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事業収支計画書、役に立つの?

 建設会社とかハウスメーカーにアパートの建築プランを依頼しますと、建物の図面と一緒に事業収支計画書をくれます。これは要するに当該プランに基づいてアパートを建てた場合、将来の収支はこうなりますよ、といった非常に長期の経営計画書です。

 一般的に長期経営計画というのは5年程度を指すのですが、アパート経営の場合は借入金の返済期間が長いので、それに合わせて経営計画書も30年とか40年といった長期のものを作成することになります。

 5年程度の経営計画書でも計画と実績は相当異なるのに、その何倍も長い期間の事業収支計算書は果たして役に立つのでしょうか? どなたも疑問に思われると思います。

 この点については私はないよりはマシだと考えています。高度成長時代は物価の上昇に合わせて家賃も上がっていました。そこで、計画書を作る場合も家賃収入を2年毎に5%とか10%アップを前提に計算しておりましたので、収支が気持ち良いほど良くなるのです。

 したがって、営業マンも自信満々で楽しそうに説明します。ところが好景気はそれほど長く続きません。せいぜい10年ほどが良いところです。10年程度しか続かないのに40年も続くかのごとく計算するのですから、実態とかけ離れた数値となってしまうわけです。これで痛い目に合った人も多いのではないでしょうか。ところが以上はあくまで高度成長の時代か、バブルの時代の話です。

 ここ数年、景気がかなり良くなったとはいえ、家賃の上昇がこれから何年も続くと考える人はほとんどいないと思います。したがって、事業収支計画書を作成する場合も家賃の上昇は見込まないのではないでしょうか? それでは家賃の上昇率を一定、つまり上昇率をゼロとして収支を計算すると最終の手取り収入はどうなると思われますか?

 「収入が一定であれば手取り収入も一定」になると思われますか? 残念ながら、そのようにはなりません。その理由はまず借入金の返済額にあります。固定金利であれば最後まで返済額は変わりませんが、長期の固定金利で計算すると変動金利に比べて収支が悪くなってしまうのです。

 そこでよくあるのが、金利の一番安い2~3年程度の固定金利で計算するのです(固定金利と言いながら、2~3年の固定金利というのは変動金利と同じです)。ところが、このような計算書であれば皆様方は当然ながら金利を上昇させた計算書をもう一度、作り直させるはずです。その結果、当初の計算書と比べて収支は悪くなっていくというわけです。

 また、修繕費等の各種経費についても、現状のままで計算すると、なんか心配ですよね。そこで、これらについても少しは上昇率を見込むのです。

 このようなことから、収入を一定とした事業収支計画書というのはあまり魅力的には映りません。そこで、できれば計画書は出したくないとういのが営業マンの偽らざる気持ちなのです。

 私が上段で事業収支計画書はないよりあったほうがマシだと書いたのは、事業収支計画書を出さない営業マンよりは出す営業マンのほうが信用できるということなのです。

 皆様方もアパート経営を真剣に検討されているのであれば、こういった計画書はできるだけもらっておくべきです。そして、よく理解するようにして下さい。もし、理解できないようであれば、できるように勉強すべきです。それでも理解できないのであればアパート経営は止めたほうがいいと思います。

 なお、事業収支計画書の具体的な見方、読み方については別の機会に触れさせていただきます。

 

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