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2010年05月27日

収益物件の購入は相続税対策として有効か?

相続税の節税対策と言いますと、毎年お子様に少しずつ財産を贈与するとか所有地にアパート等を建設するというのが一般的ですが、収益物件を購入するという対策は果たして相続税対策として有効なのでしょうか?

これについてはケースを分けて論じる必要があります。つまり金融資産をたくさん所有しているケースと、そうではないケースです。

土地を売却するなりして多額の金融資産を所有している場合には、その金融資産で都心にある築浅の区分所有マンションを購入すれば確かに相続税は安くなります。

私もお客様から物件の紹介を依頼されるケースがありますので調査する機会が多いのですが、比較的高層の建物の場合には相続税評価額が時価の3分の1程度になります。

そして、こういった物件の場合、利回りはそれほど高くないのですが、全額を自己資金で購入するわけですからキャッシュフロー上もまったく問題ありません。

以下、簡単な事例で解説します。

<全額自己資金で区分所有マンションを購入した場合>

・物件価格・・・・・1戸当たり1300万円×10戸=1億3000万円
・相続税評価額・・・土地2800万円、建物1200万円、合計4000万円(時価に対する割合           30.7%)
・利回り・・・・・・表面6.5%、実質4.5%

「相続税対策として効果」
  評価減額・・・1億3000万円-4000万円=9000万円 
  節税額・・・・3000万円(9000万円×税率30%のケース)
「毎年の手取り収入」
  1億3000万円×4.5%=585万円(所得税控除前)

いかがですか? 金融資産1億3000万円で収益物件を購入しますと、それだけで相続税が3000万円安くなりますし、また毎年の手取り収入が585万円増えるのです。借金がゼロですから、たとえ空室が発生してもそれほど大きな問題にはなりません。

このように金融資産がたくさんある場合には、都心にある築浅で管理の行き届いた物件を購入することで相続税という難題をクリアーすることができるのです。
  
それでは所有する物件が不動産等だけで金融資産があまりない場合はどうでしょうか? 実際はこういったケースが多いのですが、このようなケースでも収益物件の購入は相続税対策として有効なのでしょうか?

これについては既にお分かりだと思いますが、収益物件の購入は実際上難しいのです。金融資産がほとんど無いわけですから借金するしかありません。

ところが利回りが実質で4.5%しかないのですから、キャッシュフローはおそらくマイナスになります。

4.5%もあるのだから金利を3%としても十分やっていけるのではないかと考える人がいたとすると、その方は不動産投資とか借入金の仕組みがまったく分かっていないのです(業者からすると、こういったお客様はカモです)。

今回はこれらの仕組みについての解説はしませんが、4.5%程度の物件を全額借金してやっていけるワケがないのです(詳しく知りたい方は、小著「アパマン経営、なぜ失敗するのか?」の中の「Jリートの場合、なぜ表面利回りが5%の物件でも利益が出るのか?」を参照して下さい)。

このように説明すると、それではもう少し利回りの良い物件ではどうなのかと考える方がいらっしゃると思いますが、確かにもっと良い利回りの物件はあります。

例えば、かなり年数が経っているとか、地方・郊外物件です。このような物件の場合には全額を借金して購入してもキャッシュフローはプラスになるケースが多いと思います(このような物件の場合、確かにリスクはありますが、他に収入がかなりある方であればリスクテイクできます)。

しかしながら今回私が提起した課題は相続税対策です。相続税対策のためには物件価格と相続税評価額との間にかなりの開きがなければなりませんが、利回りの高い物件の場合には両者にほとんど差がないのです。

場合によっては相続税評価額のほうが時価よりも高いケースがあります。このことは特に建物について言えます。建物の相続税評価額は固定資産税評価額とイコールですが、固定資産税評価額は建物というハードに対して付けられるものです。

そして、いったん付けられた評価額は計算の仕組み上、徐々にしか下がりませんので需給関係によっては時価が逆転するケースはよくあるのです(以前は建物の価値は15年でゼロになると言われておりました)。

いかがですか? 金融資産のあまりない方が相続税対策のために収益物件を購入するという選択肢はほとんどありえないということが理解できたでしょうか?

