、「普通賃貸借契約」あるいは「定期借家契約」に基づいた賃借人がいる建物となります。建物と賃借権者に許可が必要となります。入居者に対し、一定額のお金を支払い退去してもらう、もしくは一旦別の所に住んでもらい(その費用も一部または全額負担)、戻ってきてもらう、という許諾を貰います。ここが大きなハードルになります。賃借人の方々がすぐに了承してくだされればいいですが、時に弁護士の方に依頼する必要もあるかもしれません。
 また、ある時点から順次、退去後の部屋も入居者を募集しないわけですから、その分の収益が悪化することも考慮しなければなりません。

賃貸住宅建て替えの流れ

 このように、賃貸住宅の建て替えにはかなりの時間を要する可能性があります。そのため、建て替えの検討を始めたら、まず管理会社かセキスイハイムのような施工会社に相談してみましょう。 
 現在賃貸住宅をお持ちの方は、いずれ建て替えするかどうかを検討する時期が来ます。そのためにも、早くから情報を仕入れておくとよいでしょう。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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