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中古アパートを購入と同時に修繕した場合の修繕費の処理は?

私はお客様の代理で投資用のアパートとか賃貸マンションを探すことがあるのですが、最近見付けた物件は、大々的にリフォームすることを条件としてサブリースしてくれるという代物です。

ちなみに、この物件の現在の入居率は40%程度であり、退去があっても資金がないのでそのままにしている部屋がかなりあるということです。

したがって、リフォーム代は全部で5000万円ほどかかるようですが、通常であれば明らかに修繕費として一時に経費処理できるものが半分の2500万円はありそうです。

それでは、ここで皆様にお聞きします。通常であれば何の文句もなく修繕費として一時に経費で落とすことができるものを、新規に購入してすぐに修理する場合もOKでしょうか?

なお、この物件の場合、取得した時点で登録免許税とか不動産取得税がだいたい1000万円程度かかります。これらは当然ながら租税公課として一時に経費処理します。

したがって、もし2500万円の修繕費を一括で経費処理するとなると、さすがにその年度は赤字になりますので、次年度以降にその赤字を繰り越すという手続きになるわけです。また、それに関連して予定納税していた所得税を還付請求することにもなります。

このようなことから、この不動産を購入したお客様の決算書・申告書は目立つことになりますが、この目立った処理について税務署は黙っているでしょうか? 

そこで心配性の私は税務署に確認することにしました。実際の電話は社員にやってもらったのですが、その結果をまとめておきます。

「A税務署」・・・事業の用に供するお金であるから建物等の取得価額に計上することになる。

「B税務署」・・・機能を追加するわけではないので修繕費として計上できる。

「C税務署」・・・定期的な修繕ではないし、資産価値を高めるわけであるから資本的支出になる(資本的支出ということは建物等の取得価額に計上するということです)。

「D税務署」・・・入れ替りの時に直すようなものは修繕費として計上できる。キッチン設備とか風呂を取り替えた場合には設備として資産計上することになる。

「国税局の税務相談室」・・・修繕の内容を個々に判断するしかない。もし、ご心配であれば資本的支出として処理すれば・・・。

いかがですか? それぞれの税務署は日本を代表するような規模のデカイ所ばかりです。私は社員から報告を受けたとき次のような質問をしました。

「担当者は自信を持って答えていたの? 年齢はいくつ位?」

これに対する社員の答は次の通りです。

「皆さん、自信満々でした。また年齢は50歳前後だと思います。」

全く同じ質問なのに担当者が言うことはそれぞれバラバラ。自信を持ってバラバラな意見を言うのですから困ったものです。

ところで、もし、同じ質問を税理士とか公認会計士にした場合、どうなると思われますか? 私は100%自信を持って答えられます。おそらく全員バラバラな答が返ってくるハズです。税理士を数百人抱えている税理士法人であっても全く変わりません。

税法の実務というのはこんなものなのです。医者にしたって病名が当たるのは55%程度だというし、テレビ番組の弁護士軍団も言うことがバラバラです。

要するに結論は分からないということですが、何らかの処理をしなければならないということも事実です。もし、否認されたら過少申告加算税とか延滞税を支払うことになります(ちなみに、過少申告加算税は支払っても損金に算入されません)。

なお、以上は個人が不動産投資をするケースなので税務署もイヤイヤながら電話相談に乗ってくれたのですが、法人の場合は相手にもされません。顧問税理士に聞いてくれ、でオシマイです。

今回は何となくモヤモヤとした結論になってしまったのですが、税務の実務の一端をご理解いただくためにご紹介しました。こんな問題を抱えつつ、明日の土曜日に物件を見に行くことになっております。

※皆様の中には、どうしてこんなに入居率が悪い物件を奨めるのか不審に思われる方もいらっしゃることと思います。そこで若干補足しておきますと、この物件は昨年まで3億円で売りに出されていたものが現在は2億1000万円まで下がっているのです。

また、この値下がり分で大規模修繕するわけですが、入居率を上げる自信はあるのです(修繕費の会計処理については自信がないのですが・・・)。

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