ただし、所有している不動産を現金化して収益物件を購入するというやり方はアリです。上述しました金融資産をたくさん所有している方の場合も、そもそもは不動産等を売却したからこそ資金ができたのです。

このように収益物件を購入する対策一つとっても、その人の状況によって有効である場合もあればダメな場合もありますし、組み立て方によって有効になるケースもあるというわけです。

こんな当たり前のことがまったく分からないまま実行に移す人がナント多いことか! 是非、皆様方は頭が擦り切れるまで考えてからトライするようにしていただきたいと思います。

2010年05月11日

ほとんどが金融資産である場合の相続税対策は、こうする!

今回は所有財産のほとんどが金融資産である場合の相続税対策について私の考えを述べたいと思います。

ほとんどの資産が金融資産である場合、納税は可能ですが節税対策には全くなっておりません。額面金額に対してそのまま課税されるからです。

一方、不動産の場合は通常は時価よりかなり低い評価になりますので、時価との差額が評価減になるわけです。

このようなことから、所有資産のほとんどが金融資産である場合には金融資産から不動産へと資産の組み換えを行なうケースが多いのです。

そこで今回は不動産の中でも一般的なマイホームを取得するケースと、アパートとか賃貸マンションを取得するケースを取り上げてご説明したいと思います。

まずはマイホーム。ご承知のようにマイホームの敷地については240㎡まで80%評価減(20%評価)になるという小規模宅地としての評価の特例を適用できます。

例えば、面積が200㎡、時価が1億円(50万円/㎡)、路線価が40万円/㎡の土地の場合の相続税評価額は次のようになります。

◎土地の相続税評価額・・・40万円×200㎡×(1-80%)=1600万円

したがって1億円-1600万円=8400万円の評価減になるというわけです。

また建物に関しても相続税評価額(=固定資産税評価額)は建築費の約50%になりますので、建築費が3000万円であれば1500万円の評価減になります。

両方合わせて9900万円、約1億円です。もし相続税の実効税率が30%だとすれば、マイホームの取得だけで3000万円の節税になるというわけです。

ところで以上は土地を購入した上で新築住宅を建てるという前提なのでどうしても時間がかかってしまいます。

そこで、もし比較的短期間に節税効果を享受したい場合には中古の戸建とかマンションを検討すれば宜しいかと思います。

次はアパートとかマンションといった収益物件を購入するケースです。具体的な節税の仕組みについては省略いたしますが、自宅が無い場合(賃貸物件に住んでいる場合)とか区分所有のマンションに住んでいる場合には小規模宅地としての評価減を使うことができますので、かなりの評価減になります。

小規模宅地としての評価減とは要するに200㎡までの敷地について50%評価になるというものですが、この特例を使えばかなりの評価減になるのです(自宅がある場合には通常そちらについて適用しますので、アパマンの敷地については適用できません)。

私が実例を基に調べたケースでは都内の賃貸マンションの場合、相続税評価額が20%程度になっていました。もちろん物件によって異なる場合がありますが、100のものが20として評価されるわけですから、その効果たるや凄まじいものです。

ところで賃貸物件の場合、入居者がいるかどうか心配になる方がいらっしゃると思いますが、所在場所と管理会社を間違わなければほとんど問題ありません。

まして全額を自己資金で購入する場合には入居者が現れるまで家賃を下げることができますので、リスクという観点からはほとんど問題がないのです。

なお、それでもイヤだという方は購入しなければいいだけの話です。国も税収が減って大変な時期ですから、できるだけ多く納税していただいたほうが良いのです。

税収で貢献するか住宅という居住空間の提供で社会に貢献するかは、その方の考え方次第です。

なお賃貸物件を購入する場合、当面の税収(相続税)は減少しますが、毎年の所得税とか固定資産税等を支払うことになりますので、この面からも社会貢献になるのです。