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収益物件の購入は相続税対策として有効か?

相続税の節税対策と言いますと、毎年お子様に少しずつ財産を贈与するとか所有地にアパート等を建設するというのが一般的ですが、収益物件を購入するという対策は果たして相続税対策として有効なのでしょうか?

これについてはケースを分けて論じる必要があります。つまり金融資産をたくさん所有しているケースと、そうではないケースです。

土地を売却するなりして多額の金融資産を所有している場合には、その金融資産で都心にある築浅の区分所有マンションを購入すれば確かに相続税は安くなります。

私もお客様から物件の紹介を依頼されるケースがありますので調査する機会が多いのですが、比較的高層の建物の場合には相続税評価額が時価の3分の1程度になります。

そして、こういった物件の場合、利回りはそれほど高くないのですが、全額を自己資金で購入するわけですからキャッシュフロー上もまったく問題ありません。

以下、簡単な事例で解説します。

<全額自己資金で区分所有マンションを購入した場合>

・物件価格・・・・・1戸当たり1300万円×10戸=1億3000万円
・相続税評価額・・・土地2800万円、建物1200万円、合計4000万円(時価に対する割合           30.7%)
・利回り・・・・・・表面6.5%、実質4.5%

「相続税対策として効果」
  評価減額・・・1億3000万円-4000万円=9000万円 
  節税額・・・・3000万円(9000万円×税率30%のケース)
「毎年の手取り収入」
  1億3000万円×4.5%=585万円(所得税控除前)

いかがですか? 金融資産1億3000万円で収益物件を購入しますと、それだけで相続税が3000万円安くなりますし、また毎年の手取り収入が585万円増えるのです。借金がゼロですから、たとえ空室が発生してもそれほど大きな問題にはなりません。

このように金融資産がたくさんある場合には、都心にある築浅で管理の行き届いた物件を購入することで相続税という難題をクリアーすることができるのです。
  
それでは所有する物件が不動産等だけで金融資産があまりない場合はどうでしょうか? 実際はこういったケースが多いのですが、このようなケースでも収益物件の購入は相続税対策として有効なのでしょうか?

これについては既にお分かりだと思いますが、収益物件の購入は実際上難しいのです。金融資産がほとんど無いわけですから借金するしかありません。

ところが利回りが実質で4.5%しかないのですから、キャッシュフローはおそらくマイナスになります。

4.5%もあるのだから金利を3%としても十分やっていけるのではないかと考える人がいたとすると、その方は不動産投資とか借入金の仕組みがまったく分かっていないのです(業者からすると、こういったお客様はカモです)。

今回はこれらの仕組みについての解説はしませんが、4.5%程度の物件を全額借金してやっていけるワケがないのです(詳しく知りたい方は、小著「アパマン経営、なぜ失敗するのか?」の中の「Jリートの場合、なぜ表面利回りが5%の物件でも利益が出るのか?」を参照して下さい)。

このように説明すると、それではもう少し利回りの良い物件ではどうなのかと考える方がいらっしゃると思いますが、確かにもっと良い利回りの物件はあります。

例えば、かなり年数が経っているとか、地方・郊外物件です。このような物件の場合には全額を借金して購入してもキャッシュフローはプラスになるケースが多いと思います(このような物件の場合、確かにリスクはありますが、他に収入がかなりある方であればリスクテイクできます)。

しかしながら今回私が提起した課題は相続税対策です。相続税対策のためには物件価格と相続税評価額との間にかなりの開きがなければなりませんが、利回りの高い物件の場合には両者にほとんど差がないのです。

場合によっては相続税評価額のほうが時価よりも高いケースがあります。このことは特に建物について言えます。建物の相続税評価額は固定資産税評価額とイコールですが、固定資産税評価額は建物というハードに対して付けられるものです。

そして、いったん付けられた評価額は計算の仕組み上、徐々にしか下がりませんので需給関係によっては時価が逆転するケースはよくあるのです(以前は建物の価値は15年でゼロになると言われておりました)。

いかがですか? 金融資産のあまりない方が相続税対策のために収益物件を購入するという選択肢はほとんどありえないということが理解できたでしょうか?

ただし、所有している不動産を現金化して収益物件を購入するというやり方はアリです。上述しました金融資産をたくさん所有している方の場合も、そもそもは不動産等を売却したからこそ資金ができたのです。

このように収益物件を購入する対策一つとっても、その人の状況によって有効である場合もあればダメな場合もありますし、組み立て方によって有効になるケースもあるというわけです。

こんな当たり前のことがまったく分からないまま実行に移す人がナント多いことか! 是非、皆様方は頭が擦り切れるまで考えてからトライするようにしていただきたいと思います。

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