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「このお客様に2億、3億の話をしてもダメなんじゃないか――」
オーナー様に収益をもたらすアパートこそ正義。そう信じてきた東京セキスイハイムの畠中祐輔を変えたのは、あるお客様との出会いだった。所有する土地は広く、駅近で、大きく投資すればかなりの収益が見込めた。「4、5階建てのマンションがベストではないだろうか」。当初、畠中がおぼろげに想定したのは2億、3億と投資する提案だった。
「ところがお客様から聞いたのは『何を建てても儲かるのは分かっている。だけど、私は相続で苦労したから3人の子供達には将来同じ思いをさせたくない』という思いがけない言葉でした。さらに対話を深めるうちに、このお客様には収益よりも大切なものがあるんだと深く理解できました」
そんなお客様の想いを受けて畠中が提案したのが、土地を3分割して3、4千万円程度の小規模なアパートを3棟建てるプラン。収益よりも平等な資産分与を優先したのだ。西側の棟は家賃が安くなるため、同額になるよう間取りで工夫するなど、一貫して平等性に配慮。お客様からも「こういう提案を待っていた」と評価され、契約が決まった。
「例えば『相続対策』と聞くと、我々は真っ先に『相続税』を思い浮かべて先走りがちです。でも基礎控除を受ければ相続税はさほど負担にならない方もいらっしゃいます。実は相続で一番難しいのは、資産の多い少ないに関係なく『どう分けるか』なんですよね」

この経験がきっかけとなり、畠中は採算よりも「お客様は何のために建てるのか?」を突き詰める営業スタイルに変わった。以前と比べて、お客様により喜ばれる資産活用をコンサルティングできているとの実感もある。
「もちろん採算や利回りの良さを優先するお客様の方が多数派です。しかし、そうではない方もいらっしゃる。もっと言えば、採算に重きを置くお客様でも何のための採算かはそれぞれ違う想いをお持ちなんですよね」
お客様の想いを中心に据える畠中の営業スタイル。自ずと対話の重要性が高まる。
「お客様のために、あえて聞きにくいことにも踏み込むようにしています。例えば今、元気なお客様を前に『お客様が亡くなった後、この資産をどういう風に次世代に継承させたいですか?』というようなことも遠回りせずに率直に聞きます。切り出しにくい話ですが「何のためにアパートを?」を知る上で大切な対話なんです」
「何のためにアパートを?」と繰り返す畠中だが、もちろん採算を度外視するわけではない。むしろ経営が立ち行かないと判断するアパートは「お断りするのがポリシー」と明言する。
「賃貸アパートを建てるなら、経営がうまくいくことが必須条件です。ですから、私は採算が合わないと判断すればお断りします。何が何でも建ててもらうというスタンスでは、お客様と対等でいられなくなって、小さな無理を積み重ねることになりかねません。将来、『あの時、畠中さんに背中を押してもらってよかった』と言っていただける提案かどうか、常に自問自答しています」
メーカーの営業である前に、まず一人の人間として信頼されなければ――。「お客様と対等」という言葉からは、そんな覚悟がうかがえる。
「ことアパート経営においては、お客様ご自身のお住まいほどメーカーへのこだわりは強くはないのかもしれません。むしろ“人”を見ていると感じます。『何のためにアパートを建てるのか?』『本当はどうしたいのか?』という気持ちをくんでくれる誠実な人なのか? 問題を解決する知識や交渉力、実行力のある人間か? 価格が大きく、この先長く経営するアパートですから、最後は信頼できる人に任せたくなるのは当然のこと。私もそれを肝に銘じて、お客様の想いに一番お応えできる人間に成長したいと思っています」
何のためにアパートを――。
この一点を突き詰める“畠中スタイル”で、これからもお客様一人ひとりにとっての「最善」を追い求める。








