« 少額資産の必要経費算入について | メイン | 所得税と相続税の二重課税はやはり本当か? »

年金を貰うためにする役員の退職について

今回は「年金を貰うためにする役員の退職について」というチョット変わったタイトルで書かせていただきます。

実は、ある顧問先の会長様から、「年金を貰うためにいったん会社を退職することにしたいのだが、それについていろいろ聞きたいことがある」ということだったので昨日会社を訪問してきました。

ご存知かどうか分かりませんが、勤務時間が正社員の4分の3以下であれば社会保険に加入する必要がありません。パートの人が加入していないのは、このような制度になっているからです。

このことは逆に言えば、正社員の勤務時間の4分の3以下にすれば現在加入している社会保険から脱退することができるということでもあります(ただし、社会保険から脱退しますと国民健康保険に加入する必要があります)。

そして、この会長様は現在63歳なので逆に年金の受給者になるのです。

今までは加入者だったので個人負担分と会社負担分の両方の保険料を支払う必要があったのですが、受給者になることによって支払義務がなくなるばかりか、逆に国から月額30万円程の年金を貰うことができるようになるというわけです。

ところで年金を貰う立場になるためには上述しましたように勤務時間を正社員の4分の3以下にする必要があります。そこで、この際いったん退職することによって会社から退職金を貰ったらどうかということになりました。

完全に辞めてしまうと業績悪化を招く恐れもありますし(現在、息子さんが社長になっています)、本人も63歳だということでまだまだ働きたいという意向もあります。そこで年金を貰いながら適度に働ければベストではないかということになったわけです。

ところで、このように会社を完全に辞めるわけではないのですが、このような場合でも会社は退職金を支給することができるのでしょうか?

これについては一定の条件を満たすことにより支給できることになっています。これを専門的には、「役員の分掌変更等の場合の退職給与」と言っているのですが、要するに実質的に退職したのと同様の状況にある場合には過大でない限り損金に算入できるというものです。

「実質的に退職したのと同様の状況」にあるか否かについてはいくつか具体例が示されているのですが、代表的なものとして次の2つがあります。

①常勤役員が非常勤役員になったこと
②給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと

ただし、形式的にこれらの条件を満たしている場合であっても、実質的に会社を経営支配している場合には認められません。

それではこれらの条件を満たしている場合、果たしてどれほどの退職金を支払うことができるのでしょうか? もちろん、いくら支払ってもOKなのですが、過大な退職金を支払えば過大部分は損金に算入できません。

そこで一般的には過大にならないような額を支払うケースが多いのですが、過大かどうかは次の算式で計算することになっています。

役員退職金の支給限度額=退職直前の報酬月額×勤続年数×功績倍率

例えば、報酬月額が100万円、勤続年数が30年、功績倍率が3倍のケースでは次のようになります。

100万円×30年×3倍=9000万円

このうち功績倍率については役職毎にある程度決まっており、会長とか社長の場合にはだいたい3倍程度です。この会長様の場合には最終的に5000万円程度あれば十分だということで、この額に決まりました。

いずれにしましても、完全に会社を辞めなくても会社から退職金を貰うことができますし、一定の年齢に達しているのであれば公的年金も貰えるということです。

最近、サブプライム問題とか、ガソリン、食料等の高騰によりほとんどの企業の業績は悪化してきております。様々な知恵を絞り、この不況を乗り越えたいものです。

この記事へのトラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.43up.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/132

この記事へのコメントを投稿

初めてコメントをされる場合、コメントが表示される前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがございます。承認されるまでコメントは表示されません。その際はしばらくお待ちください。