レバレッジ効果のワナ
今回はレバレッジ効果についてご説明いたします。いろいろな本を読んだり、話を聞いていると、この言葉が良い意味にしか捉えられていない気がするからです。
レバレッジ効果とは既にご承知だと思いますが、テコの原理のことです。要するにテコを利用すれば少しの力で重い物を持ち上げることができるという原理のことです。
このレバレッジ効果は様々な分野で使われていますが、ここではアパマン投資の場合でご説明いたします。
例えば、いま1,000万円の自己資金があるものとします。そして、この資金で利回りが10%のマンションを購入しますと、年間の収入は100万円になります。そして諸経費が20万円かかるとすると手取り収入は80万円になります。
一方、この自己資金1,000万円に借入金4,000万円を足して1,000万円のマンションを5室購入した場合はどうなるでしょうか?
利回りが同じだとすると年間の収入は5,000万円×10%で500万円となります。そして、今度は借金しているわけですから、その返済をしていかなければなりません。
仮に、この額を年間250万円とし、諸経費を100万円としますと、手取り収入は150万円(500万円-250万円-100万円)となるわけです。
つまり、自己資金だけで購入した場合よりも手取り収入が70万円(150万円-80万円)多く獲得できるわけです。この仕組みのことをレバレッジ効果(テコの原理)と言っています。
このようにレバレッジ効果というのはテコの原理を利用して、より大きな収入を得ようとする方法のことですが、投資額を増やせば増やすほど本当に手取り収入は増えるのでしょうか?
もし、その考えが正しいのであれば、そして銀行がジャブジャブ融資してくれるのであれば投資額を増やせば増やすほど儲かるということになります。
果たしてそんなことがありうるのでしょうか? 以下、この点について検証してみたいと思います。
先程の例では表面利回りを10%で計算しましたが、ここでは12%と8%の2つのケースで計算してみます。
そして、それぞれのケースについて物件価格を1,000万円、5,000万円、1億円の3つに分けて比較することにします。計算に当たっての他の前提条件は次の通りです。
1.自己資金…… 1,000万円
2.借入金……… 20年、4%、元利均等返済方式
3.入居率……… 90%
4.賃料水準…… 毎年0.5%下落
5.諸経費……… 対家賃収入20%、毎年0.5%上昇
6.税金………… 所得税等は考慮しない
<利回り12%のケース>
まず物件価格1,000万円のケースでは当初5年間の手取り収入の月額平均は7.1万円です。そして5,000万円のケースでは11.2万円、1億円のケースでは16.4万円となっています。
これは明らかに投資規模を大きくしたほうが有利になるということを表しています。つまり、表面利回りが12%の場合はテコの原理がプラスに働くということです。
<利回り8%のケース>
それでは表面利回りが8%のケースはどうでしょうか? 物件価格1,000万円のケースでは当初5年間の手取り収入の月額平均は4.7万円です。
ところが5,000万円のケースではマイナス0.6万円、1億円のケースでは何とマイナス7.2万円です。
手取り収入累計額で見ても5,000万円、1億円とも当初20年間ではマイナスです(1,000万円の場合1,072万円、5,000万円の場合-458万円、1億円の場合-2,370万円)。
30年間でやっと規模の有利性が表れておりますが、驚くほどの差額ではありません(1,000万円の場合1,546万円、5,000万円の場合1,913万円、1億円の場合2,372万円)。
いかがですか? 8%の利回りでは相当厳しい状況になるということがお分かりいただけたと思います。
このように原理・原則というものは常に正しいとは限らないのです。一定の条件に当てはまる場合には正しくて、それ以外の場合には正しくないということは肝に銘じておく必要があります。
なお、以上のシミュレーションはテコの原理というものがプラスにもマイナスにも働くということを証明するためだけに行ったものです。したがって、それほど厳密に計算したわけではありません。
実際に購入するかどうかを検討するに当たっては、前回のブログでも書きましたように様々な角度から慎重に調査・分析する必要があるということだけは口を酸っぱくして言っておきます。