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2010年07月27日

フリーレント契約と賃貸料の税務上の取扱い

今回はフリーレント契約に係る賃貸料の税務上の取扱いについて解説しておきたいと思います。

ご承知のように家賃等の収益計上時期は"契約または慣習により支払いを受けるべき日の属する年度"の収益に計上することになっています。

ところが、この規定は定期的に支払いを受ける賃料等を想定しているものであり、フリーレントについて規定しているものではありません。

それではフリーレントの場合、どのように処理することになるのかということですが、これについては「週刊税務通信」(会計専門家向けの雑誌)によれば実務上、次のように取り扱うことになっているようです。

なお一口にフリーレント契約といっても中途解約が可能なものと中途解約が不可能なものに分かれていますので、税務上の取扱いも当然ながらそれぞれで異なります。以下、これらについて具体例を設けてご説明することとします。

<具体例>

・賃貸契約期間・・・・・3年
・賃貸料・・・・・・・・30万円/月
・フリーレント期間・・・3ヵ月

<中途解約できるフリーレント契約の場合>
(1年目)
   実際の賃料収入   30万円×9=270万円
   税務上の収益計上額 30万円×9=270万円 
    (借方) 現金 270万円 / (貸方) 賃料収入 270万円

※実際の収入金額をそのまま税務上の収益計上額として処理すれば良いということです。2年目、3年目も同様です。

(2年目)
   実際の賃料収入   30万円×12=360万円
   税務上の収益計上額 30万円×12=360万円 
    (借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 360万円

(3年目)
   実際の賃料収入   30万円×12=360万円
   税務上の収益計上額 30万円×12=360万円 
    (借方) 現金 360万円 / (貸方) 賃料収入 360万円

<中途解約できないフリーレント契約の場合>
(1年目)
   実際の賃料収入   30万円×9=270万円
   税務上の収益計上額 
     賃貸期間の合計賃料990万円(30万円×33ヵ月)×12/36=330万円
    
    (借方) 現金  270万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
       未収入金 60万円 / 

※中途解約できないということは賃貸借期間である3年間の賃料収入が確定しているということですから、3年間の合計賃料を3年で均等按分した額を毎年の収入として計上すべしと考えるのです。

この事例では当初3ヵ月分についてはフリーレントということでタダにするわけですから、賃貸期間の合計賃料は990万円(30万円×33ヵ月)になります。

そして、この額を均等按分しますので1年目の収益計上額は330万円(990万円×12/36)になるというわけです。

なお実際の入金額は270万円ですから差額の60万円は未収入金として処理することになります。

(2年目)
   実際の賃料収入   30万円×12=360万円
   税務上の収益計上額 330万円 
    
    (借方) 現金  360万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
                  / (貸方) 未収入金  30万円

※このように1年目とは逆に、2年目の入金額は360万円ですから差額30万円を未収入金から取り崩すことになります。3年目も同じ。

(3年目)
   実際の賃料収入   30万円×12=360万円
   税務上の収益計上額 330万円 
    
    (借方) 現金  360万円 / (貸方) 賃料収入 330万円
                  / (貸方) 未収入金  30万円  

いかがですか。一口にフリーレントといっても中途解約ができる場合とできない場合では税務上の会計処理はかなり違ってきますので十分ご注意下さい。


2010年07月12日

払い過ぎた税金を取り戻す方法

今回は「払い過ぎた税金を取り戻す方法」についてご紹介したいと思います。

常識的に考えると、払い過ぎた税金は修正申告によって簡単に取り戻すことができそうですが、税の実務ではそう簡単ではありません。一定の手続きが必要なのです。

「でも、当初申告した税額が少なかった場合には修正申告によっていつでも税額を修正することができるじゃないですか?」との疑問を抱かれると思いますが、それはあくまで当初申告した税額が本来の正しい税額よりも少なかった場合です。

「払い過ぎた税金を還付請求する」ケースというのは当初申告の税額よりも正しい税額のほうが少ない場合ですが、このような場合には修正申告は認められないのです。

「それではどうするんだ?」ということですが、これには2つの方法があります。1つ目が「更正の請求」であり、2つ目が「減額更正の嘆願」です。以下、順番にご説明いたします。

まずは「更正の請求」から。これは当初申告した税額が本来の正しい税額よりも過大となった場合に、税務署長に対して税額の減額をしてくれるよう申請するというものです。

このように更正の請求は税務署長に対して減額の申請を請求するものですが、この請求はいつでもできるわけではありません。一定の期限があるのです。通常の更正の請求では法定申告期限から1年以内となっており、この期限を1日でも過ぎたらアウトです。

また、本来の正しい税額よりも過大となったからといって、どんな場合でも認められるわけではありません。「その税額の計算が税法の規定に従っており、計算に誤りがない」場合には認められないのです。例えば次のようなケースです。

<更正の請求が認められないケース>

①小規模宅地の特例の適用を受けるケース・・・この特例は納税者にとって最も有利になるように適用する宅地を選択することができるわけですが、一旦選択しますと別の宅地に変更できません。

②仕入税額控除の計算方法を選択するケース・・・消費税の計算方法については個別対応方式と一括比例配分方式の2つの方法が認められておりますが、一旦選択した方式を別の方式に変更することはできません。

これ以外にも様々なケースがありますが、いずれの場合も2つ以上の選択肢から任意に選択できるものについては更正の請求によって別の有利なほうに変更することはできないことになっております。

このように一旦選択しますと取り返しがつかなくなってしまいますので、事前によくシミュレーションしてから有利なほうを選択するようにして下さい。

なお、以上はあくまで法定申告期限の翌日から1年以内に更正の請求をするケースです。法定申告期限内であればいつでも何度でも申告し直すことが可能です。この場合には後の日付の申告書が採用されます。

以上が「更正の請求」に関するあらましです。それでは次に「減額更正の嘆願」についてご説明いたします。

減額更正の嘆願とは文字通り、税務署長に対して税金を減額してくれるようにお願いするというものです。正に「嘆願」です。

法定申告期限から1年以内であれば上記の更正の請求をすれば良いわけですが、この期限を過ぎた場合にはもはや更正の請求はできません。

そこで納税者としては更正の請求に代えて、この「嘆願」をするわけです。ところでこの「嘆願」は税務署長に対して法的な拘束力を有するものではありません。

したがって税務署長がこれを無視して減額更正の処理を行なわず放置したとしても法的には「不作為」として責任追及することはできません。だからといって明らかに還付請求できる事案についてほったらかしにすることは無いと思いますが・・・。

なお、この減額更正の嘆願は法定申告期限から5年以内であれば可能です。もし、この期限を過ぎた場合にはどうすることもできませんので十分ご注意下さい。