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2010年06月27日

空室増加への対応策

今回はアパマン経営者にとって最も頭の痛い空室増加への対応策について考えてみたいと思います。

実は私のお客様で都民住宅を経営している方がいらっしゃるのですが、その方から最近空室を減らすための対応策について相談を受けたのです。

ご承知かどうか分かりませんが、都民住宅というのは特定優良賃貸住宅という制度を使って建てた東京都が管轄する賃貸マンションのことです。

ところで、この都民住宅の場合、入居者には家賃の補助が受けられますので非常に人気が高かったのですが、この家賃補助額は毎年減少していき、最終的にゼロになります。

また、この家賃補助額は収入によって違いがあるため毎年収入を証明しなければなりませんが、これが意外と面倒なのです。

このようなことから、このお客様の物件についても空室が徐々に増えてきたわけですが、空室が増えてきた場合、皆様方はどのように対応されていますか? 一般的に考えられる方法としては次のようなものが考えられます。

<空室が増えてきた場合の一般的対処方法>
①家賃を下げる。
②家賃以外の礼金とか敷金等の一時金を少なくする。
③リフォームをする。
④仲介業者にメリットを与える。

以下、順番に解説しておきます。まず①の家賃を下げる方法ですが、市場家賃よりもかなり高いようであれば早急に下げるべく行動に移す必要があります。

自宅を引っ越す場合には引越代とか仲介手数料等、様々な経費がかかりますので多少の家賃の違いであればおいそれとは出て行かないでしょう。

しかしながら、現在のようなデフレの時代において長期間住み続けていた場合には他の物件と比較して相当家賃が高くなっているハズです(デフレであっても通常は家賃を下げないため)。

それにもかかわらず家賃を据え置いている場合には入居者にとってはデメリットしかないので、家賃を下げなければ当然に退去者が続出することになります。

なお現在入居している人の家賃を下げるべき否かについては非常に難しい判断を要しますが、市場家賃と比較してかなりの開きが生じている場合には更新時にこちらから値下げを提案されたらいかがでしょうか? 

先方から何も言ってこないからといってそのままにしているケースが多いと思いますが、入居者は不満を持っているものなのです。既存のお客様を大切にすることは商売の基本中の基本です。

次は②の家賃以外の礼金とか敷金等の一時金を少なくするという方法ですが、これについてはできるだけ柔軟に対応すべきでしょう。

家賃の1、2ヵ月程度であれば、空室が続くことを考えれば大したことはありません。不動産賃貸業も立派な事業であり、他の物件と比較して有利な条件でなければお客様は見向きもません。このことを今一度ジックリと考えていただきたいと思います。

次は③のリフォームをするという方法ですが、これについては家賃との見合いで考える必要があります。

リフォームをしなくても家賃が安ければ意外と入居者は見付かるものです。これについて実例を1つ挙げておきます。

実は私のお客様が所有する物件で2年先には建て替え予定のものがありますが、現在定期借家契約にしております。

定期借家契約というのは要するに期限が来たら必ず立ち退く必要があるものですが、家賃を安くしているため現在は満室なのです(全部で27室)。

なお、この物件は建て替えることが前提なので原状回復義務はありませんので、壁に釘を打ってもOKです。やりたい放題です。このイイカゲンさが受けているのかも?

このように特殊なケースではリフォームをする必要はありませんし低家賃戦略で行く場合にはそのままで良いのですが、それなりの家賃を貰いたい場合にはリフォームは必要条件です。

そして最後の④仲介業者にメリットを与えるという対策ですが、これは要するに仲介手数料以外のメリットを仲介業者に与えるというものです。

例えば、仲介手数料以外に家賃の1ヵ月分を広告宣伝費として別途支給するとか、営業マン個人に商品券のポイントを与えるといったことです。

東京都のように世帯数が増えている地域は別として、ほとんどの地域では全体のパイが縮小していますし、今後の回復もほとんど期待できません。

このような厳しい状況下、如何にしてご自分の所有する物件をアピールするかが大切になってくるわけですが、そのためには本来の報酬以外に魅力的なインセンティブが必要になるということです。

不動産所得は確かに「不労所得」ではありますが、それは入居者が決まった後のことです。それまでは一定の投資が必要になるということですからクレグレも間違えないように!

2010年06月11日

グループホームを考える

今回は土地活用の一つとしてのグループホームを取り上げてみたいと思います。

実は先日、顧問をしているハウスメーカーの担当者からグループホームを建てた場合の相続税対策としての効果等について質問があったのです。

グループホームの意義についてはある程度ご存知だと思いますが、要するに

「認知症の方が小規模な生活の場で少人数(5人から9人)を単位とした共同住居の形態で、食事の支度や掃除、洗濯などをスタッフが利用者とともに共同で行い、一日中家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活を送ることにより、認知症状の進行を穏やかにし、家庭介護の負担軽減に資する」施設のことです(全国認知症グループホーム協会のホームページより)。

つまりオーナーから見れば、認知症の方向けの集合住宅を建設して介護事業者に一括して賃貸するというものですが、通常のアパート等と違っている点をまとめますと次のようになろうかと思います。

<通常のアパート等と違っている点>

①入居者の人数が5~9人に限定されている。通常のアパートとか賃貸マンションの場合には敷地の広さに応じて戸数は千差万別ですが、グループホームの場合はスタッフと入居者が「家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活を送ること」を主眼としているため、このような制限が設けられているのです。

ただし、土地に余裕がある場合には複数のユニットを設けることができます。例えば、1階と2階にそれぞれ9室を設ければ全部で18室になります。

②各ユニットには共同の居間・食堂・台所、トイレ、浴室等、およびスタッフルーム(事務所)が必要。つまり独身寮のようなものです。

ところで、このグループホームについては施設が不足しているということで国とか各自治体から補助金をもらえるケースがあります。

金額については自治体によってかなり違っているようですが、建設費について補助金を貰った場合、会計処理はどのようになると思われますか?

例えば1000万円貰った場合、この1000万円は入金のあった年度の収入として確定申告する必要があるのでしょうか?

もし、そんなことになれば建築費が足らなくなってしまいます。そこで収入に計上するのではなく建物の取得価額から控除することにしているのです。

「建物の取得価額から控除」しますと減価償却費の計算対象が減りますが、減価償却費が少なくなれば当然ながら不動産所得が増えます。そして不動産所得が増えればそれだけ所得税等が増加するというわけです。

「なんだ、結局、補助金はすべて取り戻されるのか!」、と心配することなかれ。所得税等の税率は人により異なりますがせいぜい20%程度。したがって1000万円の補助金の場合、取り戻されるのは多くて200万円。残りの800万円は貰いドクというわけです。

ところでグループホームを建設した場合の相続税対策としての効果はどうなるのでしょうか?

これについては通常のアパート等を建てた場合と同じです。補助金は建物の固定資産税評価額とはまったく関係ありません。

なお、相談を受けた事例は父親と娘さんの両方の敷地を利用するようになっておりましたが、相続税の節税のためには全額借金して父親が建てたほうが有利になります。

いずれにしてもグループホームは全国的に不足しているようです。したがって、敷地条件から通常のアパートでは入居者を探すのが難しいようであれば、こういった介護施設を建設するのも一考に値するのではないかと思います。