ハイム通信

賃貸住宅はどこまで進化するのか?
菜園付き賃貸住宅アンケート調査(前編)

賃貸住宅はどこまで進化するのか?菜園付き賃貸住宅アンケート調査(前編)

セキスイハイム初の菜園付き賃貸住宅に関するアンケート調査

 積水化学工業(以下、セキスイハイムと表記)では、2020年11月下旬に、1都3県の賃貸住宅に住む20~60代男女にWEBアンケートを行いました。1,000名(20~40代:700名、50~60代:300名)分の回答を集め、集計と分析を行いましたので、その内容を解説したいと思います。

 アンケートの結果・分析に入る前に、このような賃貸住宅入居向けのアンケートを行うことになった背景と狙いについてお伝えします。

賃貸住宅志向の高まり

 わが国においてはここ30年間持ち家比率が大きく下がり、積極的に賃貸住宅に住みたいと考える方が増えました。また、持ち家(マンション・戸建)を購入するまでの一時的な住居として賃貸住宅に住む方だけでなく、持ち家を所有せず「ずっと賃貸」という志向の方が増えているようです。
 また、1990年代以降の日本は世帯構成のあり方も変化しています。単独世帯(1人暮らし)は右肩上がりに増加、夫婦2人世帯も増えています。「持ち家を持つつもりがない」、「1人あるいは2人で過ごしたい」どちらの志向も、「縛りある暮らしではなく、自由に過ごしたい」という思いからなのでしょう。

進化する賃貸住宅と多様化するニーズ

 こうした志向の変化にともない、賃貸住宅は変化・進化してきました。かつての、「安かろう」的な賃貸住宅・賃貸アパートは減り、ここ20年に建てられた賃貸住宅は、内装・水廻り設備・外観・外構(外廻り)とも、かなりハイグレードになってきています。
 また、多様化する賃貸住宅需要者のニーズに応えるために、趣味趣向性に富んだ賃貸住宅が、郊外物件を中心に増えてきました。
 加えて、これまで賃貸住宅といえば単身向けかファミリー向けの2パターンの部屋が多く見られましたが、セキスイハイムも提案している2人向け(=カップル向け)賃貸住宅(セキスイハイムのペアジェニックシリーズ)など、多様化する世帯構成に合った物件が増えています。

 このようにコンセプトを強く打ち出した賃貸住宅が今人気となっていますが、昨今の特に新型コロナウイルスの影響により、「働き方、時間の使い方」の変化に伴い、より一層「住まいのあり方」つまり「住まいと住まう人の関わり方」に変化が見られています。

 そこで、セキスイハイムでは、賃貸住宅における「庭」の概念を拡大させ、「家庭菜園」が付いた賃貸住宅の可能性を模索してきました。こうした背景からこの度のアンケート調査となったわけです。

 それでは、アンケートの概要と分析について順に述べていきます。

アンケート回答者の属性

 アンケートは、現在賃貸住宅に住んでいる方に回答をお願いしました。
回答の男女比は概ね半々、賃貸住宅のメイン層である30代・40代の回答が大半、そして世帯構成は単身・カップル(夫婦)・ファミリーが一定ずつとなっています。
 一都三県に住む方から幅広く回答を頂きましたので、家賃にはばらつきがあり世帯年収も同様でした。

<アンケート概要>

・対象:1都3県の賃貸住宅にお住まいの20〜60代男女1,000名
→20〜40代で700名、50〜60代で300名と件数を設定、回答を得た。

・方法:WEBアンケート

・実施期間:2020年11月27日(金)〜29日(日)の3日間

・家族構成別の構成比:下記グラフの通り。

家庭菜園の経験は意外に多い?

賃貸住宅に入居している方は、あまり家庭菜園を行っていないのではないか、と思いアンケート調査を行いましたが、意外(?)にも約3割の方が家庭菜園を行っており、その方々の95%以上はベランダでの菜園でした。また、10%(複数回答あり)の方は、市民農園や貸し農園を利用していました。
 家庭菜園を行っている方は50代60代の夫婦のみ世帯と同じ年代の夫婦と子供世帯の方々の割合が高くなっています。

 家庭菜園をしてよかったこととして、「育てる喜びを知ることができたこと」をあげる方が最も多く、5割以上の方がこう答えています。また、子ありの世帯では「家族みんなで野菜作りを楽しめること」「子どもの教育・食育に良いこと」の回答が多く見られました。

なぜ、貸し農園・市民農園を利用しないのか?

 郊外では、市営や民営の貸し農園が増えてきています。しかし、賃貸住宅入居者で利用している方は、まだそれほど多くないようです。では、どんな理由で利用しないのでしょうか。
 理由で多かったのは、「知識や経験がないため」「わざわざ通うのが面倒なため」「自宅の近くにないため」の3つですが、単身世帯(主に若年層だと思います)では、「知識や経験がないため」が多くなっています。こうしたネガティブ要因が解消されたら、「利用しようと思う」という方は2割となっています。とくにカップル(夫婦)世帯が高くなっており、のんびりした時間を使いたいと思っているのでしょう。

 一方、貸し農園をすでに利用している方(あるいは利用していた経験のある方)では、市民農園・貸し農園を「現在も利用している」が約6割おり、月額利用料は、ばらつきが見られます。利用期間を見ると、現在も利用している方のうち、65%が「2年以上」で、一度利用して、良さを知ると継続的に利用するという実態が分かります。

 では、家庭菜園がついた賃貸住宅に対する関心はどうなのでしょうか。次のコラムにて詳しく解説したいと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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