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アパートを法人に売却する場合の注意点

今回はアパートを法人に売却するという対策についてご説明いたします。私の事務所では比較的よく行なっているのですが、まだまだ一般的ではないと思いますので、勉強の一環としてお読み下さい。

「アパートを法人に売却する」というと、なんか大袈裟な感じがしますが、法人に売却するといっても建物だけです。土地は通常除きます。その理由は土地まで含めると金額が多くなりますし、所得分散という目的から外れるからです。

ところで、なぜ法人に建物を売却するか分かりますか? 法人といっても相続人が設立したものですが、この対策をとる理由は税務上特に問題なく比較的多くの所得を分散できるからです。

ご承知のように不動産管理会社を設立して所得を分散するという対策がありますが、この場合には管理料が高いということで、税務否認を受けることがよくあります。

ところが法人に建物を売却するという対策で税務否認を受けることはほとんどありません。その理由は不動産所得自体が不労所得だからです。

不労所得というのは文字通り不労ということですから、働かなくても得られる所得ということになります。したがって、正式な手続きを踏まえて不動産所得の基になる物件自体を移転している場合には税務署としても否認のしようがないのです。

例えば、小学校の子供がアパートを相続したとします。金額が小さいとピンと来ないと思いますので、このアパートからの収入が年間3000万円あるとします。税務署はこの収入を否認できるでしょうか?

これについては、どうひっくり返っても否認できません。相続で取得したものであり、このアパートから得られる収入は不労所得ですから、この子供が全く不動産経営にタッチしていなくても、そこから得られる収入は子供のものなのです。

親の収入にすると、それこそ子供が親に財産を贈与したものとして贈与税がかかってしまいます。

要するに所得には労働所得と不労所得があり、労働所得については税務署はギラギラと目を光らせているが、不労所得については当初の取得段階以外、特に問題にしていないということです。

ちなみによく問題となる労働所得に青色専従者給与とか、法人からもらう役員給与等があります。

ところで、建物を法人に売却して所得を分散しようとする場合、建物の売買価格については十分に注意しておく必要があります。

基本的には建物の時価で売買すれば特に問題ないのですが、時価といってもそれがいくらになるのかは全く分かりません。神様でも分かりません。

そこで一般的には不動産鑑定士が鑑定評価するのですが、その評価額が実務上は一応時価として取り扱われています。

ところが、この鑑定評価額にしても別の鑑定士が鑑定すれば違った評価額になるのですが、神様でも分からない時価を一応鑑定のプロがやるわけですから尊重しましょうということになっています。

ただし、どんな場合にも鑑定士に鑑定を依頼する必要があるとしたら、コスト的にも大変です。そこで通常は簿価を時価として取り扱っています。

しかしながら等価交換で取得したものとか事業用資産の買換え特例で取得したもの等については通常よりもかなり簿価が低くなっておりますので、そのような場合には通常の方法で計算しなおす必要があります。

また、建物自体は存在するのに帳簿上は消えているといったことが実務上よくあるのですが、そのような場合には別途見積もる必要があります。

例えば、毎年の家賃収入が300万円もある物件をタダで取得できるというのではいくら何でもおかしいですよね。したがって、そのような場合にはある程度の譲渡所得税はかかりますが、時価をそれなりに見積もって有償にするしかありません。

このように、いくら不労所得だとしても取得段階でおかしい取引があれば税務署も黙っておりません。したがって、実行する場合にはこれらの税務実務について詳しい税理士に相談するようにして下さい。

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