グループホームを考える
今回は土地活用の一つとしてのグループホームを取り上げてみたいと思います。
実は先日、顧問をしているハウスメーカーの担当者からグループホームを建てた場合の相続税対策としての効果等について質問があったのです。
グループホームの意義についてはある程度ご存知だと思いますが、要するに
「認知症の方が小規模な生活の場で少人数(5人から9人)を単位とした共同住居の形態で、食事の支度や掃除、洗濯などをスタッフが利用者とともに共同で行い、一日中家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活を送ることにより、認知症状の進行を穏やかにし、家庭介護の負担軽減に資する」施設のことです(全国認知症グループホーム協会のホームページより)。
つまりオーナーから見れば、認知症の方向けの集合住宅を建設して介護事業者に一括して賃貸するというものですが、通常のアパート等と違っている点をまとめますと次のようになろうかと思います。
<通常のアパート等と違っている点>
①入居者の人数が5~9人に限定されている。通常のアパートとか賃貸マンションの場合には敷地の広さに応じて戸数は千差万別ですが、グループホームの場合はスタッフと入居者が「家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活を送ること」を主眼としているため、このような制限が設けられているのです。
ただし、土地に余裕がある場合には複数のユニットを設けることができます。例えば、1階と2階にそれぞれ9室を設ければ全部で18室になります。
②各ユニットには共同の居間・食堂・台所、トイレ、浴室等、およびスタッフルーム(事務所)が必要。つまり独身寮のようなものです。
ところで、このグループホームについては施設が不足しているということで国とか各自治体から補助金をもらえるケースがあります。
金額については自治体によってかなり違っているようですが、建設費について補助金を貰った場合、会計処理はどのようになると思われますか?
例えば1000万円貰った場合、この1000万円は入金のあった年度の収入として確定申告する必要があるのでしょうか?
もし、そんなことになれば建築費が足らなくなってしまいます。そこで収入に計上するのではなく建物の取得価額から控除することにしているのです。
「建物の取得価額から控除」しますと減価償却費の計算対象が減りますが、減価償却費が少なくなれば当然ながら不動産所得が増えます。そして不動産所得が増えればそれだけ所得税等が増加するというわけです。
「なんだ、結局、補助金はすべて取り戻されるのか!」、と心配することなかれ。所得税等の税率は人により異なりますがせいぜい20%程度。したがって1000万円の補助金の場合、取り戻されるのは多くて200万円。残りの800万円は貰いドクというわけです。
ところでグループホームを建設した場合の相続税対策としての効果はどうなるのでしょうか?
これについては通常のアパート等を建てた場合と同じです。補助金は建物の固定資産税評価額とはまったく関係ありません。
なお、相談を受けた事例は父親と娘さんの両方の敷地を利用するようになっておりましたが、相続税の節税のためには全額借金して父親が建てたほうが有利になります。
いずれにしてもグループホームは全国的に不足しているようです。したがって、敷地条件から通常のアパートでは入居者を探すのが難しいようであれば、こういった介護施設を建設するのも一考に値するのではないかと思います。